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奇才の話。

今日は少し短い。

Yonluというアーティストをご存知だろうか。
彼はブラジルのシンガーソングライターであり1989年に生まれ、2006年に死去した。

計算が速い皆さんならお気づきだろうか?
16歳で亡くなっているのである。

私はThe Boy And The Tigerという曲にカナダで出会い、事あるごとに聴いていた。彼の作曲の自由度は聴くたびに新たな発見があり、なぜ死を選んだかについても非常に興味があった。

彼は16歳という若さで自殺し、自らの人生を閉じている。
あまりにも情報が少なかったが、いつか日本語にしてみたいと思っていた。ALL MUSICにバイオグラフィがあったので手短にまとめてみる。


若くして自ら命を立った青年、Yonluはブラジルのソング・ライターである。彼の死後にリリースされた作品が『A Society in which No Tear Is Shed Is Inconceivably Mediocre』である。自分の人生に絶望しながらも好きだった音楽を制作し続け、インターネットに投稿していた。インターネット上では彼を称賛する声が相次いだ。

しかし彼が幼少期から抱えていた社会との断絶したいという願望はインターネットでの称賛をもってしても解決しなかった。

ローファイ・ミュージック、ブラジリアン・フォーク、ボサノヴァへの独自の解釈、インディ・ポップなど、幅広いジャンルの音楽を吸収し、彼は1人孤独に制作していた。

彼の自殺後、両親が部屋を調べたところ、数々の音源が発見される。
彼の最初で最後のアルバムはトーキング・ヘッズのギタリストであったデヴィッド・バーンが設立したレーベル『Luaka Bop』よりリリースされた。

Luaka Bopは「これは宴会が前菜で止まってしまった、才能ある人生へのお祝いだ」と紹介している。

短い紹介となってしまったが、興味があったらぜひ聴いてみて欲しい。
また機会を改めてディスク・レビューをしようと思う。

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最後に昨日、作成したディスク・レビューを皆さんに共有したいと思う。

普通はディスクレビューは何日かかけて行うものだと思うが最近、「瞬発力」を鍛えるために毎日、数枚レビューをしてみようという練習を重ねている。スティーヴィー・ワンダーについて、実はこのアルバムを通して聴いたことがなかった。

初めて聴くアーティストやアルバムのレビューや、ずっと好きだったアーティストのレビューなどこれからも続けていきたいと思う。そして独自の企画もnoteで出来たらな、と。


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Stevie Wonder / 『Innervisions』 (1973)


スティーヴィー・ワンダーが1973年にリリースしたアルバム『Innervisions』は彼の創造力を存分に放出した作品となっている。幼い頃にその才能を見いだされ、11歳という若さでR&B、ソウルの名門レーベル「モータウン」に所属していた彼は、レーベルが成功した要因でもある、作曲・プロデュースする側と、それを歌う所属アーティストがはっきりと分断されている構造によって、自由な楽曲制作を行うことが出来なかった。しかし、成人したスティーヴィーはレーベルに直談判し、セルフ・プロデュース権を獲得する。

この背景から、自身の楽曲を世に送り出すことのできる喜びから生まれたのが同アルバムだろう。M1 “Too High”のオープン・ハイハットから入り、女性コーラスが絡み合う。スティーヴィーの声が入るとさらに、ライド・シンバルの細やかな刻みが、彼のメロディ・ラインを引き立たせる。まさに彼の持っていた強みを作品に色濃く、反映した楽曲だ。

静かな始まりから徐々にパワー溢れるエンディングへと向かうM3 “Living For the CIty”は黒人の不当な扱いをテーマにしている。「怒り」を表現した同曲は彼の唸るようなメロディが緊張感を生み、間奏の不当な逮捕をされた黒人が独房に入れられるという寸劇、最後の多重コーラスにより、曲のテーマを強調している。社会的へのメッセージを彼は楽曲の様々な表現を用いて伝えた。

全編を通じて、彼はボーカル・ラインと間奏部分をシャウトやシンセサイザーの印象的なサウンドを用いて区切りとした。そのインターポーズは楽曲全体を引き締め、曲の展開を見事に区分することで曲に厚みを出している。

R&B、ソウルという感情を余すこと無く表現する人間的な要素と、当時はまだ、実験的に使われることが多かったシンセサイザーの人工的なサウンドを融合させた同作は、ファンクやソウルなどのジャンルの新たな方向性を示した作品となっている。

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