「中途半端な過疎の島」を「起業の島」に変えた山口県周防大島町「ジャムメーカー」の挑戦

本土と結ぶ大橋が開通、島と言えない状況
地域おこしの逆風を跳ね返したのはジャム

 「帯に短し襷に長し」ではないが、地域おこしで一番苦労するのが「中途半端な環境」と言われる。中途半端な農村、中途半端な山村、中途半端な観光地…むしろ徹底して不利な状況の方が、かえってそれを逆手に取った地域おこし策が打てるだろう。何より「中途半端」に生活やコミュニティーが維持できるために、地元住民の危機感が薄い。地域おこしのいわば「最強の逆風」なのである。だが、そんな逆風をものともせず、地域おこしに成功して全国から注目される「中途半端な島」が山口県に存在する。その成功のきっかけは小さなジャムメーカーだった。

 周防大島、正式には「屋代島」だが、地元でそう呼ぶ人は少ない。山口県民は単に「大島」と呼ぶ。1976年7月には島と本土を結ぶ大島大橋が開通。もはや離島という風情ではない。生活も本土と密着。それにもかかわらずピーク時の1945年には約6万5000人いた島の人口も、戦後は減少が続いた。

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