見出し画像

小学校の先生になるまで。 東南アジア旅①

「俺は、どこに行けばいいんだ」
「何すればいいんだ」

私は、真夜中のタイの空港で途方にくれていた。

何も荷物を盗まれたわけでもなく、パスポートを失くしたわけでもない。
ただ沢木耕太郎に倣って、流れに身を任せる旅にしようと思って旅行本や計画を立てずに来たら困っているのだ。

出発前に、冒険がしたいので事前に情報を調べなかったのが、仇に出た。


真夜中の出逢い

夜中からホテルを探すのはリスクなので、空港で夜を過ごすことにした。途方に暮れながら入国審査の列に並んでいると、一つ前に見たことがある日本人女性がいた。

飛行機の中で、私が間違って彼女の席に座っていたので、顔を覚えていた。とにかく何か情報を知りたかったので彼女に声を掛けた。

彼女は、ミキという大学生だった。
バンコクで数日過ごした後にチェンマイの学校でボランティアに参加するそうだ。タイについての情報を聞いていくと、世界遺産の街があるというのでそこに行くことに決めた。世界史の勉強で見たことがあったアユタヤ王朝で有名なアユタヤである。

どこかで合流しようということでメールアドレスを交換して別れた。
空港を歩きながらアユタヤまでの行き方を聞き、空港からバスで駅の近くまで行き、電車に乗り込んだ。

線路で水浴びをしている人、線路沿いに広がるスラム街、車内の売り子、、全てが初めての光景で新鮮だった。

世界遺産の街 アユタヤ

アユタヤに着き、今夜の宿を探すことにした。
HOTELの看板を見つけては値段を聞いてを繰り返し、その中でも安いところを見つけたのでそこに泊まることにした。

部屋は、簡易ベットだけで廊下に共同風呂とトイレがある。
ホテル探しで歩き回っていたので汗だくだったので、風呂に入ることにした。お湯の蛇口をいくらひねっても水しか出ないので、水シャワーにした。

風呂を出てから宿のスタッフに聞くと、夏シーズンはお湯は使えないとのことだった。お湯を沸かすのにもお金がかかるし、夏なんだから水の方が気持ち良くてサッパリするだろと言って、手短に話を終え、彼は作業に戻っていった。

街中を散策した後、早めに寝ようと思いベットに入っていると、いつの間にかに1階がバー営業になっていて、生バンドやダンスミュージックが爆音で流れている。このゲストハウスは木造なので音はもちろんのこと、部屋の床の隙間から下の光まで漏れてきている。

宿泊費に300円しか払っていないのに、求めてしまうのはいささか身の丈に合っていない。全世界共通で、いいサービスが受けたければ、相応のお金を払うべきである。

日本では、安価なチェーン店やファミレスに行って、サービスに文句ばかり言う人もいる。チップ制度もないのに、みんな怖いくらい愛想良くサービスしていて驚く。それが作られた笑顔だと考えると悲しくなってくる。足を知れば、もっと感謝して生きられるのに求めすぎている。

日本のあちこちでおもてなしという言葉が使われていたが、そんなものは声を大にしていうもんじゃなくて、来客に対して自分の内なる気持ちからするものでカタチだけしても相手に伝わらないと思う。心がこもってなければ、意味がないし不気味だ。

翌日、アユタヤにある寺院を見て回った。いくつも寺院を見ていると流石に有り難みがなくなってくる。つまらない。そういえば空港で会ったミキが言ってた「チェンマイ」を思い出したので、周りの人に行き方を聞いて、チェンマイを目指した。

事前に情報があるとすごく便利にスムーズに旅ができるし、面倒なことや待たされることがない。その反面、情報が多過ぎても予想外の出来事や人との出会いも減ってしまう気がする。

私が旅をするのは、知らない世界を経験して自分の視野を広げることだから人に触れ合いながら進路を決めていく方がいい。


優しい気持ち チェンマイ

チェンマイに着いて、2日ほど街を散策したりのんびりしていると、
象に乗るトレッキングツアーという看板を見つけた。

象に乗りながらジャングルを歩くなんて、日本ではできないので早速申し込み、翌朝の出発を待った。フランス人3人とアメリカ人2人と日本人1人で1泊2日のジャングル体験ツアーに出発。

トレッキングは、予想以上にハードで川や道なき道を進みながら首長族の集落に辿り着き、そこで寝泊りすることにした。夜、みんなで話している時に、アメリカ人の2人組が親子だということを知った。

息子のAndy(27歳)は、母親をアジアに連れてきてあげたかったので一緒に旅をしている。息子が母親と仲良くしている姿、母親の気持ちを考えると感慨深いものがあった。いつか自分も母親を海外に連れて行けたらなと思いながら、森の中から見える満点の星空を見ながら眠りについた。

トレッキングから宿に戻る途中、体の怠さと発熱を感じた。本格的に熱が出て、動けなくなるのが嫌だったのでベッドで休んだ。水を買いに外に出ようとすると、ゲストハウスにいたおばあちゃんが心配して薬をくれた。

弱っている時の人の優しさは、日本も海外も同じだ。
なぜか小さい頃に風邪を引いた時に母親が会社を休んで看病してくれたことを思い出す。国が違えど、容姿や言葉が違えど弱っている人に手を貸すのは万国共通だ。優しさがしみた。


翌朝、すっかり体調が戻ったので、優しさに溢れたチェンマイでの日々に別れを告げ、Andyのオススメするカンボジアに行くことにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?