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Etude Op. 4 〜答えのない練習方法の模索〜

こんにちは、Neuer Klassikerです。
ちょっと間が空いてしまいましたが、最近というかここずーーーっと考えている練習方法について、現時点での考えなどをザザァーーーっとシェアしたいなと思います。

タイトルにもありますが、まず結論として言いたいのは、

「答えが分かっている練習方法はない」

ということです。いつもこれをやってるから今回もこれをやったら大丈夫、というのは通用しないということです。私の先生からも「練習方法がわかってしまっていたら終わりですよ」と言われたことがあります。同じ練習方法を活用していても曲が違うのだから壁は越えられないよ、という意味だったんだと思います。

この練習方法の模索というのが、曲を仕上げるプロセスの中でも頭を悩ませるひとつかなと思います。もちろん、答えは無いと言っても、過去の経験から得た知識を応用するのが大前提だと思いますが、その曲によって練習方法はさまざまであることをひしひしと感じます・・・。だから異なる時代や作曲家の曲を勉強することは、総合力につながるんだなとも思いますし、結果的に練習方法の種類も増えることで、答えを模索する時間の短縮にもつながるのではと思います。

今日は私自身の普段活用している練習方法の一部を、大きく4つのポイントに分けてお話ししたいと思います!


1. 通し練習の種類

リストの超絶技巧練習曲やメフィストワルツのような、ずーっと動きっぱなし、テクニック的にも難易度が非常に高いといった曲では、これでもか!というくらい通し練習をします。(もちろんリズム練習や部分練習があった上で、ではあります)

通し練習も私の中では2種類あって、これらをミックスしてる感じです。

A) ちゃんと弾く(感情も入れて、楽譜に沿って)→練習を開始する一番最初と、締めくくる最後に

その日の練習でいきなり通し練習をするのは、本番さながらの状況を作るためです。何時でもどんな状況でも、そしてどんなミスが起こったとしても通し切るのがこれ。その日何も練習してないけどいきなり通せるかどうかと言う状況は、リハなどができないコンクールの状況と類似しているので動画も撮りながら通します。またその日の状態を知るある種の健康診断的な意味も自分の中ではあります。そこから間違えたところや不安なところをきちんと部分練習をし、最後にそれらを復習するイメージで再度通します。本番1週間前くらいからはこの練習を取り入れている感じです。

B) 感情無し、ずっとmfでペダル無し、ゆっくりで通す(メトロノーム有)

これを取り入れる理由は、頭の中の整理をすること、暗譜の精度を高めること、そしてそれらをもってテクニック的にも難しい部分を、曲の流れの中で整理しながら精度を高めていくためにやっています。言ってしまえばどんなピアノでもできるので(アップライトでも電子ピアノでも)、時間や練習場所の制約を受けることが多いアマチュアピアニストにとって理想的な練習ができない場合は、これだけでも続けているとベースの強化につながると思います。さらにメトロノームも活用します。例えば4/4拍子でも16分音符のモチーフが多い場合は、1拍で4回メトロノームが鳴る設定にします。これは裏拍をきちんと流れずに弾くことへの意識や、本番で早くなりがちなところをぐっと引き留めることを体得するようなイメージです(まさに今ショパンソナタ3番の1楽章でやっています!)。これをやってないときはただ何となく弾いてることが多いのですが(最初はそれでもいいと思う)、速いパッセージや難易度の高いテクニックが多く見られる曲で取り入れると、一機に精度が上がるように思います!これも曲がある程度仕上がってきたあたりから取り入れています。状況にもよりけりですが、1日3−5回できるようにしています。(全通しでなくてもセクションごとにリピートさせることもあります!)

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2. 左手のみの暗譜

例えばソナタの緩徐楽章や、曲の中間部に出てくるようなゆっくりで音やフレーズ感を存分に味わいながら演奏するようなところでは、左手のみの練習(暗譜で)も効果的です。
これはゆっくりな曲に限った練習方法ではないと思います。例えばリストの超絶10番にあるような、左手の流れるようなパッセージで和声の変化を感じながら弾く部分では、左手だけで完全に暗譜できるような練習をしていました。これでもか、というくらい繰り返して練習をしていました。ショパンソナタ3番の中間部にも使えますし、英雄ポロネーズだって主題の部分では左手だけで覚える練習をしていました。
さらに左手だけ弾きながら右手は歌うというのもよくやります。頭の中を二つに分ける感覚ですね。
主旋律はすぐ頭に入ってきやすいですが、左手は曲の根幹を支える大切なベースとなるけれど、暗譜が飛ぶことが多い。左手だけできちんと暗譜できていたら自信にもつながると思います。
この練習は譜読みが終ってある程度全体が通せるくらいになったら取り入れてる感じです。

