NEW LEADER LIBRARY📚(`22/7)

歴代中日監督の中で圧倒的な成績も
石もて追われるように去った男
落合の本当の意図を解き明かす

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』
 (鈴木忠平 文藝春秋)

 本作は令和4年度の大宅壮一ノンフィクション賞受賞作である。

 落合については前から興味があった。球界の異端児が、いきなり中日の監督になったことにも驚かされたが、それがほとんど補強もせずにいきなり優勝して、もっと驚かされた。監督として8年間でリーグ優勝4回、日本シリーズ出場5回、日本一1回、Bクラス無し。歴代中日監督の中で圧倒的な成績をあげた。にもかかわらず、2011年、石もて追われるように中日を去った。

 いったい落合はなぜ、親会社の経営者、OB、中日担当のスポーツ記者などに嫌われたのか。なぜ理解されなかったのか。これが本書のテーマだが、著者は中日の選手1人1人に焦点を当て、落合と抜き差しならぬかかわりを描くことで解き明かしていく。

 読み始めて驚いたのは、作者の語り口の巧みさだ。通常の事柄だけを並べていくノンフィクションにはない質感で、たちまち作品の世界に引き込まれた。

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