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データ分析プロジェクトを進める上で役立つ知識

データ分析プロジェクトで成果を生み出すためには、基本となる分析技術の習得だけでなく、経営層の理解データ基盤や分析結果を活用するユーザー部門の壁など、多くの壁を乗り越える必要があります。その際にも、決してブレない軸を作るために、このページでは、参考になる書籍及び文献をご紹介しています。


企業価値の源泉となる問題発見

 受験勉強で身に付けることのできる問題を解く能力が、ビジネスで中々いかされないことが多いですね。もちろん、答えのない問題が多いのもその理由の一つですが、問題解決能力よりも上位の、問題発見力にこそ最も事業価値があるからではないでしょうか。

・高丘 浩三(2022) 『問題発見の教科書』アサヒ新聞出版.
    問題解決による従来のリノベーションから、問題発見に基づくイノベーシ
 ョンへの意識改革。 顧客が気づいていない、あるいは諦めている問題に
 光をあて、事業革新を生み出すシナリオをイノベータ自らが解説していま
 す。

利害関係者の合意に基づく問題解決のデザイン

 企業のDX推進プロジェクトでは、部門毎のデジタルツールの導入のレベルを超えて、顧客の動向に対して組織として迅速な意思決定を行うための仕組みの構築が求められます。その仕組みを設計するためには、ステークフォルダが集まり、どのように問題解決のプロセスを設計するかをゼロベースで決定していく必要があるでしょう。

・安斎・塩瀬 (2020) 『問いのデザイン~創造的対話のファシリテーション』
   学芸出版社.
・河本 薫 (2013) 『会社を変える分析の力』  講談社現代新書.
 組織として客観的な データに基づく意思決定の文化を根付かせるため
 に、4つの困難だが乗り越えるべき壁が存在している。筆者は海外留学を
 経てデータに基づく政策決定を学び、当時所属先の大阪ガスにて意思決定
 のためのデータ活用を推進する組織を立ち上げ、如何にして上記の壁を克
 服したかを詳細に解説している。
・ 須藤憲司 (2021). 『総務部DX課 岬ましろ』, 日本経済新聞出版
 DXの裏側には必ず顧客体験の変革(UX)とそれに伴う収益構造が存在してい  
 ることを、プロジェクトの推進から分かりやすいストーリーで展開してい
 ます。B2Cだけでなく、B2Bのビジネスの観点でも参考になります。

問題解決ツールとしてのデータ活用

 何を問題とするかは、最終的な成果に大きく影響します。ただし、大きな問題であればあるほど、結果にたどり着けないリスクがあります。限られた時間と予算の中で、やってみないと分からない問題(=成果がないリスクがある)ではなく、取り組むこと自体に価値がある問題、真偽の白黒をつけることに価値のある問題に取り組みたいものです。

・安宅 和人 (2010)  『イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本
   質』 英治出版.
・齋藤嘉則(2010)『問題解決プロフェッショナル―思考と技術』ダイヤモン
   ド社.
・柏木 吉基 (2019) 『問題解決ができる!武器としてのデータ活用術』 翔
    泳社
・柏木 吉基 (2023) 『結局、仮説で決まる。』 日本実業出版社.
     データドリブンか、仮説ドリブンかはよく議論が起きる話題ですね。コス
 トの掛かるデータから価値を引き出すために、ロジカルシンキング(論理
 的思考)とクリティカルシンキング(批判的思考)を組み合わせ
、課題解
 決につながる仮説、すなわち『課題発生の原因のシナリオ』の既存のフレ
 ームを超えるためのノウハウが凝縮されています。

データ分析プロジェクトのプロセスと課題

 データ分析はその結果を 現場で使われてなんぼの世界です。プロセスを理解し、経験値をそれぞれの箱に積み上げることは、新しいプロジェクトにおいても、応用可能なノウハウとして活きることが多いです。

・河本 薫 (2022) 『データ分析・AIを実務に活かす データドリブン思考』 
   ダイヤモンド社.
 データ活用というときに、データ基盤や機械学習モデルなどの分析手法に
 焦点が集まりやすいですが、成果に直結するクリティカルパスとなる意思
 決定プロセスの設計
に力点を置いた解説書。
・田村 初 (2021) 『企業におけるデータサイエンス実装のポイント』特集 
   ビジネスを変えるデータサイエンス 知的資産創造 2021年9月号
・エリアフ・ゴールドラット (2002) 『チェンジ・ザ・ルール!』なぜ、出 
 せるはずの利益が出ないのか ダイヤモンド社.
    組織的な問題=経営課題の解決には、部門の壁を如何にデータで乗り越え
 、既存のルールを変えるリスクに立ち向かう覚悟が大きなテーマとなりま
 す。

実験デザイン

 そもそも、企業の業務システムのデータは、現場の課題課題解決よりも業務を管理する側の成果評価を目的に設計されていることが多いでしょう。すなわち、データを業務の課題解決に活用するためには、問題解決に直結するデータを少ないコストで習得する必要性に直面します。その際には、どのようなスキームでデータベースを設計したら良いのかの指針が必要になるでしょう。

・渕上 美喜 他 (2006) 『Excelで学ぶ営業・企画・マーケティングのための実験計画法』 オーム社.
・森田 浩 他 (2011) 『Excelでここまでできる実験計画法』 日本規格協会.
・G.D.ラクストン 他 (2019) 『生命科学の実験デザイン』 [第4版] 名古屋大学出版会.

