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製造年月の表示義務は、なぜ日本酒の強みになり得るのか?

日本酒に製造年月があると紛らわしいので、いらないんじゃないか、という話を先日しました。
そもそも、製造年月の表示義務があるのは、アルコールの中では日本酒だけです。

でも、よーく考えてみると、日本酒にだけに製造年月があるのなら、逆にその点で、他のアルコール類と差別化し、日本酒の強みにできるかもしれません!

製造年月がないワインの場合

ワインには、熟成するとおいしくなるものがあること、また、どこでどのように熟成されていたかで味が大きく変わってしまうことがあることもよく知られています。

ワイン、特にビンテージワインを輸入して、自身のお店で提供している人から聞いた話によると、そのワインを購入するかどうかを決める際には、それまで、そのワインが、どこでどのように貯蔵・熟成されていたのかを知ることは、大事だそうです。 

確かに…、だって、瓶の中のワインの色は、購入前にいくらかは確認できますが、試飲はできない。
なので、貯蔵・熟成についてできる限り正しい情報を売り手から入手して、香りや味を想像するしかない。

そのワインの貯蔵・熟成の情報を売り手から得ようとしても、醸造元でない場合も多く、情報の信憑性は、売り手の信用に頼るしかありません。

買い手自身が、そのワインの貯蔵・熟成について、エチケット(ラベルのことですね)を見て確認できることも、あまりありません。

製造年月がないワインは、エチケットを見ただけでは、そのワインがいつまで醸造元で貯蔵・熟成されていたのか分からないのです。

そうなると、信用できる売り手を見つけることが、ワインを、特にビンテージワインの買い手にとってとても重要で、これに一手間必要になります。

日本酒の製造年月は、貯蔵・熟成の情報を伝えてくれる!

ワインと同じように日本酒も、購入前に試飲できないです。

でも、日本酒には、製造年月(瓶詰め年月)が表示されているので、少なくともその年月までは、醸造元の酒蔵が貯蔵・熟成していたことは明確です。
熟成方法までは分からないにしても、酒蔵に問い合わせることができる。
製造年月以降の貯蔵・熟成についてのみ、売り手(酒店)に確認すれば十分です。

貯蔵・熟成の責任の所在は、製造年月までは、酒蔵、それ以降は、酒店、と明確。
買い手は、試飲できなくても、正確な情報を入手し、香りや味を想像しやすい。

製造年月の表示…、これは、買い手にとって、日本酒の大きな強みではないでしょうか。

それでも、日本酒の製造年月について、啓蒙は必要!

製造年月の表示は続けるにしても、製造年月が上槽年月ではないこと、そして、日本酒造りの最後の工程が貯蔵・熟成であることは啓蒙していかないと、世間の誤解はずっと続き、せっかくの熟成の可能性が育ちません。

以前、秋田県酒造共同組合が、日本酒には賞味期限がないことを啓蒙していることについて、まとめました。

これに倣って、例えば、
日本酒の製造年月は、酒蔵が販売するためにその日本酒を瓶に詰めた年月で、上槽(あるいは醸造)年月ではありません
とか
日本酒造りの最後の工程は、多くの場合、貯蔵・熟成で、製造年月は上槽年月ではなく、販売のために行われる瓶詰め年月です
と啓蒙していく。

また、「製造年月」を「出荷準備完了年月」など、世間一般に分かりやすい言い方に変えることも、考えるべきかもしれません

さらに、もう少しつっこんで、

「日本酒は、製造年月頃が飲み頃のひとつではありますが、そのときだけがおいしいとは限りません。
ご自宅で、さらに熟成を続けいただくことも可能です。
お一人おひとりが、それぞれのおいしさのピークを見つけてくださったら嬉しいです。」
 

なんてことまで言えたら、日本酒の凄さや可能性がもっと認知されていくと思います!


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