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コロナは地方創生を助けるか?(統計から読み解く居住地の変化)

この記事は10分で読めます。

コロナで東京の一極集中が是正される。そんな話を聞くことが増えました。

東京に行く必要がなくなり、オンライン会議など在宅勤務も一般化しつつあるため地方でも仕事ができるようになる、もしくは地方は"疎"な空間であるため、感染症のリスクが小さい、そんな声が聞こえます。

総務省統計局では、毎月人口移動が報告されています。今回はこちらのデータを参照しながら、コロナが地方創生を助けるか?ということを考えたいと思います。とくに緊急事態宣言が発令された4月に注目します。

(そういえば、かつて、東京にミサイルが飛んで来たら一極集中もなくなるかもね、というアホのような視点で記事を書きました。この話は忘れます。。。)


2020年4月の転入超過数(どれくらいの人が引っ越しているか)

まずは下の地図と表をご覧ください。これはプラスなら「転入者が多い(人口が増えている)」ことを表しています。

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出典:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)4月結果』


転入超過の多い上位5都道府県は、神奈川県、東京都、埼玉県、大阪府、福岡県となっています。名古屋市有する愛知県が入っていないのが意外に思えます。

逆に、転入超過の少ない5都道府県は、岐阜県、青森県、兵庫県、茨城県、長崎県となっています。1300人前後が4月に減っています。

これをみると、やはり大都市圏に人口が集中する傾向にあるようです。

次は、2019年の4月と2020年の4月で比べてみましょう。


コロナの人口移動への影響は?(前年度からの転入超過数の増減割合)

こちらをご覧ください。

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出典:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)4月結果』
(2019年4月の転入超過数に対する2020年4月の転入超過数の割合を計算した値)


2019年の転入超過増減割合と2020年の転入超過増減割合を比較したものです。

ここからみえてくることは、宮城県や山梨県は2019年に比べて、大幅に転入超過の人数が増加したということです。

これはコロナの一つの大きな影響と言えそうです。4月の統計だけをみると、東京や他の大都市への転居をやめた人が多かったのではないかという仮説がたてられます。

(4月に引っ越しをしなかっただけで、5月以降に前年度との比較をすると傾向が変わってくるかもしれないことには注意が必要です。)

そして、奈良県では2019年に比べて大幅減少です。これは何が理由でしょうか。奈良県の2019年4月の転入超過数は65人、2020年4月は-284人です。高校や大学入学者、新卒の学生が4月からの引っ越しをとりやめたと考えるのが自然と思います。こういった層は今後引っ越しをするでしょうから、年間を通してみると実はそれほど影響はなさそうです。


東京一極集中に歯止め?(転入出者の増減傾向変化)

この章でもまずはコチラをご覧ください。

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出典:総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)4月結果』

コレは、転入者数や転出者数の増減傾向に2019年と2020年で差があったのかどうかを示したものです。4月の転入者数・転出者数というのは大きく変化するものではありません。この数字が大きく変わっているということは、コロナウイルスの影響がでていると考えられそうです。

それでは"色"をつけた各分類について読み解いていきましょう。

「変化ナシ・変化ナシ」の滋賀県、大分県はこれまでとそれほど傾向が変わっていないことを示しています。滋賀県は転入超過数がプラス、大分県はマイナスの傾向が引き続き続いているということです。

「大幅減(転入)・変化ナシ(転出)」の東京、愛知、京都などは人口が減少方向に向かっていることを示しています。東京は転入超過数はプラスですが、これまでよりも転入してくる人が少なくなっていて、これまでのトレンドの増加傾向が保たれていないといえます。さらに神奈川、千葉、埼玉が同じ傾向を示しているということは、東京一極集中に一定の歯止めがかけられたともいえそうです。

「変化ナシ(転入)・大幅減(転出)」には宮城、栃木、静岡、和歌山、岡山、鹿児島、沖縄などが該当します。一見脈絡がみえづらいですが、太平洋側の府県が多いようです。これらの自治体は、転入の傾向はこれまでと変わらないが、転出していく人が少なくなっています。これまで4月になると他県に多くの人が流出していたが、コロナの影響(恩恵?)で外に出ていく人が少なくなった。つまり、人口維持の方向に動いているといえそうです。なお、このグループで異質なのが大阪府です。実は毎年多くの人が府外に流出していたが、緊急事態宣言が発令されたこともあって、他県への移動や引っ越しをとりやめたと考えられそうです。

最後に「大幅減(転入)・大幅減(転出)」を説明します。北海道、青森、秋田、新潟、島根、広島、福岡、長崎など日本海側に面する道県が多く該当します。転入が減少=人口が増えない、転出が減少=人口が増えない(出ていかない)とぢちらも人が増えない方向に動いています。極端ではありますが、鎖国していると思っていただけると分かり易いでしょうか。北海道などはまさに陸海空の交通手段を封鎖すると鎖国状態となります。


コロナは地方創生を助けるか?

今回、統計データを活用して人口移動についてみてきました。

都道府県レベルでみていくと、東京都をはじめとした一都三県への集中に歯止めがかかっていることが分かりました。

これほどしっかりと結果がでるとは考えていませんでしたが、面白いデータです。

しかし、この傾向は一過性のものの可能性があります。

国民全員が、感染症というリスクをどう考えるか、そして地方が都会より不利な面が解消されていくと、地方の人口維持が進んでいく可能性があります。

「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」(増田寛也編著)で述べられているように、これまで地方と東京の関係は、2000年以前は東京の魅力の「プル型」、2000年代の東京への人口移動は「プッシュ型」でした。

アフターコロナの時代には、東京など大都市はリスクをはらんでおり、東京から地方へのプッシュ効果(逆プッシュ)が望めそうです。しかし、地方には今仕事がありません。
これからの世代には、地方をよりよくする取り組み、特に現在生じている問題や課題、将来生じるニーズを的確に捉えて仕事につなげていく、そして地方の魅力で東京から人を引っ張る(逆プル)することが必要だと考えます。

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コロナは地方創生を助けるのか?2020年4月の人口移動を切り取ってみると、地方創生を促していく可能性は十分にありそうです。

しかし、一時点だけのデータで判断するのは早計です。継続的にモニタリングし、可能性を探っていきたいと思います。

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