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親が認知症かもと思って病院受診する前に確認してほしいこと

はじめに 


親がものわすれかもと思って病院受診をすすめようか迷うこともあると思います。嫌がる親を折角病院に連れて行ってもなにを外来で聞かれるのか、どんな検査をするのかなど非常に不安が多いのではと思います。
患者さんとご家族を前にいろいろうかがうのですが、あらかじめ知っておいてもらえたら外来がスムーズにいくのになと、いつも思っていました。

診察前に以下を理解しておいてもらえると診察がスムーズにいくのではと思って記載します。一旦思いつくことを記載します。また場合によっては聞かれない可能性もあります。
いわゆる神経変性疾患関連の認知症の診断の際に質問したり検査したりする内容です。どの質問も大事な意味があり、これから物忘れを調べてほしいと思って脳神経内科の外来に親を受診をさせようと思っている方がおられたら、参考にしてもらえたらと思って記載します。
もちろん個人的な外来の内容であり、またすべて細かくは記載できないので本当にごく一部になります。外来受診前の参考になれば幸いです。


診察室で本人とご家族に質問したいこと



まず、物忘れについてが一番大事です。発症したのは、何年前からか、突然発症したか、徐々に物忘れがでてきたかは大事です。「コロナをきっかけに家でじっといるようになって物忘れがでてきましたね」というエピソードはよく聞く内容です。また物忘れがでる数か月前に転倒、頭部打撲の有無をチェックしてください。
物忘れのエピソードについては、まずは本人の物忘れの自覚の有無が大事です。また、普段の予約外来を患者さんに何度も説明する必要があるなど直近で話していた内容をすっかり忘れていることが多い、さらに忘れたことを指摘しても忘れているかや、忘れたことを指摘すれば思い出すかなど、忘れ方が大事になってきます。
会話している最中にぼーっとして歩き回る、ぼーっとして呼びかけても目線があわず反応があいまいなときとはっきりしているときがあるなど、物忘れというよりかは受け答えがあいまいなときがあるということも大事なポイントになります。
また、たいしたことではないのに急に怒り出したり、興奮したりなど明らかに以前と比べて性格が変わってきていないかも気にしていただくとよいと思います。

実は、上記のことは、患者さん本人ではなくご家族にうかがう必要があることが多く、特に患者さんが一人暮らしだと誰も物忘れの具体的な状況を把握していないまま外来に連れてこられることがあり、外来でさてどうしようかと悩むことがあります。

物忘れ以外の症状について


物忘れに加えて幻覚が出ていることがあります。
幻覚は、特に夜になるとみえるといわれる方が多いです。幻覚の特徴としてぼんやりとではなく、ありありとはっきりみえる幻覚が多いです。具体的にははっきりとした動物であったり、なくなった人がみえているという話を患者さんがしていることがあります。その場合、患者さんは、自分が見えているものが現実ではなく幻覚だと理解していることが多いです。
夜に天井を懐中電灯でてらして幻覚をさがしている、もしくはだれもいないのにだれかが入ってきたといって勝手に警察をよんだことがあるなど、幻覚が進むと患者さんが幻覚を信じ込んでしまうことがあります。
また細かいことではありますが、幻覚から声が聞こえるかどうか(すなわち幻聴なのか幻視なのかということですが)など具体的な幻覚の内容が分かるとよいと思います。
レム睡眠行動異常症というものがあります。夜中患者さんが寝ているときに、布団の中であばれていたり、寝室から大声で話し声が聞こえてくると、レム睡眠行動異常症の可能性があります。よく「寝室は別なので」や「一人暮らしなので」ということでわからないというご家族が多いのですが、わかる範囲で調べておいてもらえると助かります。
嗅覚異常の自覚があるかについては、患者さん自身が気が付いている場合と、尿や便の失敗があってもそのにおいに患者さんが気が付かずに生活していて家族が変だと思っていてわかることがあります。
また、頑固な便秘や立ち眩みの自覚が以前からあるかも大事です。
こういった認知症以外の症状についても認知症を診断する上では重要になりますので、可能な範囲でチェックしておいてもらえると診察がスムーズにいくと思います。

日常生活の状況、自立度


一人暮らしなのか、その場合家族が近くで暮らしているかなどサポート体制があるかどうかは長い目でみて大事です。また介護保険に入っているかも今後の患者さんのサポート体制を築く上で大事になります。介護度やデイサービスなどのサービスの内容の確認もチェックしておいてもらえるとよいと思います。
お薬を一人で内服できているか、飲み忘れや間違いがある場合は、机の上に置いておくと内服できるのか、または家族がそばにいて促す必要があるのかも確認しておいてもらえると助かります。
部屋の状況については、冷蔵庫の中に同じものがはいっていないか、もともと几帳面であったが最近部屋がちらかってきていないか、具体的には全然関係ない場所で物がみつかるなど生活状況の変化の確認も必要です。
日常生活においてどの程度一人でできるか、具体的には一人でトイレにいけるか、お風呂にはいれるか、買い物にいけるか、財布で支払いができるか、財布の中が小銭でパンパンになっていないかなど生活状況の程度の確認もしておいていただけるとよいと思います。

検査する前にあらかじめ調べておいてほしいこと


当日にすべて検査ができるわけではなく、上記の問診後、検査予約をいれる形が多いと思います。
採血、心理検査、MRIと脳波を当院ではしています(検査についての内容はここでは省きます)。また脳血流SPECT検査もする場合もあります。
特にMRI撮影可能か、具体的には以前の手術で体に金属が入っていてMRIはだめといわれていないかなど治療歴の確認や、閉所恐怖症で以前MRIの撮影が困難であったなどを確認しておいてもらえるとよいと思います。ペースメーカーをいれている方はペースメーカー手帳とカードの持参が必要です。また最近は持続型の血糖の測定機器などもMRI撮影すると張り直しが必要になることがありますので注意が必要です。

検査にはご家族が付き添い通院が必要な場合があります。付き添いが必要な場合、いつならこれるかなど受診可能時間帯、曜日を事前に確認しておいてもらえるとよいと思います。
可能なら初めて受診する曜日の先生の予約外の診察日と予約外来の曜日をHPでチェックし、通院可能な曜日に行くのがよいかもしれません。

最後に


ひとまず、受診前の事前確認事項を思いつくままに記載しました
紹介状をかかりつけのクリニックで作成してもらい、大きな地域の総合病院の脳神経内科の外来に予約をとってもらい受診をするとよいと思います。スムーズな病院受診の仕方などもいづれ記載できればと思っています
認知症で病院受診を検討しているご家族の皆さんの参考になれば嬉しいです。また認知症かもと思ったときに上記のエピソードにあてはまることが多いと受診をするきっかけにもなるかなと思います。

十分な推敲ができていないところもあり恐縮ではありますが、読んでいただきありがとうございました

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