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山田孝之&森田望智に直撃 『全裸監督』で何が変わった?

ネットフリックスが発表した2019年の注目作品リスト「What's Hot? 2019」。日本国内で最も観られた作品は、『全裸監督』でした。「アダルトビデオの帝王」と呼ばれた村西とおるを描き、8月に配信するやいなや、大きな話題になりました。主演の山田孝之さん、森田望智さんは、その反響をどう感じたのでしょう。二人に会って、聞いてきました。(撮影:中野敬久)

山田孝之「20年の俳優生活で一番の反響」

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――『全裸監督』は大きな話題を呼びましたね!

8月の公開直後は、今まで20年俳優をやってきて、知り合いからのメッセージがこれまでの作品の中で一番多かったです。ディレクターや俳優など、作り手側からは「自分がその場にいないことが悔しい」という反応もありました。

――190カ国で配信され、世界各地で見られていますね。

ハワイで買い物をしている時に「Netflix? Netflix?」って聞かれて。「It’s me!」と答えたら、みんなが「Season2! Season2!」って盛り上がってうれしかったですね。入国拒否とかあるかなと思ったけど、ハワイも大丈夫でしたし、韓国も中国も大丈夫でした。中国では配信していないはずなんですが、上海でのイベントに呼ばれて登壇したら、会場に『全裸監督』の写真を拡大したポスターを掲げている人がいたんですよ。「あれ? 中国ではやってないんじゃないの?」って聞いたら、司会の人が、「山田さん、ま、まあ……」みたいになりましたけど(笑)。

今でもタイとかだと『クローズZERO』(2007年公開の映画)の人気がすごくて、SNSでは「待っていた山田孝之はこれではない」って書かれているのを見ました(笑)。いまだにタイでは、「芹沢」(『クローズZERO』の役名)って言われるので、そろそろ変えたいなと思っていたんです。今は「村西」とは言われないけど、「ネットフリックス」って言われます。

――テレビ番組では、いろんな芸人さんが物まねをしていましたね。ハロウィーンでも仮装している人がいたようです。

多くの人が見てくれたことがいろんな角度から伝わってきました。まあ、物まねしやすいですよね。ブリーフはけばいいんですから。ジャングルポケットの斉藤さんは『全裸監督』のまねをする前から、ただヒゲを描いてスーツ着て「山田孝之です!」っていうのをずっとやっていて。何かの番組で、彼が「向こう(山田さん)から太ってこっちに寄せてきた」みたいなことを言っていたらしいです(笑)。

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――こんなに人気が出ると予想していましたか?

そんなことないですよ! 企画段階から参加していて、衝撃作になるとは思っていましたけど、批判もあるだろうと。批判があるということは、あまり人が見てくれない可能性もある。すごく慎重に話し合いましたが、ここまでたくさんの人に見てもらえて、「シーズン2を早く見たい」というポジティブな意見が多くなるとは予想していなかったです。

でも、僕らはこれが面白いと思っているし、面白いと思わない人がいたとしても、相当な衝撃は残せるだろうという気持ちはありました。群像劇ですし、何より脚本がよくできている。情熱を注ぐ姿を描いていて、その対象がエロだったというだけ。滑稽さもありつつ、心揺さぶられるものがある。だから多くの人が面白いと思えたんじゃないかと思います。

――これまでに参加した作品と違うところは?

世界190カ国のネットフリックスメンバーが見るので、日本は190分の1でしかないんです。大切なことは、世界中でたくさんの人たちがワクワクするものをどう作るか。そういう作り方を僕はしたことがなかった。『勇者ヨシヒコ』も『闇金ウシジマくん』もそうですけど、1%が大熱狂すればいいと思ってやっていたら、意外と多くの人に届いた。本気で面白いと思っているものを本気で作れば、多くの人に響くんだなって思いますね。国内向けの作品でも、世界に向けた作品でも、それは変わらないんです。

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――強烈なキャラクターを演じるにあたって、躊躇はありましたか?

奥さんの親族とかにいよいよ見せられないな、という感覚はありましたね。だから奥さんに言いました。「これは見ないほうがいい。両親にも伝えといて」って。でも、でき上がりを見た後、「めちゃくちゃ面白くなってるから、題材があれだけど、見てもいいかも」って奥さんに言ったんです。そうしたら、「見る気はない」と(笑)。たぶん一生見ないと思います。

――制作現場はどうでしたか?

