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iPhoneは斜め45°に構えて撮ると一番綺麗に撮れる

iPhone14Proの4800万画素のクアッドベイヤー配列のセンサーでは、斜め方向で撮影した方が写りがよくなるんじゃないかという話を書きます。

結論、傾けた方がいい

まず結論としては、確かにiPhoneを45°ほどに傾けて撮影すると色の情報は増えることがあります。

テスト内容としては18.3mほど離れた地点にあるカラーチェッカーを3パターン撮影するテストをしました。使用したチェッカーは以下のものです。

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18.3mという距離は半端な数字なんですが、チェッカーの各色のマスがセンサー上で4×4ピクセルほどになったときのクアッドベイヤーセンサーの挙動が気になったのでこの距離になりました。

テストでは、縦位置(iPhoneのカメラが上にくるように持った状態)、45°傾けたもの、27°傾けたもの、の3パターンを撮影しました。以下が結果です。

iPhone14Pro
試験に使ったカラーチェッカー

※説明が込み入ってややこしくなるので、カラーチェッカーの左右を便宜上、ひだりページ、みぎページと表現します。


縦位置

・縦位置で撮影したものは、ひだりページの下のあたりに黒で汚染されたような領域があったり、みぎページの中央2列の微細な色の違いが再現できていません。紫〜赤の各色のマスも曖昧になっています。


45°

・45°傾けて撮影したものは、縦位置で黒カビのように広がっていた領域も色は悪いものの再現されていて、みぎページの微細な色の変化も読み取れる程度には撮影できています。そして、紫〜赤の各色のマスも虹色とわかるようになっています。​


27°

傾けたらたまたまいい感じになった可能性もあるので、適当な角度(あとで測ったら27°ほどでした)をつけたものも撮影しています。それと比べても、やはり45°傾けた方が、いい結果が得られているように見えます。

撮影条件によって様々でしょうが、この結果を見ると45°方向けて撮影した方がディティールが多い=情報量が増えると言えそうです。

メモ

iPhone以外のカメラではどうなのか

では、これはiPhoneに限った話なのか?試しに他の一眼カメラも同じ条件で撮影してみました。これも結論から言えば、部分的に見れば傾けたものの方が色味が本来のものに近い場合もありましたが、iPhoneほど大きな差は生まれませんでした

D850

D850
試験に使ったカラーチェッカー

Z5

Z5@24mm
Z5@33mm
試験に使ったカラーチェッカー

Z5は2400万画素くらいなので、iPhone14Proの約半分の画素数です。従って、最終的に比較するために24×√2≒33mmの時にほぼ同じ画素数が残ると考えました。せっかくなので24mm時のものも撮影しました。

α7RⅣ

α7RⅣ@20mm ※14Proより画素数が1.3倍近く多い

α7RⅣ ピクセルシフトマルチ撮影

ピクセルシフトマルチ撮影@60MP 流石のクオリティ
¥ピクセルシフトマルチ撮影@240MP クオリティが高いが故に細かな色味の違いが気になる
試験に使ったカラーチェッカー

やはりセンサーのサイズや光学系については一眼(カメラ専用機)が圧倒的に有利なようです。

おまけ:カメラ同士の比較

そして、今回は縦位置=ベイヤー配列の縦横の配置が地面に対して垂直水平になっている場合と、斜めに傾けた場合の比較なので、カメラ同士の比較は主眼においていないのですが、こう見て見るとD850とZ5を比べた時に画素数に劣るZ5の方が、ディティールが崩れずに撮影できているなという感想を持ちました。

まとめ1
まとめ2

これは大口径のZマウントが持つ余裕、より進歩したレンズによるものでしょう。やはりZ5をはじめとするニコンのミラーレス一眼はコスパが良い…。

そしてα7RⅣのピクセルシフトマルチ撮影は流石の一言。240MPからのトリミングでは、クオリティが高いが故に若干の色味の違いやノイズが気になります。

色を平均化して確認する

これらの小さな画像だけを見ても、たまたま明るかったり、あるいは暗くなっている場合があると比較が難しいので、もう少し違いをわかりやすくするために、カラーチェッカーの各色のマスが写っている4×4ピクセルほどの範囲の色を平均化したものを比べてみます。(違いを強調できる一方誤差が広がる可能性もあります。)

45°傾けたもの、27°傾けたものは、綺麗に4×4に収まるわけではないので、おそらくこの辺りが◯色のマスだろう、という部分を選んで平均値を取っています。

以下の画像のうち、上はどのピクセルを選んで平均化したかを表しています。縦位置についてはマゼンタ色の正方形で囲んだもの、斜めに撮影したものは白い線で囲んだ部分のピクセルの色を平均化しています。

