見出し画像

【映画随筆#2.3】空白

今回は、𠮷田恵輔監督の ”空白”を鑑賞し、感じたことを記事にしていきます。(注)本稿はネタバレを含みます。

作品名:空白
公開日:2021年9月23日(日本)
出演:古田新太、松坂桃李等

まだ見てない方はぜひ第一部、第二部の随筆の方もよろしくお願いします。

この第3部は、やや重めの空気が漂う中で、唯一くすっときてしまった部分を紹介します。それは、本作のメインテーマとなった事故が世間的にやや収まりかけの頃に、その当スーパーで万引きを働いた少女が、世話好きなおばさんに見つかって連れていかれるシーンです。
結論から言うと、女の子天才かよ、という感想でした。万引きが原因であんなに炎上して客足が遠のいたというそのスーパーで、もっかい事件を手繰り寄せるぐらいの覚悟で、リップを盗むという状況が面白いと感じてしまいました。とはいえ、年頃の彼女らにとっては、盗んだリップはただの化粧品ごときではなく、それは、承認のトリガーであったり、仲間のしるしであったり、抑圧への訴えであったりするわけです。なので、決して私は万引きというその行為を否定することはできません。勿論肯定するわけではないですが、そんなことのために人生やキャリアを棒に振るな、といった意見は出来そうにはないのです。彼女らにとってはそれが世界そのものを渡り歩くための武器になったりするのですから。

脱線をしてしまいましたが、今回紹介したいのは、どちらかというと笑い話の方がメインなのです。それについてきちんと書いていこうと思います。冒頭で触れたスーパーで又万引きをした少女を見て、私は数年前の友人の言葉をふと思い出しました。それはあの某車修理会社の実情が世間的に明るみに出て、その会社のイメージがダダ下がりしている時期のことでした。たまたま某車修理会社の店舗の近くを通りかかり、駐車場もガラガラで、店内も空いている状況をみて、それは今ここ来る人いないよなーなどと私は思っており、その事をからかいながら話していたのですが、その友人は、むしろ今こそ行けば自分の車に少しの傷もあってはならないし、こっち側の強気の交渉にも応じざるを得ないんじゃない、と言い出したのです。私はそれを聞いて刺さりに刺さってひどく笑った記憶があります。確かに、一般的な考え方は、信用ない会社に預けるわけがないと感じますし、私も例外なくそう思う側でしたが、その友人は、今やらかすわけにはいかないという向こう側の内部の心情を察して、いつも以上に入念に修理してくれるはずという納得のいく、かつ、思ったこともない意見を提示してきて、自分の中でプチ革命が起きた気分でした。頭いいなこの人は、と感じた瞬間でもありますが、その感動を、あの少女にも私は感じたわけです。いままた万引き犯として女子中学生を追っかけようもんなら、事故のいざこざが収まりかけていたところにまた火を注ぐことになるし、店長の立場としても、また女子生徒が交通事故にでも遭おうものなら、いよいよスーパーに非難轟々では済まされない状況がやってくるでしょう。それをすべて見越して、今が一番万引きで追っかけられないという計算のもとで万引きを行ったように感じられて面白かったという話です。すぐ世話好きおばさんにつかまってたのも、芸術点高いですが。

以上、空白という映画にまつわる随筆でした。結構時間かかりましたが、その分、考えさせられる映画であったことは間違いないと思います。またこれからも、記述を続けるので、こうご期待を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?