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ネトフリ社員が全力プレゼン。悩める人の背中を押す、魅力的な5人の女性キャラクター(前編)

3月8日は「国際女性デー」。今回はNetflixの社員が作品で出会った魅力的な女性キャラクターを座談会形式でプレゼン。本編のワンシーンと共に、その魅力をご紹介していきます。

女性たちは物語の中で、時にもがき、時に気高く、自分自身の生き方を見せてくれます。その姿は私たちを勇気づけ魅了しますが、それは「女性」に限った魅力ではありません。彼女たちが先入観にとらわれず、自分らしく生きるからこそ、私たちは胸打たれるのでしょう。

5名のNetflix社員が紹介する作品を通して、女らしさや男らしさの先入観を問う、魅力的な「人間らしさ」について、一緒に考えていきませんか? 映画ライター・レビュアーとして活躍するDIZさんがナビゲートします。

なおみ:Netflix コンテンツ部門マネージャー。2017年入社。普段はオリジナル作品の製作や契約に関わっている仕事をしています。最近のイチ押し作品は「ブリジャートン家」と「コブラ会」                                                  
なお:Netflixコンシューマーインサイト部門。最近のイチ押し作品は「ヒルダの冒険」「アイリッシュマン」「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」        アントン・リラ:Netflix クリエイティブマーケティング担当。最近のイチ押し作品は『ノトーリアス・B.I.G. -伝えたいこと-』                                 
やよい:Netflix 法務担当。最近のイチ押し作品は「都市を歩くように -フラン・レボウィッツの視点-」「進撃の巨人」「呪術廻戦」「はたらく細胞 BLACK」
DIZ:映画レビュアー、ライター。SNSで映画の素晴らしさを伝える活動中。映画とファンをつなぐメディア「uni」(@uni_cinema)主催。常に幅広いジャンルの映画をチェックしている。

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夫婦生活の“あるある”満載?『マリッジ・ストーリー』

なおみ:私が選んだ作品は『マリッジ・ストーリー』です。かつて愛し合っていた演出家と俳優の夫婦が、離婚を円満に済ませるべく話し合いをはじめるのですが、徐々にヒートアップしてしまい弁護士をつけて裁判に至るまでに。それぞれ苦しみもがき、家族に向き合いながらも今後の人生に向かっていくビタースイートな物語です。

なお:私も見た!

リラ:私も大好きな作品です。絶対アカデミー賞取ると思ってた。どうして選んだのかすごく知りたいです!

なおみニコールが離婚調停の弁護士に、初めて自分自身の感情をさらけ出すシーンです。一見幸せそうな結婚や出産という流れのなかで、ニコールは「諦めなきゃいけない」「覚悟しなきゃいけない」と考えていたんだとよく分かるし、そのうえ自分が言いたいことを誰もちゃんと聞いてくれなかったんだって伝わるんです。一人の人間として尊重されるって意外と難しいし、自分自身を認めるって難しいんだなと。見てて痛々しいんですが、すごく好きなシーンです。誰かに話を聞いてもらうって本当に大事だと改めて思いますね。

私がこの作品を見たのは、ちょうど子どもが生まれて2か月目くらいの頃でした。大好きな監督と大好きな俳優ですごく楽しみにしてて、このシーンを見た時に「うーん……」って(苦笑)。思わずこれから自分に起こることを考えてしまいました

リラこれぞまさに“マリッジ・ストーリー”だなって気がする。生きているといろんなことが起こるし、愛し合っているだけじゃ足りなくて、2人でいるって本当に難しいって伝わります。

うちの旦那の両親は昔に離婚してて、彼はこの作品を見て「親はこういう気持ちだったんだろうな。見てて痛い、見られない」と言ってたんです。それを聞いて、結婚するって必ずハッピーエンドじゃないんだなって。そんな苦しみも含めて『マリッジ・ストーリー』ってタイトルも良いし、人間模様がすごくうまく描かれた作品だと思います。

DIZ:私は結婚も出産もしてないのですが、『マリッジ・ストーリー』を見て「結婚するのが怖いな」って思っちゃったんですね、正直(苦笑)。これから結婚する女性に対して、何かメッセージとかアドバイスがあればぜひ教えていただきたいです。

