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【脱東京をはばむ迷信】近所づきあいが地獄

テレビでも雑誌でも「東京を出ると襲いかかってくる脅威」の筆頭として挙げるのが、この迷信というか「田舎移住のこわい話」ですね。
「東京都民はドライで個人主義だから面倒な近所づきあいとかはないけど、東京外だと四六時中ベタベタした隣人関係を強要されて、付き合いが悪いと村八分にされる」というホラーチックな都市伝説。

……は? 八つ墓村とかの話ですか?

雑誌の「東京脱出はデンジャラス特集」で以前に読んだのは「どこの家でも施錠なんかせず、『畑で獲れた野菜のお裾分けを家の中に黙って置いてく』のが『当たり前のご近所付き合い』で、その風習を知らない転入者がフツーに鍵をかけて外出していると『アンタ、なんでそんな変なことするのさ!?』と責められる」という記事。

……え? 星真一のショートショートかなんか?

そんなノンプライバシー村(さすがに「町」だとありえないでしょう)が「絶対に存在しない」とは言いきれませんが、現代日本において「見つけるのは至難の業」であることは間違いないでしょう。
また、そんな地域には一般の移住者は訪れないし、たとえ来たとしたって居つく道理がないから、令和日本人口減少化の波の中でこのような村は遠からず消えていくと思います。

まばらな花

「移住者がなかなか来ない土地」よりもヤバイのは「移住者は来るんだけど定住しない土地」なんですよ。
前者だと「単に知名度がないだけ」かもしれないからまだいいんですが、後者は「土地に魅力がないことを世間にバレてしまった」わけですから。

転入者は「場所に期待して来た」わけですが、転出者のほうは「場所に幻滅した(期待を裏切られたと感じた)から出て行く」わけで、捨てた土地のことを新しく入った土地でディスりますよ~!?
積極的な悪口は言わないような人でも、たとえば酒が入って心の鍵が外れてしまったような時にはポロッと本音がこぼれることだってある。
「いや~あそこはマジでひどいトコでね、あんなトコ絶対に住むモンじゃないですよ~」とかね。

だから「近年、転入者が増えている自治体」「やったぁ~! これで未来は安泰だぁ~!」とノンキに浮かれるんじゃなくて、「せっかく来てくれた人に愛想尽かされ出て行かれないよう、より暮らしやすい場所にするぞ!」フンドシを締め直す必要があるんです。
先人からの「好事魔多し」という忠告の意味を噛みしめましょう。

残り桜

話を「東京外は本当に『近所づきあい地獄エリア』か?」に戻しましょう。

そもそもの話ですが「東京に近所づきあいはない」というのは間違いです。
それはたぶん「賃貸マンション」か「アパート」限定の話で、たとえばマンションでも「分譲」だと「管理組合活動」などが生じてきます。

分譲マンションは「所有者の共有財産」なので、資産価値が低下しないよう「住民の自治管理組合」を発足させて「建物の保守管理」を随時行いつづける必要があるんです。
つまり「資産性の高いちゃんとしたマンション」ほど「住民の横のつながり」強固に存在しているわけですね。
自治体制を構築していないと「管理業者のいいカモにされる」恐れがあるし、組合が機能してないと「管理が全然できてなくて建物が傷み放題」になってスラム化する可能性も大ですので。

また、東京であっても「戸建住居」だと「町内会のつきあい」があります。
マンションやアパートの住人だと町内会に組み込まれないのですが、戸建の場合は回覧板とか各種当番(輪番の町内会長など)などがまわってきます。
東京時代の私はJR新宿駅から徒歩10分の超都心地区に住んでましたが、そんな地域でも町内会に入ってる人たちは廃品回収とかしてましたし、祭りの際には法被着てお神輿(みこし)担いで練り歩いてましたね。

城猫

私の移住先で言えば、アパートやマンション住まいだと町内活動にはノータッチです。
町内会側もハナから期待しておらず、アパマン族にはノータッチの状態(若干の「自治会費徴収」だけはされる町内はあるようですが)。

現在住んでいる町内の「ゴミ集積所」には「町内会員以外は出せません」という縛りがあって、私はだから「ゴミ出しをするために町内会に入ってる」ような感じなんですが、アパート・マンションだと独自のゴミ置き場が設置されてたりするので町内の集積所は使いません。

まぁゴミについては東京でだって「いつどこに何をどのように出しても構わない」なんてわけじゃなく、出していいモノ収集日ごとに違いますし、出せる時間帯だってちゃんと決まってる。
けれどもそれを守らず不法投棄されてるブツが都心にはあまりにも多すぎて、目に余るデタラメさを呈しているので、やはりある程度の厳しさは必要だなぁと個人的には思いますね。

ゴミの話はまたいずれ章立てしてじっくりするつもりですが、一定ランク以上の分譲マンションだと細かな仕分けは管理人さんがやってくれるので、粗大ゴミでない限り、住民は365日・24時間好きなときに出せるようになっています。
私も在京時にはずっとその便利さが当たり前のように感じていたんですが、いま振り返るとやっぱり「感覚がマヒしてた」んですね。

薪ストーブとマンション

鉄の掟でガッチリ結び付いていないとコミュニティが瓦解してしまう秘境村とかの事情は知りませんが、ウチのような都会のちょっと外周部にあるローカルエリアだと、「近所づきあい」と言ったってせいぜいこの程度のモンなんですよ。
「回覧板も回されたくない」というならアパート・マンションに住めばいいし、「管理組合は面倒だ」と思うんだったらずっと「賃貸」のままでいればいい。
それならば東京にいた頃と大差なく暮らせますよ?

ちなみに私は「面倒であること承知のうえ」「戸建の持ち家」に移り住みました。
都会の毒に染まっていた自分にあえて喝を入れ、「便利すぎる都心マンション暮らしでマヒした感覚」を是正しようと考えたんです。
と言っても、せいぜい回覧板まわしたり、当番の時にゴミ集積所や神社の清掃したりする程度ですけどね。

最初は正直「大変かなぁ……」とやや不安で憂鬱だったりしたんですが、やってみるとこれが新鮮意外に面白かったりするんです。
若い頃には「隣人の顔も知らない東京砂漠ライフ」が楽チンで良いモノに思えた時代もありましたが、全国レベルで「周囲への無関心」がここまで進んでしまうと、「ご近所さんに道で会ったら挨拶を交わす」みたいな昔ながらの暮らしの良さが心にしみじみ沁みてきます。

ちなみに「田舎移住のこわい話」の中に登場する「畑で獲れた野菜のお裾分けする習慣」ですが、そんなのはローカルエリアにはありません。
都会より段違いに安いとはいえ、野菜はあくまで「買うモノ」であり、自作してない人たちはみんなスーパーなり直売所なりで購入しています。
むしろ「たまには誰か黙って玄関先に置いといてくれないかな~」と思ったりするくらいですが……しかし「施錠しとくと叱られる」みたいなのは絶対に嫌なんで、やっぱお金払って買いますワ。

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