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【劇場めし 第37回】半蔵門の中華料理店「幸福園」

「劇場周辺の、おすすめのご飯屋さんをご紹介!」する、このコーナー。今回は半蔵門駅周辺です。半蔵門の劇場といえば、やはり国立劇場でしょう。歌舞伎、文楽、能などの伝統芸能を上演する劇場であり、後進の育成や資料館運営も行う、伝統芸能全般に関する国内有数の施設です。最寄り駅は地下鉄の半蔵門駅、又は永田町駅。

今回のテキストはドキュメントでお送りします(…と言っても、この原稿は毎回ドキュメントですが・笑)。8月のある日、国立劇場で用事を済ませた僕は、そのまま次の現場へ移動する予定でした。時刻は15時を過ぎたあたり。お昼を食べ損ねた関係で結構な空腹具合です。移動先で食べても良いけれど、当コラムのリサーチを兼ねて、この付近で食事処を探すことに。

しかし、この日はあいにくの土曜日。都内オフィス街の飲食店は休店率が高く、かつ15時という狭間の時間帯。観劇ファンの方々ならご経験あるかもしれませんが、昼公演と夜公演の間の時間帯、特に昼公演後は休憩中の飲食店が多かったりします。

街を歩き、お店を見つけては近づき、「準備中」の看板を見てその場を離れる…。何度もそれを繰り返し、気分はすっかり腹ぺこ迷子。十字路に辿り着く度に、このまま進むべきか、戻るべきかで悩みます。

歩き疲れて、もう諦めようと思った瞬間、こちらの看板を見つけました!

ばっちり営業中、しかもランチは17時まで。歓喜!! 価格帯もリーズナブルで、これは入るしかありません。お邪魔します!

着席してランチメニューを見ます。どれも美味しそう、そしてコスパ高し。ううむ…と悩みつつ、メニューの一番上の週替わり定食を頼むことにしました。豚肉スライスと玉葱と玉子の炒め定食。きっと美味しいに違いない。

厨房から鉄鍋を振る賑やかな音が響いたのち、注文した定食が運ばれてきました。こ、このボリュームは…。メニューの記載からサラダなど小鉢数種が付くことは分かっていたのですが、メインのおかず量がすごいことに。この半分の量でも立派な定食として成立するでしょう。これでご飯のおかわり無料とは何たる誘惑…。ゴクリと喉を鳴らしつつ、では、いただきます!

最初に豚肉と玉葱と玉子の炒め物を一口。……う、美味ーい!! この旨味は何だろう…!? おそらく「◯◯醤」のような、中華特有の旨味を引き出す調味料が使われていると想像しますが、これは、ご飯に合う。合い過ぎる。味の主張が強く、ご飯が進む味付けなのに、濃過ぎない、しょっぱ過ぎない。ギリギリで過度を回避する絶妙な味付け加減。はっきり言って米泥棒以外の何者でもありません!

豚肉、玉葱、玉子など具材の量も多く、これは食べ応えあるなぁ。甘味、塩味、コク、それらが主張し合い、かつ食べやすい旨味。何度も書きますが、ライスが進みます。このおかずでおかわりしない訳にはいきません。

中華風なのか、サラダには薄味のドレッシングがかかっています。かきたま汁のようなとろみのあるスープも薄味。杏仁豆腐も薄味でした。これ、メインのおかず以外を薄味に仕立て、定食全体で味の濃淡を組み立てているのかも。お盆に並んだ料理全体でひとつの味・食事を演出している…?

などと考えつつ、本能の赴くままご飯をおかわりし、週替わり定食を満喫しました。最後はご飯の上におかずを乗せて、某グルメドラマをイメージしながらフィニッシュ。ああ、美味しかったー! ごちそうさまでした。

ふとメニューを見ると、ランチタイム時は全てのソフトドリンクが+100円で注文できるそうです。最後までサービス満点。満腹で頼まなかったけれど、食後のホットコーヒーで一息つくのも良いなぁ。

お店を出たのが16時半頃。休憩中の飲食店は夜の営業に向けて準備を始める頃合いかもしれません。この狭間の時間帯にランチをしっかり堪能できたことは嬉しい限り。この地域に限らず、昼公演と夜公演の間にお店を探してウロウロしがちな僕にとってオアシスのような存在でした。手頃な値段でお腹いっぱい食べられる、半蔵門の中華料理店・幸福園。ぜひ足を運んでみて下さい。

文:園田喬し(演劇ライター・編集者・『BITE』編集長)

幸福園
東京都千代田区平河町1-9-1 メゾン赤坂1F
TEL:03-5212-9888

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