統計解析(線形解析)

 データサイエンスを学ぶ上で、高度な機械学習アルゴリズムの前になぜ線形解析を理解することが必要なのでしょうか?それはデータ解析を通じて問題を理解する際に、その数学的な複雑さに惑わされず、データが同じであれば同一の結論に至ることができることがその良さの一つといえるでしょう。また、機械学習の結果を理解する際にも、線形解析の結果は、問題の非線形性の重要性やその解釈を強力にサポートしてくれます。

・藤井宏行 (2005) 『エンジニアのための実践データ解析』 東京化学同人.
・星野 崇宏 (2009) 『調査観察データの統計科学―因果推論・選択バイアス・データ融合』岩波書店.
・今里健一郎 他 (2015) 『Excelでここまでできる統計解析』 日本規格協会.

機械学習(非線形解析)

 AIのベースとなる機械学習のアルゴリズムも日々提案が進んでいますが、ノーフリーランチ定理[注][としても知られているとおり、万能なアルゴリズムは存在しないこと、開発者ではないほとんどのユーザーにとって、線形解析手法の回帰分析や主成分分析の延長線上で機械学習を理解して、利用しやすいツールを使い倒すことが大事でしょう。

[注] ウィキペディア: ノーフリーランチ定理

・石井 健一郎 他 (1998) 『わかりやすいパターン認識』 オーム社.
・徳高 平蔵 他監修 (2002) 『自己組織化マップ応用事例集』 海文堂出版.
・門脇 大輔 他 (2019) 『Kaggleで勝つ データ分析の技術』 技術評論社.
    競技プログラミングに限らず、データの加工やモデルの評価(クロスバリ
 デーション)等、良く使われる技術がバランスよく解説されていますの
 で、一通り目に通しておくと良いです。
・岡野原 大輔 (2023) 『大規模言語モデルは新たな知能か ChatGPTが変えた世界』 岩波書店.
     最近のチャットGPT等の大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリケーシ
 ョンの出現は、業務におけるAI活用を日常化しつつありますが、機械学習
 のアルゴリズム研究者の予想と反するような優れた性質等を、一般向けに
 平易な解説で一読をお勧めします。LLMの研究から発見された優れた学
 習戦略は、言語以外の分析モデルの訓練においても今後活用が進むことで
 しょう。

ロバストモデリング(ロバスト設計)

 いかにして入力データに含まれるノイズに対して頑健なモデルを作るかは、データサイエンティストの腕の見せ所でが、タグチメソッドの2段階設計や正則化などの解析戦略を理解し、実践で縦横無尽に使えることは大きな技術的資産となるでしょう。

・河村 敏彦 (2015) 『製品開発のための統計解析入門』 近代科学社.
・永原 正章 (2017) 『スパースモデリング- 基礎から動的システムへの応用』 オーム社.

逆問題解析(条件最適化)

 ビジネスでは予測モデルを評価して終わりになることは比較的少ないです。その多くは予測モデルに基づいて、目標値に最も近くなる入力条件を決定することが求められます。

・柏村孝義 他 (1998) 『実験計画法による非線形問題の最適化』朝倉書店.
 著者の博士論文をベースに書籍化したもので記述は一般向けではありませ
 んが、非線形問題へのタグチメソッド適用の課題とニューラルネットワ
 ークモデリングツールの活用等が議論されており、具体的な事例も豊富
 で参考になるでしょう。
・小國 健二 (2011) 『応用例で学ぶ逆問題と計測』 オーム社.
・藤澤 克樹 他 (2011) 『Excelで学ぶOR』 オーム社.
 Excelが標準で装備しているソルバーの仕様に関して、詳しく解説している
 書籍が少ないので、手元にあると便利でしょう。

システム基盤構築

 小さなデータ活用プロジェクトで成果を挙げながら、全社的な活動に繋げ
て経営レベルでの成果に繋げるためには、データ基盤の構築が必須要件となります。その際は、プロダクトを提供するベンダーに丸投げすることなく、逆に汎用的なノウハウを引き出しながら、情報システム部門との連携のもとで経営視点・業務視点の双方からの目指すべきシステムの姿を決定する必要があります。その際は、中立で信頼できるITコンサルタントに失敗を回避するためのアドバイスを求めることも有効であり、さらにその経験は近未来のご自身のキャリアパス設計にも活かされることでしょう。

・克元 亮 [編著] (2011) 『ITコンサルティングの基本』日本実業出版社.

※弊社では、データ分析プロジェクトにまつわる様々なご相談に、過去20年以上に渡るプロジェクト経験に基づき、ご支援しています。社内セミナーの企画等、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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