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【劇場めし 第29回】三鷹の、心が踊る「晩酌セット」

「劇場周辺の、おすすめのご飯屋さんをご紹介!」する、このコーナー。今回は三鷹駅周辺です。三鷹の劇場といえば、三鷹市芸術文化センター、そしてSCOOLが有名ですが、駅北口には武蔵野芸能劇場、駅からバス移動すると三鷹市公会堂などもあり、舞台上演に触れる機会の多い街。過去には三鷹市民に愛されたデイリーズカフェを紹介しています。

このデイリーズカフェ。現在はうしとら食堂と改名し、和食中心の食事処・カフェとして営業中。こちらも素敵なお店なので、機を改めてご紹介しますね。
 
さて、今回はコチラ、呑み処 さいとう。三鷹駅から徒歩5分程度。先述したSCOOLの近くです。

実はこのお店、コロナ以前から筆者(園田)のお気に入りで、何度も「伺いたい」と思いつつ、数年以上ご無沙汰していました。初めてお邪魔したのは6〜7年前でしょうか。店頭の看板にある晩酌セットに魅せられて、一人飲みに慣れていない僕ですが、ドキドキしながら暖簾をくぐった記憶があります。
 
当時の晩酌セットの内容は、生ビール1杯、握り寿司3貫、巻物1本、小鉢ひとつで税込千円。これ、めちゃくちゃ良くないですか!? せんべろセットやハッピーアワーの内容は、お店によって千差万別。だからこそ各店を訪れる楽しさがあり、僕はこの手のセットに目がありません。カウンターに座り、目の前で握られたお寿司で1杯。想像しただけで心が踊ります。
 
ただしこれは数年前の話。その後はコロナ禍の荒波もあり、値上げも仕方なし、ひょっとすると晩酌セット自体無くなった可能性も。恐る恐る(と言うのもヘンですが)店頭に近づくと、以前と同じ位置に立て看板が!

うわ〜! あるよ晩酌セット! しかも内容変わらず、お値段据え置き!! これはめちゃめちゃ嬉しい…。手書きの「お仕事お疲れ様です!!」の文字がなんと優しいこと。もはやこの文字だけで飲めます。いざ入店!
 
カウンターに座り、晩酌セットを頼みます。店内の様子も以前と変わらず、しっとり落ち着いた雰囲気。まずは生ビールと小鉢、この日はおでん風の煮物でした。淡めの上品な出汁が染みた大根&お揚げも美味。ご主人が寿司を握っている間に、早くも2杯目の注文を考えます。壁に貼られた短冊メニュー、ホワイトボードの手書きメニュー、手元のメニューを見比べながら、あれこれ検討する時間も本当に楽しい。
 
寿司下駄が運ばれてきました。まぐろ中心の構成で、万人が好むセットと言えるでしょう。右端のお寿司は昆布締め…だったと思います(間違っていたらスミマセン)。ねっとり食感が心地良く「次は日本酒だな…」と閃いた瞬間でした。鉄火巻きを口へ放り込みたい気持ちをグッと抑え、2杯目を注文します。

日本酒は高清水にしました。リーズナブルで美味しい秋田のお酒で、若い頃にもつ焼き屋で愛飲した懐かしい銘柄。なみなみと注がれたグラスへ口からお迎えに行き、一口…。美味しいなぁ。すかさず鉄火巻きを口の中へ。寿司、日本酒と共にゆったり過ごす時間。芝居の感想を反芻するのに最適です。

この展開になると、この先いくらでも飲めてしまいますが、一人飲みで長居できない性分のため、心の中で再訪を誓い、お会計をしました。暖簾をくぐり、外へ出ます。駅から近い割に人通りの少ない路地。しばらくこの余韻に浸れそう。三鷹でお芝居を観る機会があれば、最高の「隠れ家」で、観劇後の時間をゆったり過ごして頂きたいです。
 
文:園田喬し(演劇ライター・編集者・『BITE』編集長)
 
 
呑み処 さいとう
東京都三鷹市下連雀3-21-22
TEL:0422-44-4561

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