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家族外家族


今回は、私たちの人生を創る最も重要な基盤と思われていた「家族」における、昨今の事情について考えてみたいと思います。

戦前、三世代家族が普通だった時代から、核家族化が進み、一世帯当たりの人口が激減し、逆に世帯数が激増するという現象がおきました。

それまで重視されていた、イエ、家系、家族の概念は、最近の多様性重視の観点から、様変わりしつつあります。

「いざというときは家族しか頼れない」と、最近まで思われてきましたが、その神話は必ずしも信じられるものとは言い切れない昨今です。

特に高齢者の介護を、子供として「責任をもってやりたい。またはそうすることが義務であると考える」という人がどれほどいるでしょうか?

その背景には、核家族化が進み、家族のそれぞれが親から離れ、それぞれが独立した家庭を持つようになったことで、「親は田舎、子は都会暮らし」が一般化されました。

やがて親が倒れたときに田舎に帰るか、都会に呼び寄せるか、という状況が訪れたとき、親は住み慣れた場所から離れるのを拒み、子はそれなりに苦労を重ね都会での仕事を基盤にした安定生活を築いている中、それを捨てることができず、行政の支援の下で、高齢者は一人暮らしから介護施設への道をたどる、というのが一般的な終わり方になってきました。

そんななか、イエ、家系、血縁といった、戦前から人々の生活(精神)の大前提に流れていた思念である、イエを根幹とする伝統的習慣「家墓」は、日本人の日本人としての先祖祭祀心という誇りにも似た生きる証でもあったのです。

ところが、核家族化とともに、墓の維持への経済的負担、墓参への時間的経済的負担、先祖祭祀の価値観の低下など「お荷物化」が進み、徐々に解体されようとしています。

それが「墓じまい」の増加現象です。

「墓じまい」が進む根底には、イエの象徴「○○家の墓」という先祖代々の継承意識の低下も背景にあるようです。

その前提にあるのは「家父長制」という、男性上位の風習の弱体化現象です。また、「墓じまい」への背中をを押した、晩婚、未婚、非婚、産まない、若者達の一人人生謳歌という、人生観の大きな変化でした。

墓じまい・改葬の件数は、2004年度が6万8千件程度であったことに対し、2022年度では、15万1千件と倍以上に増えております。

(厚生労働省発表)

 近年では、宗教的関心を持たれる方が減少していると共に、お墓の承継者がいない方、お墓を維持する為の費用や子供への負担を考えた方等が、墓じまいを行った結果と考えられます。この様な傾向は、今後も増々していくものと思われます。
 特に、寺院に墓地を所有されている方のお墓じまいが多くなっており、そこには寄付・お布施等の費用面の負担が関連しているのではないでしょうか。
それまでイエや家系を管理し支えてきた「寺」の役割は、急激に薄れ、コロナ禍がトリガーとなって、コンビニよりも多いといわれていたお寺が次々と廃寺となり、2020年までの5年間で半減、2040年には3分の1になろうという現状です。

コロナ禍で2040年には3分の1のお寺が消滅 生き残りをかけた住職たち新たな挑戦の中身 | ブルームバーグ | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

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