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新宿のカレー屋さんで親切に触れた話

数年前の夏、帰省ついでに東京に寄り、寮のOBがやってるという新宿のカレー屋さんに行った。

このOBとは面識があるわけではなく、どれくらい年齢が離れているかもわからなかった。

店に着き、窓に面した1人席に着席。

カレーを注文した。ライスは大盛り、辛さはMAXの10番で。

私の寮では外食に行くことがあると、基本的に大盛り&辛さはMAXにする。いわゆる「攻め」を正義とする寮の文化だ。これを避けると「日和ひよってる」と言われるのである。

OBの店に来たのであれば、たとえ1人であっても日和るわけにはいかない。そんなことを考えていた。

カレーはとても美味しかった。野菜のうまみがぎっしり詰まった、今まで食べたことのないジャンルのスパイスカレーだった。

美味しいカレーに満足し、会計を済ませようと席を立った。

店長と思われる方が対応してくれた。

1000円札を出した。「ごちそうさまです。カレー美味しかったです。実は〇〇寮から来たんですよ。」挨拶をした。

え、ほんと!それは嬉しいよ!」といったようなことを仰っていた覚えがある。

少し雑談をし、「はい、お釣り」と小銭を受け取り、好意で飴もいただいた。

最寄りの新宿駅に向かう途中、また必ず来よう、寮のみんなにもおすすめしようと考えていた。

駅に着き切符を買う際、さっきのお釣りをポケットに入れたことを思い出し小銭を手に取りだした。

ん?おや?

驚いた。小銭が1000円分あったのだ。

これはやらかした。馬鹿か俺は。なんでその場でお釣りを確認しなかったんだ。「ごっつぁんです」も言ってないぞ。

寮では誰かに何かを奢ってもらったり、いただいたりした時には「ごっつぁんです」と相手にお礼を言うのがルールである。OBである店長さんに現役寮生である自分がカレーをごちそうしてもらったのに、お礼を言わないわけにはいかない。

1000円分の小銭は重かった。なんでこんなに重たいのに気づかなかったんだ。お礼を言わないと。

しかし、電車の時間があった。その日のうちに実家に帰るためには店に戻っている余裕はなかった。

迷ったが、次店に行く時にお礼を言おうと思い、心の中で「ごっつぁんです」と店に向かって言った

OBの店に現役寮生が行くのであれば、ごっつぁんされる可能性は少なからず考えられた。自分もそれを全く期待しなかったといえば噓である。ただ、会計中に寮生であることを話すのは、あまりにもごっつぁんを期待しているようで失礼だったのではないかと後悔した。会計を終えてから伝えるべきだった。

自分の行動には後悔が残ったが、OBの優しさは身に染みた。本当にありがとうございます。ごちそうさまでした。

後日、寮に帰った後にお店にお礼の手紙を書いた。自分もOBになったら後輩にこういうことができるような人になろう、そう思った。

まだ、直接お礼を言いには行けていないが、コロナ禍が落ち着いたら必ず行きたい。

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