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雑記:アイマスとWet Legのライブ

この1週間ほど、立て続けにライブイベントに行っていたというお話。

アイマス合同ライブ@東京ドーム

先日、東京ドームへ行った。アイドルマスターのコンサートを見るためだ。友人に連れられて行ったこの公演は、フルネームを『THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023』という。Xbox Series Xを思い出すようなちょっと間の抜けた名前だが、完全マジ本気ガチだ。これはアイドルマスターの各ブランドが一同に会する初の機会であり、いわばアイマス版のスマブラである。一世一代のウルトラクロスオーバーお祭り騒ぎイベントなのだ。

開演前からコールが始まっていた

先に断っておくと、俺はアイマスにわかだ。知っている曲は往年のニコニコ動画とかで擦られていたネットミーム的なものか、アニメ化された作品の主題歌くらいだ。なんとかかんとか付け加えるとしたら、シャニマスに出てくる樋口円香(CV.土屋李央)が歌う曲だけはすべて聴いている……顔のいい女が仄暗いコンプレックスを抱えているのが好きだという、ごく個人的な性癖にしたがって。

そんなアイマスにわかが、古参ひしめき老練が跋扈する東京ドームに行ったわけだ。モータルコンバットの映画でオリキャラ主人公が大ベテランのサブゼロに勝負を挑んだような、無謀な行いだ。なので当然だが、色々とカルチャーショックを受けた。ファンが作った推しのぼりが通路を隅々まで彩っているのは見ていて飽きなかったし、軍用のチェストリグやガンベルトにペンライトを何本も装着してコマンドーみたいになっているオタクには壮絶なスゴみがあった。

選挙?

コンサートそのものはどうだったかというと、ペンライトの振り過ぎで筋肉痛になった。とても楽しかった。知らない曲が出てきても、観客みんなで絶叫して場酔いするだけで面白いというのは、やはりライブならではの楽しみだ。ここ数年というもの、生来の出不精がコロナ禍でさらに悪化していたのでいいカンフル剤になったようにも思う。

他に良かったところといえば、あるアイドルの曲を別のアイドルが歌うシャッフルが色々と行われているところだ。これも合同ライブならではのお楽しみだ。男性版アイマスである『side M』の人々が加わって歌うと、低音が加わって合唱の音の厚みがグッと増す。聞き慣れた曲も新鮮に感じるし、惚れ直してしまう。実際、このライブでもっとも俺の胸を高鳴らせたのは──樋口円香(CV.土屋李央)を特別枠として除けば──登場するたびにパフォーマンスの高さを見せつけた天ヶ瀬冬馬(CV.寺島拓篤)だった。

この色男は、とにかく立ち居振る舞いが堂々としていて気持ちがいい。その昔、アニメかなにかで出てきたときの天ヶ瀬はいかにも当て馬っぽいうらなり野郎だった気がするけれど、今となっては偶像IDOL我が物にマスターした大人物だ。

東京ドーム公演……にわかオタクの俺は、アイマスブランドの強靭さを思い知らされてしまったのだった。

Wet Legジャパンツアー@O-EAST

2021年にデビューしたと思ったら、たった一枚のデビューアルバムだけであれよあれよというまにグラミー賞とブリット・アワードの2冠を達成してしまったWet Leg。この怪物バンドのジャパンツアーが渋谷のO-Eastで行われた。このハコは昔はTSUTAYA O-EASTという名前だったのが、今はSpotify O-EASTになっていて栄枯盛衰を感じてしまう。

開場は18時。去年の予約開始初日にチケットを取ったので、整理番号はかなり前の方。最前列に立つこともできたけれど、ド平日の晩からもみくちゃにされてヘトヘトになるのも嫌だったので、真ん中あたりの手すりにもたれかかってゆったり見ることにした。

2階席も含めて1300人というキャパは見事にソールドアウトしており、開場から30分も経つ頃には熱気が静かに広がっていた。観客の年齢層は思っていたより幅広くて、Wet Legというバンドの底力の強さを感じられる。

……メインアクトはとても濃密だった。さっき書いたとおりWet Legはまだ1枚しかアルバムを出していないので、収録曲をほぼ全部演って合間に軽いMCを入れても、40分そこそこで終わってしまう。アイマスライブの3時間を考えたら拍子抜けするくらい短いけれど、それでも満足度は十分すぎるくらい高かった。洋楽のライブにしては珍しく、コール&レスポンスもバッチリだ。

レコーディング音源で聴くWet Legは、歌詞のブラックさに対して穏やかな曲調で、正統派かつメランコリーな感じだ。だが、ライブになるとかなり印象が変わる。激しさがずっと増していた。曲自体に派手なアレンジをしているわけではないのだが、演奏がとにかくパワフルなのだ。ギターもベースもゴリゴリに歪んで大音量だし、ドラムがしっかりやかましい。モッシュというほどではないけれど、大勢の観客が飛び跳ねて声を出していた。

そんな轟きの中にあっても、リアン・ティーズデイルの声はかき消されることなく、スッと鼓膜を通って脳髄を甘く痺れさせてくる。実際、彼女が歌い出すだけで空気が一変して、目を離せなくなってしまう。この声には抗いがたい魔性を感じる。

ボーカルのリアンとリードギターのヘスターのどちらも、終始自然体でなごやかにパフォーマンスしていたのが印象的だった。媚びもへつらいもなく、気取らず、とにかく楽しそうだった。これは、物怖じしないロックスターというような前時代的でマッチョな自己アピールではない。等身大の垢抜けなさと、この灰色の世界に対するシニカルな諦観、それでもやりたいようにやるという毅然とした脱力感。それらがないまぜになった、したたかなアティチュードだ。

ヘスターは相当シャイな人らしく、MCになると蚊の鳴くような小声でポツポツと喋る。そういうスタンスでステージに立ってくれること自体にある種の矜持を感じて、俺はこのバンドがより一層好きになった。

もうなにもかもおかしくなってる
また気が変わっちゃった
これが曲かどうかもよく分からないし
自分が何言ってるかもよく分からない
なにもかもおかしくなってる
また気が変わっちゃった
こんな人生を送りたかったとも思えない
マッチングアプリに不細工だなんて言われたくないし
私の体型も飼ってるネズミの毛のこともどうでもいい
ラジオなんていらないし、MTVもBBCも必要ない
私が欲しいのは、気分を上げてくれる泡風呂だけ

Wet Leg - Too Late Now

これから、Wet Legは時代を象徴するようなすごいバンドになっていくかもしれない。こんな近くでライブを見られたことが奇跡に思えるほどの大物に。願わくば、彼女らがこのしなやかな在り方のままいられますように。

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