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ルーシーと魔女 #5

ルーシーの母、クロエは自分の子供の頃を思い出していました。

当時クロエにはフロレンシアという友達がいて、毎日のように遊んでいまし

た。ある日、フロレンシアはクロエに言いました。

「自分は魔女なの」

クロエは、どうしてそんな変なことを突然フロレンシアが言ったのか理解で

きませんでした。何をやるのもいつも一緒だったのに、自分だけ目立ちたい

から嘘を言っているんじゃないかと思いました。

裏切られたような気持ちになりました。

「そんなの嘘よ!魔法なんて物語の世界にしかないわ」

クロエは、そう返しました。

次の日、クロエがいつものようにフロレンシアの家へ行くと、

昨日まであったはずのフロレンシアの家がなくなっていました。

その日からクロエとフロレンシアが顔を合わせることはありませんでした。


数年後、クロエが大人になってから魔女の掟の話を耳にしました。

魔女は突然やってくること。

レンガ造りの家に住んでいること。

自分が魔女であることを教えていいのは、家族以外には一人だけで

親友と思っている一人にしか教えられないこと。

他の人に魔女だとバレると魔法が使えなくなること。



もしかして


クロエはフロレンシアに言ってしまったことを後悔しました。

どうして大切なお友達が勇気を出して告白してくれたことを

嘘だと言ってしまったのだろう。

どうして信じてあげられなかったのだろう。

クロエは、ずっとフロレンシアに謝りたい気持ちを抱えていました。

どんな言葉も大好きな人の言葉なら信じてあげること。

クロエは、自分の娘であるルーシーにいつもそのことを教えてきました。

もし彼女に親友ができたら。そしてその親友が魔女だったら。

何を言われても信じてあげられる心を持った子になって欲しかったのです。

自分と同じ過ちを犯さないように。


「ねぇママ、聞いてる?」

ルーシーに言われ我に帰ったクロエは言いました。

「ごめんなさい。考え事をしていたの」

「もうママったら。ねぇ今度マヤをお家に呼んでもいい?」

「ええ、もちろんよ」

「やったー!そうだ。マヤのママににも来てもらうのはどうかな?

私も会ったことないんだけど、きっと素敵なママだと思うの。

マヤっていっつもママの自慢話するのよ。大好きみたい」

ルーシーはとても嬉しそうに話しました。

「それはいい考えね。ケーキを焼いて準備をしなきゃ」

「そうね。それに招待状も作らない?

 “Welcome Maya” “Welcome Florencia” って書くのよ」

「フロレンシア・・・」

「ルーシー、マヤのお母さんはフロレンシアっていうの?」

「ええ、そうよ。マヤに教えてもらったわ」

クロエは胸に手を当て窓の外に目をやりました。


つづく




 


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