作っている側からの感覚になりますが、ほかの制作現場にあるような、「そこに気を使う必要があるかな?」って思うことは少なかったですね。見る人たちが自分でお金を払って契約して、自分でボタンを押して作品を選ぶわけだから、いいと思うか不快だと思うかは自己判断。こっちはこっちで作品としていいと思うものを作る。「ちょっとそれはやり過ぎなんじゃないか」と自主規制せず、作品に必要ならやる。そういう姿勢は、言語化されるわけじゃないけど、伝わってきました。

もちろん、資金面も大きいですね。美術だったりロケだったり、資金によって表現の幅が広がりますから。何より人件費は、撮影日数が増えれば増えるほどかさみます。だから、基本的に日数を短くして1日の労働時間を長くする作り方が日本では当たり前になっている。でも、ネットフリックスでは労働基準を作り、1日の拘束時間は何時間までと決めているから、俳優もスタッフも心に余裕ができるし、準備もしっかりできる。確実にクリエイティブに影響してくるんです。睡眠時間が削られると、絶対にパフォーマンスは落ちるんですよ。

――役作りで、体をだいぶ大きくしていましたね。

体を作るためにとにかく食べ続けて、定期的に日焼けサロンに通いました。もし毎日過密スケジュールで、台詞の確認にいっぱいいっぱいだったら、そこまで役作りに時間を割けない。たぶん10キロは増えていないと思うんですけど、撮影の期間もトレーニングをしながら食べて、脂肪も筋肉もつけて、「黒光り」していきました。で、脱ぐ時は毛を剃る(笑)。

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――山田さんは俳優業のほか、プロデューサー業やバンド活動、会社経営など、さまざまなことをなさっています。どのように時間を作っているのでしょう?

ここ数年突っ走りすぎて、常にキャパをちょっとオーバーしているような状態で。だから自分の時間を精査していったんですよ。俳優の仕事は、やりたいもの、やるべきものをやって、それ以外は申し訳ないけどお断りする。それから、携帯でやってたゲームを全部消しました。日々、何にどれくらい時間を使っているかを考えて、今必要ないものを消していったんです。最初にやめたのは、知人の結婚式にコメントVTRを寄せること(笑)。祝い事だから断りにくいじゃないですか。でも、VTRの撮影自体は1分2分で終わるとしても、何を話すか考えるのにめちゃくちゃ時間かかるんですよ。一度も会ったことのない人とか、思いつかない(笑)。

最近はなるべく仕事を増やさないようにして、ぼーっとする時間を数日作ったり、地方や海外に行って、ただ空を見たり。あと、昔は英語をマンツーマンで勉強して、ハリウッドにチャレンジしようかなと思ってた時もあったんですけど、英語もやめましたね。

――気持ちにどんな変化があったんですか?

僕の周囲では、なんで海外にチャレンジするかというと、日本の制作環境に疑問を感じて出ていく人が多いんです。それってすごくもったいないと思って。日本としても才能が外に出ていってしまう。外に行くより、今いる場所をよくしたほうがいいと思いました。

日本の俳優はすごいことをやっている。「10億円以上もらえます」「半年以上役作りの期間作ります」「専属のトレーナー、管理栄養士つけます」と言われたら、日本の俳優もみんなできるんですよね。普段それを短期間、数百万円のギャラでやっているわけですから。

――今、世界に日本の実力を見せるチャンスですね。

日本で作って、日本の題材で世界に出す。それこそが本当のチャレンジだと思っていたら、偶然『全裸監督』の話が来て、まさにこういうことだなと。ネットフリックスの日本チームと一緒に作って世界に配信するというのは、日本の現状の実力を良くも悪くも見せることになる。そう思って取り組んでいました。

日本の俳優がちゃんと世界からもリスペクトされるようにしたい。そのためにはクオリティーの面でもちゃんと見てもらえるものを作らないといけない。ハリウッドの俳優が日本の作品に出たいって思うほうが、夢があるじゃないですか。

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山田孝之(やまだ・たかゆき) 1983年、鹿児島県出身。『クローズZERO』シリーズ、『闇金ウシジマくん』シリーズ、『勇者ヨシヒコ』シリーズ、映画『凶悪』『映画 山田孝之3D』『50回目のファーストキス』など出演作多数。ドキュメンタリードラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』も話題を呼んだ。2020年4月3日、主演映画『ステップ』が公開される。

森田望智「私自身も変化していくのを感じた

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――『全裸監督』で釜山国際映画祭の最優秀新人賞を受賞されましたね。おめでとうございます! 身の回りで『全裸監督』の反響はいかがでしたか?

8月に公開してから、熱量の高いメッセージをたくさんいただきました。私は大きな作品で大きな役ということ自体が初めてで、いろんな方から連絡をいただいて。友達はもちろん、俳優仲間やしばらく連絡を取っていなかった人からも感想をもらいました。韓国に行った時も、すごく多くの方が見てくださっているのを肌で感じて、びっくりしましたね。日本で買い物している時にも、海外の方に「Netflix?」って聞かれたんです!

――来年1月からは連続テレビドラマに出演、『情熱大陸』でも特集されるなど、注目が集まっています。『全裸監督』に出演する前と比べて、変化は?

去年とはまったく違います。オーディションを受けずに役をいただく機会も増えて、今までからすると信じられないのでとてもありがたいなと思います。

――『全裸監督』では大胆なシーンもありました。迷いはありませんでしたか?

