総裁選での約束をお忘れか? アベノミクスと一体何が違う どんどん後退!「新しい資本主義」の真贋

総裁選で主張したものが次々と消える
官僚の声は「看板の掛け替え」に過ぎない

 自民党総裁選で強力なライバルと目された河野太郎氏ら3人を大差で破り、岸田文雄首相が新内閣を船出させた。「新しい資本主義」をキャッチフレーズに、「成長と分配の好循環」の実現を掲げたものの、党役員・組閣人事では安倍晋三元首相、麻生太郎副総裁への配慮が際立ち、政策面でも総裁選で主張したものが次々と消え、岸田カラーが早くもかすむ。

 発足当初の内閣支持率は、菅前政権のスタート時に比べても低い水準で、国民の期待が集まっているとは言い難い。2回目の挑戦で手にした宰相の座。池田勇人元首相が創設した「軽武装・経済重視」のハト派、リベラル派の名門派閥・宏池会を率いる岸田氏は、どんな国の形を描くのか。9年近く続いた「安倍・菅政治」の負の遺産を清算することができるのか、それとも引きずっていくのか・・。

 第100代首相に就任し、組閣を終えて初めての記者会見に臨んだ岸田氏は、「私が目指すのは、新しい資本主義の実現だ。成長だけでその果実がしっかりと分配されなければ、消費や需要は盛り上がらず、次の成長も望めない。分配なくして次の成長はなし。私は成長と分配の好循環を実現し、国民が豊かに生活できる経済を作り上げていく」と宣言した。

 首相は衆院解散に踏み切った後、早速動く。成長と分配の好循環の具体的な政策を話し合う、首相を議長とする「新しい資本主義実現会議」を設置、内閣官房に「新しい資本主義実現本部事務局」の看板をかけた。実現会議には、「日本資本主義の父」渋沢栄一の玄孫で「シブサワ・アンド・カンパニー」代表の渋沢健氏や、AIベンチャー「シナモン」社長の平野未来氏ら15人が顔を揃えた。

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