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“パッケージ”から紙との未来を考える|TAKEO PAPER SHOW 2023「PACKAGING—機能と笑い」

10月13日(金)から開催中の『TAKEO PAPER SHOW 2023「PACKAGING—機能と笑い」』。紙の専門商社・株式会社竹尾が、1965年より行っている紙とデザインのイベントです。「おちらしさん10月号」美術版でもチラシをお届けしています! 

5年ぶり、49回目の開催となる、今回のテーマは「パッケージ」。「PACKAGING—機能と笑い」と題し、紙の近未来の可能性を探る「機能」と、情緒あふれるデザインの魅力に迫る「笑い」。2つの観点から紙を見つめなおすイベントとのことで、チラシをお届けするおちらしさんとしても見逃せません。早速、会場に伺ってみました!

A:笑い――Laughter

まず初めに見えるのは、黄色の台座に置かれたアイテムの数々。実際に販売されている製品のパッケージデザインに迫る、「笑い」のコーナーです。ここでは「笑い」のキュレーターを務める、デザイナーの梅原真さんが選び抜いたパッケージ100点が並び、それぞれの持つ魅力が紹介されています。

台座も色がきれいな段ボール素材、「ファインフルート®」による紙製です。

通常「魅力的なデザイン」と言われるとすっと洗練されたようなイメージを抱きがちですが、パッケージに必要なのは「思わず手に取らせる力」。じっと見てしまったり、驚いたり、表情がふにゃんと緩んでしまったり……。いつのまにか製品とのコミュニケーションが取れてしまう、「笑い」を含んだデザインこそがパッケージには大切なのです。

国定農産「すっぴんガールのハトムギうどん」

例えば、こちらのうどんのパッケージ。一見するとレトロな化粧品の外箱のようですが、すっぴんの女性の肌が持つ“白くつるっとしたなめらかさ”が伝わり、そのまま瑞々しいうどんのイメージにもすんなりと重なり置き換わってしまうから不思議です……!

国定農産「すっぴんガールのハトムギうどん」の解説部分

各パッケージの持つ要素は、梅原さんによって40のキーワードに分類されています。「すっぴんガールのハトムギうどん」は、「とぼけ」「しみじみ」「おすまし」「脱力」とのこと。ふふっと笑ってしまう親しみやすさが感じられますよね。

就労支援センターNEST 青葉町「富士宮にんじん」

こちらは日本パッケージデザイン大賞でも銅賞を獲得している、にんじんジュースのパッケージ。瓶と飲み口の部分の和紙だけのシンプルな作りですが、こだわりの詰まった美味しいにんじんジュースであることがパッと一目で分かります。梅原さんが選ばれたのは、「とぼけ」「極めつけ」「わくわく」「見立て」「まんま」のキーワード。まさににんじんそのまま、素材の持つ栄養素がそのままに新鮮なジュースになっていることまで伝わってきます。

お馴染みのあの製品から、初めて出会う地方の名産品まで。厳選された100点から、パッケージの持つ”伝える力”とじっくり向き合えるコーナーです。

B:紙と循環—―Paper and Cycles

資源としての「紙」って、もったいない? 環境に悪そう?
こちらのコーナーでは、実は環境への負担も少ない「紙」という資源の循環について改めて学ぶことができます。例えば伐採した木は、中央部分が建材となり、その周りの端材が紙パルプなどに生まれ変わるため、余すことなくすべて利用されるのです。

伐採された木のサンプル

それだけでなく、加工時に出る木くずや、パルプの製造過程で出る液体(黒液)などまで燃料として活用され、製紙産業全体で見ると使用エネルギーのうち54%をも賄っているそう。無駄のない過程には驚きです!
再生紙ではない新しい木から取り出された繊維「バージンパルプ」の特性や利点、世界トップクラスである日本の古紙回収についても紹介されています。デジタルが普及したことで昔ながらの素材と思われがちな「紙」ですが、これからの未来にも続いていくサステナブルな資源だと分かりました。

C:機能—―Function

人間と紙のお付き合いはまだまだ続いていくと納得したところで、未来についても考えてみましょう。ここでは紙の「機能」に改めて着目し、13組のクリエイターによる”近未来のパッケージ”を見ることができます。

例えばこの日本酒の瓶。液状のパルプを直接瓶に塗布することによって、まるで繭のような日本酒専用のパッケージが出来上がります。

NEW「塗紙-NURIKAMI-」

あらかじめ仕込んだ糸を引くことで、孵化するかのように開封できる様は圧巻。和紙のように柔らかく澄んだ風合いは藁を混ぜたり、色を付けたりと変化をつけることも可能なので、世界にたった一つのオリジナルパッケージも叶います。特別な贈り物にもぴったりの素敵なアイデアです。

こちらはデリケートな果物のための、柔らかな紙のパッケージ。紙を重ね立体化することで厚みをもたせ、クッション性にも優れた梱包となっています。立派なマンゴーが実るまでのドラマをも感じさせるようです。

原研哉+原デザイン研究所「マンゴーの本」

情報を伝える印刷物としてだけではない、紙の進化を感じられる「PACKAGING」の競演。少し先の未来を豊かにしてくれる日も、きっとすぐに来るのではないでしょうか。

D:FINE PAPERS

展示の最後には嬉しいお土産も。竹尾の様々な紙のサンプルを、本のように綴じて持ち帰ることができます。1枚ずつ手に取って重ねていく体験は、紙ごとの手触りや特徴が見えてくる驚きに満ちた時間になること間違いなしです。

パッケージの心を惹きつける魅力、そして紙という素材の新しい可能性。竹尾ペーパーショウを通して、インスピレーションに溢れた新しい想像がぐんぐんと膨らむよう。これからどんなふうに紙と関わっていけるか、どんなアイデアを形にできるか、あなたもぜひ考えてみませんか?

文:清水美里(おちらしさんスタッフ)

TAKEO PAPER SHOW 2023「PACKAGING—機能と笑い」

会期:
2023年10月13日(金)~22(日)
各日 11:00-19:30(最終入場19:00)
最終日のみ 11:00-16:00(最終入場15:30)
会場:KANDA SQUARE HALL
東京都千代田区神田錦町2-2-1 神田スクエア2F・3F
主催:株式会社竹尾
入場:事前予約制・無料
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