なおみ:私の“マリッジ・ストーリー”はまだ継続中なので、難しいところなんですけど(笑)。私はこの作品を見たとき結婚して子どももいて、そしてNetflixで働いていたので「この先キャリアで諦めなきゃいけないものが出てくるのかな」と咄嗟に考えてしまった一方で、どんな出来事が起きてもできるだけフラットに捉えようと考えました。自分の気持ちをちゃんと夫や家族、できれば会社の人にも伝えて、自分一人で先に判断して人に伝えずに可能性を閉じないようにしようと。

やよい:私はいまシングルで4人子どもがいるんですけど、もう結婚はいいかなって気はしますね、正直なところ。恋人から夫婦になってもギリギリバランスは保てるんですけど、子どもが登場すると、ガラッとバランスが崩れるんですよね

子どもだけじゃなくて、どちらかの両親の介護などのライフイベントもそう。そこで途端に「女の人がやることだよね」っていう世間の常識や、自分の思い込みが、生活にかぶさってくる。それに振り回されて、自分で自分の役割が担いきれなくなって……

2人目以降は一人で育てたんですが、むしろ全部自分でコントロールできるので私の経験では楽なんですよね。他人と生活していく難しさや苦労は、身に染みて分かります。子どもたちのお父さんとどんな関係を築いていくかも、すごく悩みました。

なお:私はまた全然違うケースで、うちの旦那は、上の子が生まれるとき「イクメン」って呼ばれるのをすごく嫌がってましたね。寡黙なタイプなんですが、これだけは「自分の子どもだから育児して当然」とハッキリ言ってたのを思い出しました。

私もやよいさんと同じように子育てを「女性の役割」と思い込んでましたし、周囲のそういう話を見聞きしてたんですが、私自身はすごく自由に生きてて。子どもを置いて一人で海外旅行にも行ったし、仕事にもフルコミットしていました。今にして思うと、旦那がすごく主体的に子どもの世話してくれてたから、私は仕事に集中できてたんだな〜と。

だから、ラベリングってすごい罪だなって思いますね。「女の役割」「男の役割」っていうラベリングが、幸いにも私たちの家族にはあまりなかったので、なんとか生活を回してこれたのかも。ニコール自身も、自分を無意識に枠の中に押し込んでラベリングしてて、苦しんでいたんでしょうね


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自分をを突き動かす原動力とは? 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」

なお:語るに及ばずという作品ですが……私が選んだのは「攻殻機隊 STAND ALONE COMPLEX」。漫画が原作で何パターンも映像化され、Netflixからもオリジナル作品「攻殻機動隊 SAC_2045」が出ています。大まかにストーリーを説明すると、主人公・草薙素子は「少佐」と呼ばれている女性……というか“義体”と呼ばれるサイボーグのような人物。この人は組織犯罪やテロリズムと戦う公安組織「公安9課」のリーダーで、その仲間たちとの物語です。

また前提として、この世界では人間の脳が他人やインターネットに接続されていて、身体も生身じゃなくてサイボーグ化されてて当たり前なんです。そこで「果たして人間とは、どこまで人間なんだろう」という根本的な問いかけがこの作品にはあります。

なお:こちらは「笑い男事件」と呼ばれる物語のワンシーンです。「笑い男」はハッキングして自分の情報を他人に正しく認識させない手口を使っていて、とある製薬会社をめぐる汚職事件などの核心にいます。それをこの草薙素子率いる公安9課が解き明かしていく。セリフの「オリジナルの不在」は、「笑い男事件」の模倣がたくさん出てきてしまったことを指しています。

そもそも私がなぜ少佐を好きなのかというと、公安9課ってある意味Netflixみたいな組織でして(笑)。9課を率いる荒巻大輔が「STAND ALONE COMPLEX」で「この組織にチームワークなんてものは存在しない」とよく言っているんですよ。彼らが重視するのはチームワークじゃなく“STAND ALONE”だと。常に他人を気づかって協同するというよりは、個々が自由な環境で、好奇心に基づいて良い仕事をすることで成果に結びつく。それが「STAND ALONE COMPLEX」という言葉につながっていくんです。

その組織で草薙素子って一番強いんですよ。彼女は見ての通り、格好や喋り方はフェミニンだし、女性性を隠していないんですが、自分に対して「女性」っていうラベルは絶対貼っていないように見えるんですよね。他の仲間も、彼女を女性ではなく一人の個人として扱っていて、そのうえで個々が動いて結果出してるところが大好きなんですよね、私。すいません、前置きが長くなりました(苦笑)。

