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日常に埋もれていく大切なこと。(物乞い編)

皆さんは、物乞いにお金をせがまれた事があるだろうか。
日本も含めて先進国にもホームレスはいるが、わざわざお店に入って来たりバスや電車の中で声をかけてきたりはしないだろう。

この国ではどこに行っても物乞いがいて、その度にお金を払うかどうか選択を迫られるので、自分はどう振る舞うか決めておかないとその度にストレスになる。

あなたは、物乞いにお金を要求されたらどうしますか?

当初の気持ち

この国に来た当初迷っていたが、私はお金を渡さないことにしていた。理由は、毎回あげてもキリがないし、障害をもった人でなければ働くべきだと考えていた。

ある時、バスを待っていると物乞いのおじさんが声を掛けてきたのでお断りした。そうすると後ろにいたビジネスマンは「外国人なんだからお金持ってるだろ。払うべきだ。」と言ってきた。

自分はお金を渡していないのに、何言ってんだと思い、自分の国の事なんだからあなたが払った方がいいとムッとして言った。

他の場面でも、外国人なんだから払うべきだと言われる場面が多々あった。旅行で来ていたらまだしも、こちらは現地生活費として月に24,000円の支給しかないないんだぞと内心思っていた。確かに、現地の公務員よりはいい待遇だが、日本人の私の感覚で言うと余裕ではなかった。

あなたは、10円がなくなったら困るか?

ある日、シンゴちゃんと言う先輩と歩いている時に親子の物乞いに声をかけられた。するとシンゴちゃんは、おもむろにポッケから100tkを出して渡した。これには驚いた。なぜかと言うと、物乞いの人に対して、現地の人は大体2tk、5tk、10tkを渡すのが定番であるのに100tkを渡していたからだ。1日1ドル以下で暮らす貧困層にとって、100tkあれば1日の食事が賄える。
※1tk=120〜130円くらい

慌てて理由を聞くと、シンゴちゃんはこう言った。

俺たちが10円や100円が無くなってもそんなに痛くないだろう。そのお金で助かる人がいるなら、渡した方がいいっしょ。

確かに10円が無くなってもそこまで残念に思わないし、ジュースやお菓子、タバコなどの嗜好品、つまり無くても生活に困らない物に100円を払うくらいなら、それを困っている人に渡せばいい。

私たちは、もう物質的には満たされているはずのにドンドン物が欲しくなってしまう。毎日のようにどこかで新商品は出ていて、古くなったらすぐに買い換える。それらは社会に本当に必要なのか。感覚がマヒしてしまっている。

貧困の救済の為に喜んで貧しい人に寄付することを、喜捨と言う。仏教、ユダヤ 教、キリスト教、イスラム教などでも行われている。宗教的な意味合いは置いて、こちらに余裕があるならしてもいいと思った。

貧困スパイラル。

貧困は、怠けていた結果の自業自得という考えをもっている人も中にはいると思う。私も初めの頃はそう思っていた事もあるが、バングラデシュの物乞いの人たちの暮らしにお邪魔して話していると、一概にそうとは思えなくなっていった。

親が貧困の状態だとその子供もまた貧困になってしまう。貧困のサイクルの中にいて、そこから脱する為の術を知らなかったり、救う制度や団体もあるが救われる数も少ない。その環境から抜け出して、暮らしていくことがとても難しい。

勉強すればいいんと思う人もいるが、貧困層に生まれたら学校に行きたくても、その日の生活費を稼ぐ為の労働力の1人として働くことになる。学校は、未来のために学ぶはずだが、彼らにとって未来よりも今の暮らしに必死なのである。ここでは、子供が働いている姿も珍しくはない。

私が活動していた小学校にも、学校帰りに親の仕事を手伝っている子や家の手伝いをする為に学校を休みがちになりそのまま来なくなった子などもいた。

sharing is caring.

私は、子供にはお金ではなくお菓子を買ってあげ、大人には食べ物か小額ではあるがお金を渡すようになっていた。それで貧困も解決しないし、それが裏にいるブローカーにお金が渡るかもしれないが、それでよかった。哀れだからお金を渡すんじゃなくて、懸命に生きているから何かしたいと思う。

余裕のある時に、余裕のない人を助ければいい。

今でもその気持ちでいるが、日本での生活に慣れてくると日常に埋れて見失いがちになる。かく言う私も、日々の生活に手一杯でこの言葉を見失っていた。特に余裕がない時こそ、深呼吸をして心に余裕をもちたい。書いているうちに大切な事を思い出すことができた、ありがとう自分。



ここで話していることは、自分が何に価値を置いて生きていくかの問題なので、寄付を推奨したいわけではない。情報が溢れている世の中で、「こんな生き方をすべき」「これが大事」など色々な情報があって生き方に悩むかもしれないが、結局は自分の軸で考えるしかない。

忙しい毎日の中で、これを見ている人が自分ならどう行動するか考えるきっかけになってくれることを願っている。

あなたは、物乞いにお金を要求されたらどうしますか?

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