ベンチャーの育成に乗り遅れた日本。ユニコーン企業数は6社だけ
設立10年以内の未上場企業でありながら、その評価額が10億ドル(1,400億@140円/ドル)を超えるベンチャーのことを、めったにお目にかかれないという意味で、伝説の生き物である一角獣になぞらえて「ユニコーン」と呼びます。
これは、米国のベンチャーキャピタルであるカウボーイ・ベンチャーズ社のアイリーン・リー氏が使い始めたことをきっかけに知られるようになり、今ではベンチャーの世界では広く認知されています。
かつては、米国ではメタやツイッター、そしてモデルナ、日本ではメルカリなどもユニコーンでした。
アイリーン・リー氏がユニコーンという用語を使い始めた2013年、世界でもユニコーンに当てはまるベンチャー企業はわずか39社しかありませんでした。
ところが、2022年10月現在、CB Insightsによるとその数はなんと約1,200社にものぼります。その半数強が米国、次いで約15%が中国のベンチャーです。また、バイオを含むヘルスケア領域を見るとおよそ100社のユニコーンが存在します。
過去10年足らずの間に、ここまでなぜユニコーンが増えた?
過去10年足らずの間にこれほどまでにユニコーンが増えた理由として、この期間にベンチャーキャピタルによるベンチャー投資額が数倍に増えたため、早期に上場を目指さなくても成長に必要な資金を調達できたことや、ITベンチャーを中心にインターネットの普及によって短期間のうちに世界的に売上を伸ばすことができたことなどが挙げられます。
日本においては、2018年に政府により閣議決定された「未来投資戦略2018」の中で2023年までに20社のユニコーンまたは上場ベンチャーを創出するという目標が掲げられています(その後、2020年には「成長戦略フォローアップ」において、2025年まで50社のユニコーンまたは上場ベンチャーに上方修正。さらに、2022年には「スタートアップ育成5か年計画」で近い将来100社のユニコーン創出に修正)。
日本のユニコーン企業数はわずか6社
しかしながら、評価額が10億ドルを超える未上場ベンチャーは2022年10月現在わずか6社であり、ユニコーンはまだまだ伝説の域を脱していないようです。
先ほどの海外でユニコーンが急激に増えた理由を翻して、日本のベンチャーキャピタルによる投資額がまだまだ大きくなく、ある程度成長した企業がさらなる成長に必要な資金を調達するためには、証券取引所への上場が必要となることや、言語の違いなどを理由にITベンチャーの海外進出がうまくいっていないことなどが挙げられます。
国の経済成長と発展がベンチャーの成長にかかっている
なお、評価額が100億ドル(1兆4,000億円)を超える企業は、ユニコーンと比較して10倍という意味の「deca」を組み合わせ「デカコーン」、1,000億ドル(15兆円)を超える企業は100倍を意味する「hecto」を組み合わせ「ヘクトコーン」と呼ばれています。
2022年10月現在でデカコーンは55社、そして、ヘクトコーンは、Tiktokを運営する中国のByteDance社(1,400億ドル)、イーロン・マスク氏率いる航空宇宙メーカーであるSpaceX社(1,270億ドル)、中国のアパレルE-commerceのSHEIN(1,000億ドル)の3社とされています。
今の時代、国の経済成長と発展がベンチャーの成長にかかっているといっても決して過言ではありません。上場企業に目を向けても、世界の時価総額トップ10社中7社が、元々ベンチャーキャピタルから出資を受けていたベンチャーなのです。
日本企業は、バブルの時代であった平成元年にはトップ10社中7社、そして50社中32社を占めていましたが、ベンチャーの育成に乗り遅れた今、トップ50社に入るのはトヨタのみです。巻き返しが必要です。
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