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ぼくの勝利 #1「おそろしい体験」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第四章


ぼくは走っている。あたり一面の霧の中、ここは町なのか田舎なのか山道なのか。ぼくは何も見えず何も聞こえない。「ハァハァ」という息遣いとカツカツという靴音だけが響いている。それすらもぼくのものなのか、他の誰かのものなのか。ぼくは走っている。ぼくはどこを目指しているのだろう。


ドカーンという爆発音がして、ぼくの足が止まる。ここから近い場所のようだ。バリバリと何かが崩れる音。目の前の白い靄がピンク色に変わり、ブワッという熱気が顔を覆う。炎だ。悲鳴と怒号が聞こえてきて乱れた足音がする。何かが爆発したようだ。ぼくは踵を返して逆走する。誰かが何かを叫んでいるが、何を言っているのか分からない。聞いたことがない言語が飛び交う。

ぼくは走る。右脇から人がぶつかってきて、ぼくはすんでのところで転びそうになる。左側に大きく体を傾けながら、ひたすら足を前にだす。ここで転んだら炎にまかれる。一刻も早くここから離れなければ。ここはおそろしい場所だ。煙がぼくの背後から追いかけてくる。煙が肺に入ってきてぼくはむせ返る。上着で口を塞ごうとしてびっくりする。ぼくは黒いマントを羽織っている。手を頭上に伸ばすと山高帽をかぶっている。ぼくは夢で見ていた黒いマントの男になり替わってしまったのか。


ぼくが動揺していると、今度は前から人がぶつかってくる。ぼくは転ぶ。山高帽がどこかへ吹っ飛んだ。ぶつかってきた男は罵声を浴びせながら走り去る。ぼくは鼻から吹き出す血を黒いマントの裾で拭く。その間にも、大勢の人がぼくを踏みつけながら逃げる。ぼくはよろよろと立ち上がる。身体中に痛みがひろがって、ぼくはもう走れそうにない。でもぼくは足を出し続ける。少しでも前に進もうとする。


いつの間にか雑踏から離れ、ぼくは大きなお城の門を通り抜ける。石畳の道が伸びて、先方に灯りが見える。ぼくはよろよろと灯りの方へ向かっていく。玄関の前にたどり着くと、ぼくを待っていたかのように扉が開かれる。
黒い蝶ネクタイを締めた執事がぼくを出迎える。

「ようこそ」

ぼくはお城の中に入る。豪華なシャンデリア、大理石のエントランス、暖かい暖炉が見える。ぼくはいつの間にかダークスーツを着ている。ぼくがめざしていたのはお城だったのかもしれない。お城にたどり着いたとたんに身体の痛みはすっかり消えた。

ぼくはついに最高の場所にたどり着いた。ぼくは自分に起きたすべての出来事に感謝する。なぜならぼくのおそろしい経験は、この素晴らしいハッピーエンドのために用意されたものなのだから。

…#2へつづく。

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​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
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制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。

中込英人

モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』『カバリスト ぼくの成功物語』

谷村典子

作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/

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