見出し画像

正体不明の野菜

 強い陽射しが続く夏場は、生ごみを家の外のゴミ箱に入れると大変な事になりそうなので、ビニール袋に入れて、台所の蓋付きのゴミ箱に入れるしかない。

 生ごみを家の中のゴミ箱に捨てた翌朝は、いつも臭いの確認作業で鼻をクンクンさせてみる、僅かに臭っている時は、1日の始まりにテンションが下がってしまう。何か良い方法はないものか、と思案していたら閃いた。

 そうだ、1個余っているプランターの土の中に埋めてみよう。8月の初めに実験開始、憂鬱だった生ごみ処理がワクワクする実験へと変化した

 実験といえば聞こえは良いが、只の思いつきなので、楽しみながらの実践である。

 横60㎝縦20㎝高さ18㎝のプランターの土を3つに区切り、その内の角の1箇所に穴を掘り埋めてみた。そのまま放置していたが、臭いもしなくて良い土になりそうな良い感触があった。

 しかし、分解に時間を要する事は明らかだ。『まぁ、お試しだから楽しくいこう』と思っていた。

 暫くその実験の事をすっかり忘れていると、そのプランターからいつの間にか植物が生えていると夫が気づいた。何の野菜だろうか❓プランターを覆い隠すくらいに緑の葉が育っていて、思わぬ副産物だと嬉しくなった。

 臭い対策で埋めたけれど『良い肥料になり良い土になってくれたらな』くらいの軽い気持ちだったので、いつの間にか植物が生えてきた事に仰天し、そして何の野菜だろうか、食べられるだろうか、とワクワクしてきた。

 朝顔の植えてある3個のプランターの角に、夫がその植物を少しだけ株分けをして、植え付けをしてくれたので、謎の植物のプランターが4個になり、更に観察へと段階が上がっていった。しかし、株分けをした細くて弱々しい植物が、とても生育するとは思えず、さほど期待はしていなかった。

画像3

 10月に入ると、プランターを覆い隠すくらいだった謎の植物が枯れ果てていたので抜いてみると、いとも簡単に抜けた、もっと大切にしてあげればよかった。

 いったい何の野菜だったのだろうか、私はてっきり南瓜だと思っていたが『南瓜は大きい野菜だから小さいプランターでは育ちにくいだろうな』と思いつつも、楽しみにしていたので残念だった。

 10月に入り秋晴れの日が続いていたある日、また夫が気づいた。『小さい瓜がなっている』と教えてくれたので、慌ててプランターのところに行ってみた。直径3㎝程の可愛い小さい1個の瓜を見つけ、もう感動の域であった。

 他の3個のプランターからは育たなかったが、1個のプランターが見事に良い仕事をして、謎の野菜は瓜だと判明した。

画像1

 そういえば、無農薬有機栽培の瓜をお裾分けして貰い、美味しく食べたのであった。瓜を育てた方、お裾分けしてくださった方、毎日水やりを欠かさない夫、生命力のあるその種とお天道様にも感謝しなければならない。もしかしたら、食べられる日がくるかもしれない。そして、日々の暮らしに見つけた、小さいなワクワクをもう少し楽しもう。

この記事が参加している募集

よろしければ、是非サポートをして頂きますようにお願い致します。 貴方のサポートが、大変励みになります。良い物が作れるように、色々な経費にしたいと思っています。