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聴牌・ノーテンで勝者の選択を迫られた最強戦どう見るか

 日本プロ麻雀協会の渋川難波プロが2022年6月25日(土)の「麻雀最強戦2022 タイトルホルダー頂上決戦」で優勝し、12月に行われる「麻雀最強戦2022」のファイナルに進出しました。

 その決勝のオーラスで1人のプロに極めて厳しい選択が求められました。

 決勝は奈良圭純プロ、河野高志プロ、佐々木寿人プロ、渋川難波プロの並び順。南4局を迎え、持ち点は東家・渋川36700、南家・奈良32800、北家・寿人19600、西家・河野10900です。

 親の渋川プロと奈良プロは3900点差です。奈良プロの1人聴牌ならば100点差で逆転されます。渋川プロは基本、流局時に手を伏せられません。

 誰もあがれずに流局となりました。

 渋川プロは鳴き仕掛けも使って必死に聴牌を取りにいきましたが、あと1牌が入らずノーテンでした。

 一方、奈良プロは聴牌を取ることができました。

 跳満ツモで逆転だった寿人プロは手にならずノーテンでした。

 そして三倍満のあがりが必要だった河野プロは点差を縮めて次局に懸けようと、聴牌を維持していました。

 流局になって、親から順番に聴牌だったら手を開け、ノーテンとするのならば伏せます。

 まず、親の渋川プロが手を伏せ、奈良プロが手を開けました。次は河野プロの番です。

 寿人プロは聴牌・ノーテンの意思表示が最後の番なのでまだ分かりません。けれどもノーテンの可能性は濃厚です。

 河野プロの選択で優勝者が決まります。

 手を開ければ、河野プロと奈良プロの2人聴牌で渋川プロの優勝です。

 手を伏せれば奈良プロが1人聴牌で逆転優勝です。

 優勝者を決める残酷な選択を迫られた河野プロの出した結論は手を開けるでした。渋川プロの悲願のファイナル行きが決まりました。

 ただ、この手を開けるまでの過程でいくつかの疑問がありました。

 ◎話し掛けるのはご法度ではないか

 それは、まず、河野プロが手を開けるか伏せるかの結論を出す前に、寿人プロに「どうしていいか分からない」と相談してしまったことです。

 聴牌にするか、ノーテンにするかは、打牌などと同様に対局者が自ら判断する行為の一環です。まだ試合中なのに対局者に助言を求めるのは許されないと思います。

 さらに、河野プロによると、麻雀最強戦の運営にかかわっている黒木真生プロが河野プロに「手を開けなさい」とアドバイスをしたというのもいただけません。

 「自分で開けるか伏せるか早く決めてください」というのならば理解できます。

 どうするか決めるのは対局者本人だけのはずです。麻雀のルールでは、聴牌している手で流局時に開けようが伏せようが自由。その判断で助言をあおいだり、他者が口を出したりするのは、公式戦ではもちろんのこと、まして麻雀界最高峰のタイトル戦では絶対にあってはならないことだと考えます。

 親がノーテンを宣告した時点で次局のないことは確定しています。優勝の目がなくなった河野プロが聴牌しているのにノーテンとして手を伏せ、奈良プロの逆転優勝となれば、河野プロに対する麻雀ファンの印象は良くないでしょう。魔神ファンからの批判も必至です。

 黒木プロはそのようなことも配慮し、河野プロに声を掛けたのかもしれません。それでも勇み足だと思います。

 もう1つ指摘しておきたいのは、寿人プロが万が一聴牌していた場合です。もし寿人プロが聴牌していたら、河野プロが手を開ければ渋川プロの1人ノーテンで奈良プロの逆転優勝、伏せれば奈良プロと寿人プロの2人聴牌で渋川プロの優勝でした。

 可能性はほとんどありませんでしたが、今回と逆の結果になることもありえました。なおさら寿人プロが意思表示をしていないうちに河野プロが話し掛けたのは良くなかったです。

 河野プロの立場だったら、自身が優勝者を決めることにならないよう流局前に手を崩してノーテンにする打ち手もいると思います。

 しかし、親のノーテンは流局するまで分かりません。少しでも点差を縮めようという河野プロの聴牌取りは少しもおかしくありません。

 結果的に親がノーテンだったら自身は聴牌しているので、私ならば今回のように手牌通り手を開けたいです。

 河野プロが相談などせずに手を開けていたら全く問題ありませんでした。また、私ならばしませんが、手を伏せても対局者の自由な判断だと納得していました。

 河野プロは勝負強さに定評のある打ち手です。あがれませんでしたが決勝の南2局に親でリーチした「345」の三色の手はとても迫力がありました。

 令昭位戦などを観戦していて、その打ち筋が大好きなので今回の対応は残念でなりません。手を開けるまでの過程にはどうしても後味の悪さが残りました。

 ◎奈良プロの聴牌申告ミスが伏線に

 このノーテン・聴牌に関しては伏線があります。東3局で奈良プロが起こしたミスです。

 奈良プロは東2局1本場に北家で跳満をツモあがりしてトップ目でした。流局した東3局でも渋川プロとともにしっかりと聴牌していました。

 ところが、奈良プロはまさかのミスで手を開けたつもりが伏せてしまいました。裁定の結果、ノーテン扱いとなり、1500点の聴牌料が入るはずが、渋川プロに1000点支払うことになりました。

 本来よりも渋川プロとの点差が4000点縮められてしまいました。

 「たられば」になりますがこのミスがなければオーラスの聴牌・ノーテンの残酷な選択は生じず、奈良プロの優勝だったかもしれません。

 

 


 



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