作業がめんどくさい割に一眼の画像は違いが少ないので、対象はiPhone14Proだけにします。

①縦位置

全体的に彩度が低くてグレートーン

②45°傾けたもの

縦位置に比べて彩度が高い

③27°傾けたもの

縦位置よりは彩度が高いが、45°よりは少しグレーっぽい
試験に使ったカラーチャート

平均化のまとめ

4枚をまとめたもの

この結果をみると、やはり45°に傾けたものが1番彩度が高いように感じられます(彩度,Saturation=HSB色空間での彩度:高ければ鮮やか、低ければ無彩色に近づく)。また右端の赤〜紫のマスの色のニュアンスも伝わっています。

みぎページの中央の2列の色味などが違いをみるとそれぞれがどれくらいの情報量を持っているかがわかりやすいと思います。

縦位置で撮影したものは、全体的に無彩色に近く、他のピクセルの色を補完した結果、黒が緑っぽくなるなど、ベイヤー配列の短所が出ていると思われます。

27°に傾けた場合は、全体的な傾向としては45°のものに近いものの、色の再現性としては曖昧なものが多いと読み取れます。

3パターンを比べれば45°に傾けたものに軍配が上がりますが、本来の色味を再現しているかという目線では、どれも厳しい結果となっています。スマホのカメラについて、画像クオリティという点ではまだまだと言わざるを得ません。十分に大きい色面に対しての色の再現性は良いものの、細部が甘いという一般的な“スマホ画質”の評価と一致する結果となりました。

ちなみにこの色を平均化する試験方法では、余分な色が混ざると彩度が落ちるため、それぞれを比較するための決定的な試験だとは考えない方がいいと思います。あくまで個人でできる(精度の低い)試験の結果と考えてください。

応用方法

これらの結果から、例えばiPhoneでLiDARスキャンをする場合、iPhoneを縦に構えるのではなく、斜め45°ほどに傾けてスキャンすることで、縦横方向に要素の多いもの、例えば人工物などでテスクチャの情報量を増やせる可能性があるのではないかと考えました。これは今後、検証していきたいです(気になった方、ぜひやってみてください)。

LiDARスキャンの他に、フォトグラメトリでも同じことが期待できます。ターンテーブルに物を置いて撮影する場合は、カメラを斜めに設置することで情報量の増加を期待できると思います。

一方、植物や樹木など天然のものには縦横に限らず決まった方向の要素が少ないため、風景写真などへの応用は難しいのでは無いでしょうか。ただし、地層や節理、鉱物など一定のパターンを持つ物体に対しては有効かもしれません。

斜め配列について

今回の結果は、ベイヤー配列のセンサーを積んだカメラは斜めに構えることで画像の情報量が増やせる可能性があることを示しています。

この考え方は新しいものではなく、ベイヤー配列のセンサーの欠点を克服するための方法として認知されており、製品化もされています。例えば2012年発売のソニーのシネマカメラF65RSは斜め45°に傾いたCMOSセンサーを搭載しています。

また、現行品には採用されていないものの、富士フィルムのスーパーCCDハニカムの構造も同じように45°傾いたベイヤー配列となっています。

これらの斜め配置のセンサは生産性が悪いためか、2022年現在では生産もされていないようです。

これからしばらくはクアッドベイヤーセンサーが独壇場でしょうが、小さなセンサーでどこまでできるようになるか、楽しみなところであります。

こちらは今回の試験に関して下調べなどで参考にさせていただいたブログ記事です。

おわりに

私の個人的なテストの結果を書いてみました。考えが間違っているところや、結果の読み取りが甘い部分もあるとは思いますが、一意見としてお楽しみいただければと思います。

今回はピクセルが縦横に配置されていることの欠点がiPhoneでの撮影を通して見えたという話なのですが、一方でピクセルビニングやピクセルシフトマルチ撮影などは縦横に画素が配置されているからこそ使える機能です。

経済性を理由に再現性の高い45°配置のセンサーを諦める一方で、縦横配置であることを生かして技術が発展していく様子が垣間見え、面白かったです。

今後は、
・iPhone14ProのRAW (48MP)とHEIC (12MP)との比較
・GoProの静止画や、GRⅢのようなコンデジの場合はどうなのか
・LiDARスキャンやフォトグラメトリ時にiPhoneを斜めに構えることでテクスチャに違いが生まれるか?

この辺りが面白い検証になるかなと思ってます。気が向いたらnote書きます。最後まで読んでいただきありがとうございました。

書いている人:@YoneharaRyuhei


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