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BBTクローン再生計画(16)「再開発=無機質化」ではないと思うんです

今から三十数年前、東京はバブル期に入ったのを機に怒涛の再開発ラッシュに突入しました。
その流れはバブルが弾けて以降も止まらず、思いもがけない場所に思ってもみなかった施設がどんどん建っていったんです。

最も身近で顕著な例が「ガーデンヒルズ」で、一日中ほとんど人通りのなかった裏通りに、私が恵比寿を離れる直前から大型トラックが列をなして訪れるようになり、1年ほど後に行った時にはもうあの大規模商業施設が出来上がっていました。
以前は恵比寿駅とアパートの行き来に浸かっていた静かな道だったのに。

その目の前にある、JR線をまたぐ形でかけられた橋(恵比寿南橋)は通称を「アメリカ橋」といい、

アメリカ橋って知ってますか
目黒と恵比寿の間にある
下を山手線轟轟通る
鉄で出来た青い橋

と、兄弟ディオの狩人が哀愁たっぷりに歌い上げたくらい、ちょっと寂しげなスポットだったんです。
そこがまるで竹下通りのように賑わっていて、私は完全に浦島太郎状態でしたね。

そもそも恵比寿駅の山手線内側改札って、昔はというか小さな山の上にあったんですよ。
改札口に行くときは、いつも緩やかな坂道を登っていたんです。
今では長~~~~いエスカレーターがかけられている新宿駅の南口エリアも以前は同様な環境で、丘の上に掘っ立て小屋テイストの金券屋があったのを今も鮮明に憶えています。
「便利さ」「小ぎれいさ」といった点では今のほうが良いのかもしれませんが、「有機的な町」を好む私としては、そういった「無機的な光景」にはあまり馴染めません。

乱暴な再開発がなされる以前の東京は、首都なのでもちろんデッカイのはデッカイんですけど「超巨大なローカル」といった風情があって、ビルとビルの間に「メチャメチャ人間臭い家」がなぜかポツンとあったりして、「緩」と「急」のメリハリというのがちゃんと効いていたんです。
ところがバブル期を境に緩急の「緩」の部分が目に見えて減っていき、どの町も「カッコイイけど無機質なビル」で埋め尽くされていきました。
そして都心部はどこも現在のような「体温の感じられないエリア」になったんです。

都市というのは「生きもの」で、だから絶えず変わり続けるモノですから、再開発そのものを否定するつもりはありません。
けれども「再開発=無機質化」というのは違うと思うんです。
最近は大規模施設に木材やグリーンを大胆に配して有機的なイメージを持たせる建築家だとかも増えてきていますが、私から見ると「まだちょっと足りない」感じ。
街に体温を持たせるには「ほどほどのダサさ/ヘンさ/マヌケさ」が不可欠だと私は思っていて、この考えと照らし合わせると「まだまだオシャレすぎる」んです。

BBTにあった、そうした素敵な有機性をなんとか復活させたいと私は本気で思っています。
まぁ金まわりが本式に悪くなるとオシャレでカッコイイ建物ばかりバンバン新築することもできなくなるでしょう。
その時こそ「ほどほどのダサさ/ヘンさ/マヌケさ」を身にまとった有機的な建造物が息を吹き返すんじゃないかな・・・と期待してやまない私なのです。

画題「究極の『有機的建造物』はこれだ!」

草っぽい家


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