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いつか観てみたい劇団・紙カンパニーprojectの話

こんにちは!おちらしさんスタッフのきしみです。

"芸術の秋"だからか、なぜか秋は個人的に
「いつか観劇してみたい」と思っている劇団の公演が多い季節です。
色んな劇団の公演情報を追うのにあくせくしているこの頃。
気が付いたら公演が終わっていて「今回も観れなかった…次回公演こそは観よう…」ということがないよう、いつも以上に気を張ってTwitterをチェックしています。

その中でも特に最近気になっている劇団がこちら―――

紙カンパニーproject です!

オプショナルなメンバーで結成されたパフォーマンス・カンパニー。
「ニュー・ドラマ・スタイル」を合言葉に、
リアルでアクチュアルな体験の創出を目指す。

紙カンパニーproject演劇公演『人形ノイエ』(2021年)公演チラシより

こちらは現在、東京都内を中心に活動している劇団です。
劇団名に「紙」とついているので、舞台チラシや美術展チラシを扱うおちらしさんスタッフとしては親近感を抱いてしまいます。

未だに舞台公演は観に行けたことがないのですが、
実は、紙カンパニーprojectの企画展を観に行ったことがあるんです・・・!

開催されたのは少し前の2021年6月。
展示会場は早稲田大学演劇博物館の近くにあるワセダギャラリーです。

企画展では紙カンパニーprojectの立ち上げからこれまで上演してきた作品を紹介。
舞台写真や映像は勿論、実際に使用された衣裳や小道具も展示され、
きっと紙カンパニーprojectファンにとっては堪らない空間なのでしょう・・・!
展示の様子は動画からご覧いただけます。

そして、この企画展で個人的になにより嬉しかったことがあります。
それは・・・なんと過去公演の公演チラシが配布されていたこと!!
過去のチラシがもらえることってなかなかありませんよね。
とても貴重な公演資料なので、今でも手元に残しています。

企画展で配布されていた紙カンパニーprojectの公演チラシがこちら。

左から『悪霊』(2020年)、『人形ノイエ』(2021年)、『三人姉妹(仮)』(2020年)
特に『悪霊』は2種類のデザインで個人的にお気に入りです。

公演チラシや展示内容から察するに、
チェーホフやイプセンなど西洋近代劇などの古典戯曲を
現代の視点から再解釈するスタイルなのでしょうか。

企画展の年譜をみると1960年代から活動されていたそうです。
劇団公式サイトのWORKSを一番下までさかのぼってみると、当時早稲田大学構内での公演の様子も掲載されています。
1960年代といえば小劇場演劇の第一世代、まさに「アングラ演劇」の時代に当たります。
紙カンパニーprojectもその時流の中で結成されたのでしょう・・・が・・・?


チラシを見て、違和感を感じませんか?


早稲田銅羅魔館?キラリふじゐ?無人(島)プロダクション?
そして重要な脚本・演出が書いていません…。

劇場名は誤字なのでしょうか?
なぜどこにも脚本・演出が書いていないのでしょうか?

そしてよくチラシを見てみると・・・「2020年6月に設立」・・・?

1960年代から活動していたはずじゃ・・・?


そう。実は紙カンパニーprojectの公演は全て"捏造"。
全くの架空の演劇なのです。

もちろん、私が足を運んだ紙カンパニーproject企画展
『LOST IN ARCHIVES 未体験演劇ゾーン ダミー・ダ・コリャ』は
実際に開催された展示です。

しかし、展示されている公演は全て上演されていません。
舞台写真も映像も衣裳も、そして公演チラシも捏造されたものなのです。

企画展『LOST IN ARCHIVES 未体験演劇ゾーン ダミー・ダ・コリャ』のチラシ。
改めて企画展名を読むと納得のタイトルです。

では改めて、紙カンパニーprojectとはどのような団体なのでしょうか?

<理念>
やってもいない公演と、やりはしたが観られないままもう終わってしまった公演は
アーカイブだけ見比べたら同じことになってしまうのかそうでもないのか
行為芸術の「取り返しのつかなさ」を経験できる枠組みとしてこのプロジェクトを育てて行く

紙カンパニーproject公式サイトABOUTより

つまり紙カンパニーprojectの公演は、"捏造"それ自体が演目の劇団なのです
彼らのこれまでの"公演"の様子は公式サイトからご覧いただけます。

冒頭でお話したように、
気になっている公演があるけれど、気が付いたら千穐楽を過ぎて観られなかった。
この記事を読んでいるあなたもそんな経験、あるのではないでしょうか?
観たかったあの公演を「あ、見逃した」という気持ちと、
紙カンパニーprojectの公式サイトを見た時の気持ち。
2つの気持ちを比べて、あなたはなにを思いますか?

さて、そんな紙カンパニーprojectでは、
先日9月6日・7日にムーブ町屋で新作公演が"上演"されたそうです!

タイトルは『エルナニ2022』。
『レ・ミゼラブル』で有名なヴィクトル・ユゴーの戯曲『エルナニ』のリメイクのようです。

もちろんこの公演も捏造です。
しかし、Twitterで調べてみると観劇した人もいるんだとか・・・?

#エルナニ2022 もしくは #紙カンパニーproject で検索するとその様子がご覧いただけます。
一体どんな"公演"が上演されていたのか、気になる方はTwitterで検索してみてください。

以上、彼らの活動にある意味目が離せない、
けれど目にみることができない劇団のお話でした。

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