カバラ物語 第五章 ぼくの善と美 #6「思いがけないもてなし」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第五章
非営利団体の団長の態度に怒ったぼくは怒りに任せて電話を叩き切った。ぼくの隣では一日中ぼくに振り回されたアルバイトの娘がおろおろしている。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
ぼくはいくぶん声を和らげた。
「あなたが謝る必要はない。何も知らなかったんだろうし」
娘は、自分は気づいていたと言い出した。
「この国では警察の横領は当たり前。税関の横領もめずらしいことじゃない。だからお兄さんがすごく怒るからびっくりした」
ぼくは思わず声を荒げた。
「なんて言うことだ!」
娘は続けた。
「お兄さんの国はみんなお金持ちでしょう? この国は貧乏な人がほとんど」
ぼくは押し黙った。問題の根っこはとても深いのだ。この国の人間ではないぼくが単純に決めつけることはむずかしい。
娘がどうしてもぼくを招待したいというので、ぼくは娘の家に向かう。娘の家族は大所帯で、狭い家に両親や兄弟やおじさんやおばさんまでが住んでいる。彼らは手料理や歌を歌ってぼくをもてなした。こんなに仲が良さそうな大家族を見たのは初めてだ。
娘が言う。
「少しでもこの国のいいところを見てもらいたい。お兄さんはいい人。悪いイメージだけじゃ悲しいから」
ぼくは答えた。
「あなたのおかげで良いイメージの方が大きくなったよ」
娘は喜んだ。すると娘のお母さんが聞いた。
「あんた、結婚しているのかい? もし独身ならうちの娘はどうだい?」
ぼくは苦笑した。
「ぼくは2回離婚している。だからもう結婚は懲り懲りだよ」
お母さんは残念がって、もし結婚する気になったらすぐに連絡するようにと約束させられる。
すっかり夜になり、ぼくは娘の家をお暇する。お腹も心もすっかり満たされて、さっきまで怒っていたことを忘れたかのように気分がいい。街灯はうす暗く、満月の明かりを頼りに歩いていたぼくの前方から真っ黒い人間がやってくる。ぼくとすれ違ったとき、ぼくは小さく叫んだ。
「アッ!」
ぼくとすれ違った男は黒い山高帽を被り、黒いマントを着ている。夢の中に出てくる黒いマントの男だ。ぼくが振り返ると男は角を曲がっていく。ぼくは慌てて男を追いかけて角を曲がる。黒いマントの男はどこにもなかった。
…#7へつづく。
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誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。
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「カバリスト ぼくの成功物語」〜永遠の生命の木の謎〜(上巻)
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制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子
グッドニー ・グドナソン
モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス
アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人
モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス
世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』『カバリスト ぼくの成功物語』
谷村典子
作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員
成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/
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