定年後の起業から生まれた 最適塗布乾燥システム開発ベンチャー ─Shimada Appli (シマダアプリ)─
🔸すべては赤提灯で始まった
少量吐出のスプレーガンで注目
高齢化社会の日本では、企業を定年退職した後に長い時間が待っている。
かつては、そんな長く待つ必要はなかった。1970年代までの日本では55歳で定年退職するのが当然だったのも、1970年の日本の男性の平均寿命は69歳ほど。それ以前の1960年にはおよそ65歳だったから、定年後の期間は僅か10~15年程度というのが平均だったことになる。
その後、高齢化社会に対応して定年は延長され、80年代に60歳定年になり、現在は希望者のみ65歳に雇用延長され、2025年から65歳定年になるとされている。一方、2019年には男性の平均寿命は81歳を超えて、仮に65歳で定年退職したとして平均寿命まで15年以上、60歳なら20年以上にもなる。20歳で成人してから60歳までは40年である。つまり社会に出てからの人生の半分以上の長さの期間が定年後に残されるのが平均的になっている。
このため、趣味やボランティアなどのセミリタイア生活に入るのでなく、会社を定年退職した後も、ビジネス社会に身を置き続ける人も少なくない。たいていは前職の関連業界で、かつての経験や技術を社会に役立てたいとの思いがあるのは容易に想像できる。
だが、中には、一本独鈷、起業をして再チャレンジする意欲的な定年退職者もいる。埼玉県川口市にある最適塗布乾燥システム提案ベンチャーShimada Appli(資本金800万円、従業員2名)は、そんな会社だ。
同社を創業した島田隆治は、接着剤、コーティング剤などを手がける外資系メーカーに長年勤務し、コーティング・システムなどを開発するセールスエンジニアだった。2009年に定年退職を迎えるが、その後は契約社員として働きながら、「むしろ趣味の絵画に没頭する日々を過ごしていました」と、島田は振り返る。