見出し画像

【翻訳記事】報道を救いたいならアドテクノロジーをぶっこわせ

コリイ・ドクトロウの以下の記事より翻訳。

巨大テック企業は報道から盗んでいる。報道内容を盗んでいるのではない。ニュースについて語るのは窃盗ではないし、ニュース記事へのリンクを貼ったり引用するのも窃盗ではない。しかしカネを盗んでいるのであれば?それは間違いなく窃盗だ。

巨大テック企業はニュースメディアから金を盗んでいる。全広告料のうち51%は、それを仲介するテック企業により請求されているのだ。こうした企業は、広告主と出版元をつなぐ要衝に居座る仲買人である。ふたつの企業──GoogleとMeta──がこの分野を支配しており、どちらの会社も"フルスタック"──"垂直統合"のテック業界流のすました言い方だ──している。

つまり、こういうことだ。広告を出したいとき、広告主は"デマンドサイドプラットフォーム"(DSP)と契約する。同意なく収集された、潜在顧客に関わる監視データにマッチしたユーザーに向けて広告を出すチャンスを求めるためだ。

それから、DSPはアドエクスチェンジにコンタクトする。アドエクスチェンジとは、監視データに一致するユーザーの目の前に自身の広告を突きつけるために広告主が互いに競り合う市場のことだ。

アドエクスチェンジは広告を掲載する機会の流通をひっきりなしに手に入れ続ける。この流通は"サプライサイドプラットフォーム"(SSP)により作られる。SSPとは、広告が掲載される媒体の出版元の代理をするサービスだ。

Meta/FacebookとGoogleは、どちらも広告業界を"フルスタック"している。彼らが買い手と売り手の両方を代理し、市場を操縦しているのだ。広告の競りが終わると、両企業グーグブックは広告主から手数料を取り、出版元からも手数料を取る。市場の運営費用も取っていく。もちろん、GoogleとFacebookは出版元であり広告主でもある。

これは、単一の会社に取引を操縦されている株式市場のようなものだ。あらゆる株式の売り買いに仲買業者と引受業者の両方として携わり、膨大な数の上場企業株式を所有しつつ、市場における最大の企業を公然と所有しているというわけだ。

これは、買い手と売り手の両方を兼ねる不動産業者のようなものだ。自身の目的のために何百万もの家を売り買いする一方で、買い手への価格を吊り上げ、売り手への価格を切り下げる。そしてそれが行われるのは、この不動産業者本体しか理解できない不透明なオークションの中でだ。

これは、離婚訴訟における原告と被告の両方を一人の弁護士が代理し、さらに離婚裁判所の判事として働きながら、離婚しそうなカップルをTinderで成立させようとしているようなものだ。

信じられないほどの悪辣さだ。手数料やその他のくだらない費用として、ふたつの企業は全広告費の半分以上を貪っている。そうして、自分たちは広告の売り買いがとてつもなく上手いだけだとぬかすのだ。皮肉っぽく聞こえたのなら申し訳ないが、これらの企業は詐術に長けているといったほうがより正確であると私は思う。

総体としての利益相反を抱える企業がどのように行動すべきかについて諸々の法律を定め、彼らが詐欺を働かないようにすることもできたかもしれない。だが、そうした法律を執行するのは困難だっただろう──ただの詐欺行為を検知することですら難しいはずだ。よりシンプルかつ効果的なアプローチは、単純に利益相反関係を"取り除く"ことである。

電子フロンティア財団のブログで私が今週書いたのは、AMERICA法──"きびしいネット世界での競争関係に危険を及ぼす広告仲介業者に関する法律"のアクロニム──の説明だった。この法律は、エリザベス・ウォーレンからテッド・クルーズに至る超党派の協賛者と共に、マイク・リー上院議員が提案したものである。

AMERICA法は、最大のアドテクノロジー企業に対して、保有する3つのアドテクノロジー部門──売り手の代理か、買い手の代理、あるいは取引市場──のうち2つを売却するよう求めるものとなる見込みだ。しかし、3つ全てを売り払うわけではない(2つ残すわけでもない!)。これは、反トラスト法のゆるぎない原則である『構造分離』と足並みをそろえるものであり、企業はプラットフォームのオーナーとユーザーのどちらかになってもいいが、両方を兼ねてはいけないという考えである。

構造分離の全盛期には、鉄道会社が運送会社を経営することが禁止された。鉄道会社の保有する線路で貨物を運送する他の会社と競合するからだ。それと同様に、自身が金を融資している企業と競合するような会社を銀行が所有することは禁止された。要するに、法律が言いたかったのは、「ゲームの審判をしたいなら自前のチームを持ってはいけない」ということだ。

利益相反行為の一部は結果的にそうなってしまったものであり、取り締まるのは難しい。そのため、そもそも利益相反行為自体が存在すべきではないというふうに構造分離の原則は認識している。たとえば、訴訟当事者の誰かひとりでも判事と面識があれば、その判事は当該訴訟を取り扱わない──その訴訟の結果で金銭的利害があるなら間違いなく取り扱わないようにする。

アドテクノロジーの二頭政治は広告市場の膨大な部分を取り仕切っており、我々が楽しみ信頼するニュースやその他メディアの多くの運命をその手に握っている。AMERICA法の構造分離ルールの下では、巨大アドテク企業が支配するあからさまな利益相反行為は廃れていくことだろう。

AMERICA法は、より小規模なアドテク企業を取り締まるものでもある。5億ドルから20億ドルの売上高を持つ企業は『顧客の利益を最大化するよう行動する』義務を負い、その中には『広告の入札額を最適にする』ことや、『第三者による監査が容易なデザインがなされた透明性のあるシステムを維持する』ことが含まれている。仮にひとつの企業が買い手と売り手双方の仲介業を営むのであれば両者のビジネスを隔てなければならず、もし顧客の利益を支持できないような失敗を犯せば厳しいペナルティが課せられる。

AMERICA法に対する電子フロンティア財団からの支持は、巨大テック企業からのニュースメディア保護に関するシリーズで展開される、4つの提案の口火を切るものだ。先週、我々は大きな「開幕戦」記事の中でこれらの提案について紹介した。

来週は、プライバシー保護法を利用して監視型広告を廃止し、アドテク企業ではなく出版元が市場をコントロールできるように監視型広告を「文脈型広告」に置き換えてはどうかという提案を投稿する予定だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?