3. 自分の音を聴く練習

これはなかなか難しいし自分の中でも模索し続けていますが、現時点で大きく2つあるかなと思います。

A) 自分の演奏を録音し、後で楽譜を見ながら録音を聴く

楽譜を見ながら、というのがポイントですね。録音する場所は問わずですが、自分の演奏を聴きながら楽譜を見ると、あれ何でこんなふうに弾いてるの?これ忘れてる!のような発見、気づきがほんとたくさんあります・・・(本番も近い時に発見してしまうと冷や汗ではあるのですが・・・w)ただただ録音を聴くだけでも発見はあると思いますが、楽譜を見ることによってより客観的な視点で自分の演奏が聴けるのと、自分の記憶を正していくことにもつながるので、復習時間が一石二鳥!と勝手に思っています。私の場合は結構覚えることが早い方ではあるのですが、その分楽譜を見ない時間が長くなってしまい、ついつい見落としまう箇所などが出て来るので、やはり覚えても楽譜に立ち戻ることは重要だなと気付かされます。

B) ホールやサロンでの練習頻度を増やす

これは自分のスケジュールやお財布との相談にはなりますが、ピティナステップの良いホールで実施しているところへの参加(首都圏がやはり多いです)を定期的に取り入れる、弾き合い会などの参加、ピアノスタジオノアのような練習スタジオでもサロンがあるところがあるので(吉祥寺、田園調布)比較的安価で少し響きもあるようなサロンを予約して、更に自分の音に耳を傾ける時間を作ります。自分でサロンを予約する場合は本番が間近の時がほとんどです(そんなに頻度高くやっていたら破産してしまう・・・!)。特にこの時間では、ペダリングの感じや、本番イメージの作り込み、フレーズの伸びだったり(そういう曲の場合)を確認していることが多いです。あとは友人などに来てもらって聴いてもらうこともたまにやります。

※おススメサロンやホールの紹介は是非インスタグラムをご覧ください!
アカウント名 @neuer_klassiker
https://instagram.com/neuer_klassiker?igshid=YmMyMTA2M2Y=

Neuer Klassiker

4. 弾かないと言う練習

A) 頭の中で弾く
私の中での一つの基準ですが、「頭の中でピアノを弾く=どの音を抑えているかわかるくらい具体的に」これができればかなり暗譜の精度が高まっていると実感します。頭の中で弾くのは電車の移動中にもできるし本番直前にもできるし、散歩しながらでもできます。頭の中で間違えたりこの音なんだっけ、となってしまうことは、実際の演奏でもそうなりますし、暗譜の精度がまだ高くないとも言えます。

「想像できることは、必ず実現できる」

大学時代の友人が言っていた言葉を今でも覚えています。その想像はただのイメージではなく、しっかり具体化されたものでなければいけないと思います。本番前日に寝る前に弾く曲を頭の中でも通します。ある意味おまじないみたいなことでもありますが・・・笑

B) 写譜
これは本当に最後の最後にやる、ピンチの時にやる、みたいな感じですが、やはり手と脳はつながってると感じさせられる瞬間。最近はほんとスマホやPCですべてを完結させているので、自分で書いて覚える、ということをなかなかしていません。なので最後の一押し、みたいな感じでやることが多いです。時間が無い時は不安なところのみ部分的に写譜、余裕があれば全曲写譜・・・(これはなかなか骨折れ作業ですwww)
以前本番直前に友人の結婚式のため数日間海外にいて全く練習ができなかった時、帰りの飛行機で写譜してましたw それまでも本当に曲が間に合っていないと言う状態だったのでやれることがこれくらいだったと言う感じです。なんとなくではありますが、写譜をした次の日にめちゃめちゃ記憶力がアップしているかというと、そういうことでもなく、数日から1週間空けてなんか身になってるな、と言うイメージです。

実際に帰りの飛行機の中での写譜をした写真
聴音を思い出します。


長々と書きましたがいかがでしたでしょうか?他にも書ききれないほどの練習方法がありますが、みなさんはどんな練習方法を取り入れていますか?いかんせん正解がない!というのが悩ませられるポイントなのですが、それを発掘していくこともどこか楽しんでる自分がいます。同じ練習をして効果が出ないなら他の練習方法をトライする創意工夫も個人的には好きかな。
でもこれだけやっても本番で絶対にうまくいく、なんて事はないのです。でも、これだけやったから大丈夫!と、自分に自信をつけることはできます。その自信の有無によって精神状態もパフォーマンスも変わってくると思います。
しかし、場数と経験が必要なことには変わらない。様々なヒントや知識を得るためにも、やはりいろんな曲にトライして経験を積み重ねることが一番ですね!

筆者情報:
井上朋子(いのうえ ともこ)
外資系企業にてマーケティングに従事。3歳からピアノを習うも、高校・大学でのアメリカ留学を機に本格的なレッスンはストップ。その後、2019年よりピアノを再開。


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