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色っぽく、詣で

その日は1月3日。9時起床。あっという間に新年も3日目に入ったらしい。昨年末に取ったはずの疲れがまた全身に付着している。眠い。重い。でも今日は予定があるから立ち上がらないと。Aさんとの初詣だ。行かないでと言われても行かせてもらいますね、小池さん。

今年は川崎大師に行くことになった。普段は帰省時に京都で行くことが多いので関東での初詣は初めてだ。何やら厄除けで有名とのこと。この際、疲れも一緒にお願いしよう。久し振りにご朱印帳を取り出す。待ち合わせまでまだ時間はあるが、早めに支度を始める。

朝の支度にはゆっくりと時間をかけるタイプだ。面倒なタイプの男だと自覚しているが、もうどうにもならない。この年になると、朝の習慣を変えることは不可能に近い。誰だってそうだろう。

お正月休みのため髭は剃らない。なのでまずは洗顔から。頂き物のLAB SERIES。顔を洗いながらその勢いで髪の毛を全て水に浸す。寝癖はこれで一掃。次はコンタクト。いけないと分かっていながら、2週間用のコンタクトレンズを数ヶ月使用してしまうのだが皆さんはどうだろうか。視界が広がったところで、Santa Maria Novellaの化粧水をピシャピシャ。芳香な香りととろりとした黄色目の液体がとても気に入っている。借り物のIPSAの美容液。顔にも腕にも髪にもぺたぺたと。何だか顔にも腕にも髪にもよい気がする。最後に無印良品の乳液。これでひとまず顔は仕上がった。

濡れた髪をタオルドライした後は、ハツモールの育毛剤を。そろそろ抜け毛が気になる年頃だ。これは最近使い始めたところなので効果は未知数。説明書によると、効果は使用後4ヶ月頃から徐々に現れるということだが、もう既になくなりそうだ。検証のためには、もう1本買うしかない。実によくできている。それにしてもメッセージ性の強いブランド名だ。

コーヒーとタバコを喫みながら、日本経済新聞を読む。何やら緊急事態宣言が出るとのこと。もはやため息が見える程だ。ただ、不満ばかり言っても仕方がない。速やかに意思のある発信を期待する。

電車で向かう。川崎大師までは小一時間ということで、読書。今読み進めているのは、日本が誇る大数学者、岡潔の『春宵十話』。冒頭の

「人の中心は情緒である。」

という出だしで、心を掴まれる。これは数学の本ではない。人が生活を営む上で大切にしたい心構えと覚悟の話だ。

川崎大師に着いた。川崎に詳しいAさんに従い、大本堂へと向かう。参拝客はけっこういたが、例年とは比較にならないぐらい少ないとのこと。そのため、あっさりと参拝は完了し、ランチタイムに。ビールに焼きそばともつ煮で乾杯。奥地の安らぎの広場でネーミング通り安らぐ。限られた数のベンチの奪い合いは、都会で培った我らのフットワークを見せつけ、大差で勝利した。

せっかくなので久しぶりに持参したご朱印をお願いする。しかし、コロナ禍により、残念ながら個人のご朱印帳を預かって頂くとこはできず、事前に用意されていた紙を受け取る。つまり、持ってきた意味はない。仕方がないとはいえ、余りにもプロセスに味気がない。だが、こればっかりは誰も悪くはない。頂いた紙は帰ってから糊で貼ればいいのだ。

「近くにもう一件、寄りたい神社があるの。」またしてもAさんに従い、歩き始める。徒歩数分で着いた先は、やや小さめの神社。名は、金山神社という。わざわざ何でここに?と思いつつ中を進むと、参拝前に気になるモニュメントを発見した。隣ではAさんが少しニヤついている。何だろうかと、近づいてよく見ると、それは紛れもなく男性器だった。男性器に見えるとかではない。正しく、大人の男性器だった。

戸惑いながら調べてみると、これは実際に性神としても信仰されているようで、子孫繁栄・夫婦和合・性病快癒・安産・下半身の傷病治癒などに霊験があるとされているらしい。知らなかったのはぼくが不勉強なだけで、どうやらかなり有名のようだ。参拝客は少ないものの、ぼくらの前後には、20代のカップルも、60代女性の3人組も、30代の子連れ夫婦もおり、皆さんはにかみながらも笑顔で男性器と記念撮影をしていた。

素晴らしい。神社にも多様性があっていい。ぼくは、川崎大師以上に、深く、長く、祈祷した。

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