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【公開記念連載コラム】<『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はどんな作品?>(12)「細馬宏通さんゲスト 上映後アフタートークレポート」

現在絶賛公開中の『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』。作品のことをもっと知ってもらおうと、その魅力や背景をコラムとして投稿しています。第12弾は9/21にシアター・イメージフォーラムにて行われた、細馬宏通さんを招いてのアフタートークの模様をお届けします!

過去のコラムはこちら「【公開記念コラム】『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はどんな作品?」

細馬さんの仕事はジェスチャー研究をはじめポップミュージックやドラマの批評、音楽活動まで多岐にわたりますが、アニメーションについては初期アニメーションを研究した画期的著作『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』や、最近ではエヴァンゲリオンのOP映像などを分析したテキスト発表しています。

それらの内容は、どれも細かな動きなど細部の表現からアニメーションの本質を突くような、目の覚めるものばかりです。進行を務めたニューディアー・土居伸彰は、そんな細馬さんの関心に引き付け、キャラクターの動作から『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はどう見えたのかを問いかけます。

それに対し細馬さんは、まず面の塗り方について取り上げます。キャラクターは動くと、アングルが変わって光の当たり方が変わっていきます。しかしその変化が本作では『トイ・ストーリー』のような3D的な立体感を表すのではなく独特であり、特にジョセフの頭髪と髭の塗りには驚いたと述べます。

そんな光の受け方への意識は、あたかも映画というメディアの本質に言及するような形で演出されていると細馬さんはさらに指摘し、ジョセフの顔に花火の光が投射されるシーンは、まるでスクリーンに光を投射する映画の構造そのものであるという解釈を披露してくれました。

また、それと同じような文脈で、エマがジョセフに朗読をする場面についても読み解いていきます。朗読を始める前にエマがジョセフに懐中電灯の光を当てることも、「ジョセフに向かって映画を投射しているようだ」と語り、本作の詩との結びつきを具体的なイメージを通じて紐解いていきます。

また、この日トークで繰り返し触れられたのは、かすかな輪郭線の震えについてでした。細馬さんはその震えを「ちりちり」という言葉で形容します。そして興味深いのはその「ちりちり」が、主要な登場人物を中心に、彼らが触れた電話やルアーなどの「もの」にもつけられていたことだと語ります。

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そのようなある種の所有の先触れでもある震えを念頭に置きながら、細馬さんは『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』の物語の核にある「借り物」性についてトークを展開します。

細馬さんは『新しい街』の”原作”であるレイモンド・カーヴァーの「シェフの家」には、それまで暮らしていた家を出ていかなければならないと宣告されたときに、家の物がすべて「借り物」であったと妻が気づくシーンがあると言います。

この場面は直接『新しい街』には描かれませんが、やはりその「借り物」性はジョセフが借りた家に「ちりちり」とした輪郭線が現れないことからも明らかであるのではないかと指摘し、そしてこの関係性は、そのまま北米大陸でフランス語を話すケベック人と同様のものであると細馬さんは解釈します。

このように、原作のエッセンスを巧みに抽出していることへの読み解きや、普通なら見過ごしてしまうようなディティールの指摘しながら、目からうろこが落ちるようなトピックを細馬さんは次々と展開し、もう一度作品を観返したくなるようなこの日のトークは、あっという間に終了時間となりました。

『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はシアター・イメージフォーラムで絶賛公開中!今後、名古屋シネマテーク(10/17)、出町座(10/23)、上田映劇(10/24)、横浜シネマリン(11/14)、金沢シネモンド(近日)、テアトル梅田(今秋)、神戸アートビレッジセンター(公開日未定)にて全国順次公開となります!

パンフレットに加え、特典付きの本編ブルーレイも劇場限定で発売。また、YouTubeでは特別メイキング映像も絶賛公開中です。ぜひご覧ください!

なお、出町座では10/23にニューディアー土居伸彰がアフタートークを行うことが決定しておりますので、関西圏の方は是非こちらにもお越しください。

本作の最新情報は、公式ツイッターアカウントをチェック!

https://twitter.com/ND_distribution


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