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ぼくの栄光 #9「失われた栄光」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第三章
ぼくらが映画館を出ると朝靄が立ちこめていた。オールナイトで映画を見たというのに、ぼくの記憶には黒いマントの男と黒い髪の女しか残っていない。ガールフレンドは、そんな人物は映画に出てこなかったと言う。ぼくは夢を見ていたのだろうか。
ぼくは急に妻と息子の顔が見たくなる。ガールフレンドを家に帰し、ぼくは家へと急ぐ。妻とは冷戦状態が続き、ぼくはしばらく息子の顔を見ていない。夢で見た黒い髪の女のセリフが頭の中で繰り返されている。
「私って愚かなのよ。一番大切なものを失ってから気づくんだから」
ぼくはマーケットに立ち寄り、焼き立てのパンや新鮮な卵や野菜を買う。今朝はとびっきり豪華な朝食を作ろう。今日は仕事を休んでピクニックに行ったっていい。楽しい話をたくさんして、一日笑って過ごそう。
車を家のガレージに入れようとして、隣りにあるはずの妻の車がないことに気づく。ぼくは車を乱暴に止めると、足早に家に向かう。玄関に入った途端、いつもより寒々とした空気にぶるっと身震いする。リビングがやけにだだっぴろい。壁にあったはずのテレビがない。棚の中の本も減っている。ぼくは久しぶりに妻の寝室に入る。妻の寝室も息子の部屋も空き家のようにがらんどうだ。どうやらぼくの嫌な予感は当たったようだ。妻は息子と出て行った。
道場を継がないとおじさんに返事をしたので、町の道場は閉鎖された。おじさんは新しい可能性を求めて遠い土地へと引っ越していった。妻との離婚訴訟と道場の後始末に追われてぼくは仕事どころではない。妻の弁護士がやってきて、ぼくがいかに夫として不適格かという話をあげつらった。
ぼくは言う。
「全くその通りです。ぼくの財産は全部あげてもいい。その代わり息子の親権だけはなんとかならないでしょうか」
弁護士は首を横に振る。
「それは難しいですよ」
ぼくは虚空を見つめる。
「これからぼくは何を生きがいに生きていけばいいのか」
失ったものはあまりにも大きい。
…#10へつづく。
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制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子
グッドニー ・グドナソン
モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス
アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人
モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス
世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子
作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員
成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/
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