この役を私がやりたい、という思いしかなかったです! もう二十歳を超えていましたし、来たものは全部つかみたいという意欲が強くて、自分の中で強い覚悟を持っていたので、躊躇はなかったですね。

周りの俳優さんは経験豊富な方ばかりで、現場に入ってからは私で大丈夫なんだろうかという不安がずっとありました。でも撮影期間は4カ月あったので、いろいろな資料を見たり、足を運んで研究したり、自分が出演していない撮影現場を何度も見学させていただいたりするうちに、役だけではなく私自身も変化していくのを感じました。5話の『SMぽいの好き』を撮るシーンでは、恥じる気持ちはなく、本当に没頭していたので、今振り返ると「もう一回できるかな?」と思ったりもしますけど。なかなかない、すごくいい役をいただいたと思います。

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――でき上がった作品をご両親と見たそうですね。

7月に豊洲で行われた『全裸監督』のワールドプレミアに両親を招待していて、そこで1話と2話を見てもらったんです。翌日お家で時間があったので、両親と3話から5話まで一気に見ました。お母さんは爆笑していましたね。お父さんはちょっと苦笑いでしたけど(笑)。両親は「なんでも自分で決めなさい」という感じで、私が決めたことを支えてくれています。

――『全裸監督』の撮影を通して気づいたことは?

自分がどうしたいのかを常に考えなきゃいけないと思うようになりました。最初は本当に監督に頼りっぱなしというか、私の力ではどうしようもできないから、すがるような気持ちでいたんです。でも、『全裸監督』は監督が複数人いるチーム制でしたから、監督が変われば、役の解釈も変わります。たとえ間違っていたとしても、自分がこうだと思う軸を持ったほうがいいと思いました。

山田さんは本当に、軸があるんです!  たとえば監督が「今の場面では、ちょっと時計を見てもらえますか?」と伝えたとすると、「いや、ここでは見ないほうがいい」とお返事をされているのも、軸があるからこそですよね。もちろん腑に落ちた場合はそうするんだと思いますが、ご自身の中に「この役はこう」という芯があって、まったくブレない。玉山さんも、ご自身のプランがあってすごかったです。一方で、國村さんや小雪さんはどんどん変わっていくんです。それぞれの方がしっかり軸を持っていて、でもアプローチの仕方はさまざまで、いろんな方法があるんだなと。柔軟さは大事ですが、一本通っている何かがなければ自分がやる意味がなくなってしまう。どの役を演じるうえでも、そう思うようになりました。

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――今、チャレンジしたい役はありますか?

自分で「これをやりたい!」と思うより、こんな役が合うと誰かがイメージしてくださったものをやったほうが可能性が広がるんだろうなと思います。

感情がすごくあるのに抑えている役とかやってみたいですね。難しいと思うので。外側だけではなく中身、深い部分を詰めていかなきゃいけない役は難しいですし、だからこそそういう役をやりたいと思います。

――アジアで評価され、活躍の場が海外にも広がっていきそうですね。

日本にはいい映画がたくさんあって、それを海外にも伝えていきたいですし、日本語だから伝わるものもたぶんあると思います。ちょっと変な話になるかもしれないんですけど……宇宙に行って地球を見たら、日本って本当に小さいじゃないですか。世界のいろんなところで戦争が起きていて、みんな同じ国になればいいのに! って思いません? 作品に関しても、そういうイメージなんです。交流したらもっと素敵なものが生まれそうだなと思います。

――ずばり、2020年の抱負は?

来年、24歳になるんですね……嫌だ〜(笑)。ちゃんと生きたいって思います。一人暮らしを始めたんですけど、実家に帰りたくて。ご飯は出てくるし、なんでもやってくれるし。でもそれがダメだなと思って一人暮らしを始めたから、自立するまでは帰りません!

お芝居って普段の生活が影響しますよね。だらしないところもあって、いろいろサボっちゃったりするんですよ。時間も大切にしたいですし、両親のことも考えたい。それから、女優さんのお仕事って、たとえば喉が渇いたから水が飲みたいと言ったら、お水を出していただける時もあります。でもそれを当たり前だと思わないようにしたい。私のお友達も、事務の仕事をしていたり空港で働いていたり、みんながいろんな仕事をしていて、広い世界で生きているから、私も縮こまらないようにしたいです。ちゃんと生きたいというのは、ちゃんと周りを見られる人になりたい、ということです。

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森田望智(もりた・みさと) 1996年、神奈川県生まれ。2011年、女優デビュー。出演映画に『世界でいちばん長い写真』『一週間フレンズ。』『2085年、恋愛消滅。』『キスは命がけ!』『リュウグウノツカイ』『生贄のジレンマ』など。2020年1月11日からドラマ『トップナイフ ―天才脳外科医の条件―』(日本テレビ系)に出演。2020 年 4 月 11 日放送のNHK・BS プレミアム『スーパープレミアム 柳生一族の陰謀』に出演。


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