そこでなぜこのシーンか? 脳がインターネットに接続されている世界観が「情報の並列化」という言葉で表されているんですが、そこで少佐の「好奇心」って言葉がキーになっていると思うんです。男女の次元を超え、人間か電脳かという究極的な局地にまで話が及んだ世界で、自分を「その他大勢」から差別化するものってなんだろう? という話だと私はこのシーンを解釈しました。そこで少佐の出した「好奇心」という解にすごく共感します。

DIZ:「好奇心」が、なおさん自身にとっても重要なキーワードということでしょうか?

なお:私が所属するコンシューマーインサイトという部署は、消費者の皆さんの声を聞いてビジネスに還元しているんですけれど、私の職業人としての座右の銘って「好奇心なんですよね。「なぜこういう声があがるんだろう?」「みんなこのことについてどう思っているんだろう?」「こういう作品を見るのはどういう人たちだろう?」と。好奇心が私を動かす要素なので、ご紹介したシーンはすごくツボにはまるんです。

今回「国際女性デー」というテーマですが、いま女性だけじゃなく多様性がすごく話題だし、特に去年から今年にかけて多様性に起因する衝突が表面化していると思っています。個人的には、まず「そこに衝突がある」と認識することが多様性の理解への第一歩なのかなと。認識のきっかけになるのが理解であり、好奇心。自分とは違う他者に対して、好奇心を持って推測する、想像することから理解が始まるんじゃないかなと思っています。

DIZ:「好奇心」って大人になるとどうしても減ってしまうと感じていて、どうやったら好奇心を持ち続けられるのでしょうか

なお:個人的には「なんで?」を続けるってことですかね。うちの子もそうですけど、子どもってずっと「なんで?」って言い続けるじゃないですか。私の基本的なスタンスも「なんで?」ですね。あらゆる事柄に「なぜ?」を常に持ち続けるってことなのかな。ぜひ他の方の意見も伺いたいです。

なおみ:「攻殻機動隊」からは離れちゃうんですけど(苦笑)。今日ちょうど同僚と「強くなっていくためには優しさも必要だよね」「アクティブに人の話を聞いて、相手に興味を持つってすごく大事だね」という話をしてました。リモートワークの環境では特に、互いへのチェックインを大事にして、アジェンダがなくても定期的に会話するようにしてますね。

やよい:私は「公安9課がNetflixぽい」っておっしゃってたのが印象に残っていて、確かにNetflixって好奇心がないとやっていけない組織なんですよね(笑)。

なお:でしょ。

やよい:常に好奇心をもって情報を取りにいくと、みんな教えてくれるし面白いんだけれど、好奇心がないと花開けなし、辛い。私は子どものときから「謎解き」が好きだったんですよね。勉強ができるほうではなかったけど、謎解きや複雑なお話が大好きでした。だから常に「なぜこんなことが起こるんだろう?」とつい伏線を探してしまう、そこが仕事の原動力になってる気がします。

リラ:私はクリエーションの仕事をしてるので、好奇心がなかったら仕事できないなっていつも思ってます。

私は静岡出身でずっと日本で暮らしてたんですが、アメリカの高校に進学しました。両親が日本の高校に行かせなかった理由として「日本の教育は、問いかけることを教えない」って言ったんですよ。日本は問いかけるのではなく、言われたことをそのままやるという教育。親はそういう育て方をしたくなかったんでしょうね。それでアメリカの学校に行ったら、授業で生徒たちが「そんなに!?」ってくらい質問してて、すごく驚きました。人の言うことを聞くだけじゃなく、その人たちに問いかける、疑問を持つことはすごく大切だなって今でも感じています。

Netflixではそうした環境に慣れている人たちが多いですが、バランスが難しいときはありますね。日本のチーム、特にクリエイティブ周りでは「これをやろう」と提案しても「もうやったからいいんじゃないか」で議論が終わってしまう。逆に、海外のチームだと「Why?」が多すぎる時もあるんですけど……。なおさんの話を聞いて、まだまだ自分には好奇心が足りてないなって思いました。

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多様な女性キャラクターたちが登場。後編へ続きます。

文・伊藤七ゑ

© 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

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