やらされ「ネクステ」を意味ある勉強にするためのヒント
こんにちは。予備校講師・受験コンサルタントのシンノです。
前回、「ネクステ」信仰についてお話ししましたが、かく言う私も、河合塾で教え始めるまでは「ネクステやっておけ」と言っていた一人です。この考えが変わってきた1つのきっかけは、お付き合いのある高校の授業カリキュラム。その学校では、高校1年までは文法を明示的に指導するのではなく、アクティブラーニング的に体感的な指導を英語の授業で行っているのですが、高校2年生になると、突然「Vintage」が渡されます。そして、授業内で特に解説されるでもなく、自習して毎週小テストだけ実施される、というカリキュラムなのです。
前回述べたように、「ネクステ」(ここでも、「Vintage」や「UPGRADE」など類書を含めてこう呼ぶことにします)は、ひと通り英文法を勉強し終わった人が取り組むべき教材ですから、まずカリキュラムの流れに問題があります。そして、これも遠慮なく言いますと、かなり多くの高校が採用している「ネクステ」を宿題として課して小テストだけやるというスタイルは、改めるべき学習法だと思います。それは、「ネクステ」を使った学習で最も陥りやすい失敗である、答えを覚えただけで終わるという過ちを促進してしまうからです。
多くの生徒は、問題を解き、自己採点をし、解答が①だったら、なぜ①が正解かを確認し、そして、正解が①であると覚えようとします。そして、大半の高校の小テストは、このやり方で点が取れます。なぜなら、「ネクステ」の問題とまったく同じ問題のコピペで小テストが構成されているからです。
そして、これは一番やってはいけない学習法なのです。通常、四択の文法問題を授業で扱う場合、予備校講師は、正解が①である理由と、他の選択肢がダメである理由をレクチャーします。四択問題のメリットはまさにここにあり、生徒が間違えてしまう可能性がある答えを選択肢の中に埋め込ませることによって、理解していないことを顕在化させることができる。ですから、間違えて選んでしまった選択肢がなぜ間違いなのかを把握することが、四択問題の勉強で一番大事なことです。もちろん、中には単なる熟語、セットフレーズで決まっているというものもあるでしょう。そういうものは、答えを覚えればいいかもしれない。でも、そうでない問題もたくさんある。この識別は、特に文法の基礎がなっていない生徒の場合、非常に難しい。そして、「ネクステ」系の大半の問題集も、これらの点に注意して解説されているものは少ない。
おそらく、文法をひと通り勉強した受験生が、隣に予備校講師を置いて必要に応じて解説を受けながら「ネクステ」を1冊やりきれば、相当な力がつくでしょう。でも、実際はそんな勉強ができる人はいないのです。
少しでもこの状態に近づくには、「ネクステ」に取り組む前提条件を自分が満たしているかを確認しましょう。英文法の基礎をひと通り学んでいるでしょうか?そうでないのに「ネクステ」が宿題になってしまったという学校の人は、「ネクステ」系をやる前に、「SKYWARD総合英語」(桐原書店)のような総合英語の文法書の該当単元をひと通り読んでから、「ネクステ」の同じ単元をやるようにしてください。また、「英文法基礎10題ドリル」(駿台文庫)を、不明箇所は参考書などで確認をしながら自習して基本的な構造を理解してから、「ネクステ」に取り組むのも良いでしょう。そして、「ネクステ」をやるときは正解の理由だけではなく、あなたの解答が不正解の理由もしっかり確認してください。不正解の理由が自分で判断できないときは、必ず先生に質問をしましょう。
学校の小テストが問題集の中の問題とまったく同じなら、そのテストで高得点を取れても安心してはいけません。正しい勉強法を身につけて、やらされているものを少しでも有意義なものに変えていきましょう。
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