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「魔神」悲願の雀王戴冠

 「魔神」が悲願の雀王の座に就きました。日本プロ麻雀協会の渋川難波プロです。雀王決定戦で連覇を目指していた矢島亨プロ、麻雀最強戦などで活躍している仲林圭プロ、爆発力が売りの小川裕之プロの強豪3人を破り、雀王を初めて戴冠。勝負どころで「魔神」らしい冷静・的確な判断を見せ、総合トップの座を守り切った見事な優勝でした。これまで雀竜位と日本オープンで優勝しており、雀王の獲得で矢島プロに続き、協会2人目のグランドスラム達成となりました。

 渋川プロは場況読みに優れ、その鋭さから「魔神」の愛称で知られる人気プロ雀士です。Мリーグの公式解説者としても活躍し、分かりやすい語りが好評です。

 渋川プロは今季のA1リーグで順調にポイントを獲得して雀王決定戦に進出。4日間・20回戦で行われる決定戦でも好調を維持し、3日目・15回戦を終えた時点では2位以下を引き離して総合トップでした。最終日の残り5試合を迎えた時点での総合ポイントは次の通りです。

 ①渋川+212.8②仲林+117.5③矢島-117.1④小川-214.2

 1位の渋川プロと2位の仲林プロの差は95.3ポイントです。しかし、仲林プロが16~18回戦で猛追。残り2試合を迎えた時点での総合ポイントは次の通りです。

 ①渋川+160.1②仲林+149.7③矢島-108.0④小川-202.8

 1位の渋川プロと2位の仲林プロの差は10.4ポイントまで縮まりました。19回戦が勝負どころです。

 19回戦は仲林プロ、小川プロ、矢島プロ、渋川プロの並び順。東1局は流局、東2局に渋川プロが1300、2600をあがって迎えた東3局。雀王の行方を決める一局となりました。

 持ち点は南家・渋川32000、東家・矢島25100、西家・仲林22100、北家・小川20800です。

 渋川プロにはピンフを軸に手作りできるまずまずの配牌が入りました。

渋1

 順調にツモが伸び、4索をツモった6巡目の手牌です。

渋2

 ここから2索を切り、「234」の三色を狙わず、待ちの広いイーシャンテンに取ります。

渋3

 トップ目なので手役にこだわらず、聴牌スピードの速さ、あがりやすさを優先した「魔神」らしい冷静な判断です。

 そして9巡目に6索をツモって7索を切り、1筒・4筒待ちのピンフの手で聴牌します。

渋4

 渋川プロはリーチの選択もありましたが、親の矢島プロが筒子の一色手を進めていることから筒子の危険牌をツモってきたときに備え、慎重に黙聴に構えました。これが絶妙でした。

 10巡目に矢島プロが暗刻の白を明槓しました。槓ドラは5萬です。渋川プロは明槓で裏ドラが1枚増えたことから、11巡目に裏ドラが乗るのを期待し、1筒・4筒待ちでリーチします。勝負を懸けた一打です。

 一方、矢島プロも14巡目に西単騎待ちで聴牌。ホンイツ・白の9600点の手です。

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 仲林プロも槓ドラの5萬を2枚持ち、大物手のイーシャンテンでした。

仲1

 タンヤオ・ピンフ・高めイーペーコー・ドラ3の満貫確定、高め跳満の手です。しかし、あと1牌が入りません。

 仲林プロは結局、聴牌できず、矢島プロとのめくり合いに勝ったのは渋川プロでした。矢島プロが16巡目に1筒をツモ切り、渋川プロに放銃。

渋4

 槓ドラの裏ドラが9索で2枚乗り、リーチ・ピンフ・裏ドラ2の8000点のあがりとなりました。もし、渋川プロが聴牌即リーチしていたら、矢島プロは渋川プロの打点を上げる可能性があるため、ドラを増やす明槓はしなかったと思います。その場合、槓ドラの裏ドラはなく、渋川プロの手が満貫に化けることはありませんでした。

 リーチのタイミング一つで大きく状況の変わるところに麻雀の面白さがあります。即リーチせず、明槓が出たら裏ドラ期待でリーチするという的確な決断をした渋川プロの手順が光る一局でした。

 このあがりで持ち点は持ち点は渋川40000、仲林22100、小川20800、矢島17100となりました。渋川プロが仲林プロに17900点差をつけ、圧倒的に優位となりました。

 それでも仲林プロは粘ります。南3局を迎え、持ち点は渋川34300、小川29900、仲林24400、矢島17100で渋川プロと9900点差に縮めました。しかし、渋川プロにここで決定打が出ます。渋川プロの配牌です。

渋5

 「345」の三色が狙える手です。ここからツモが効き、5巡目に三色確定のカンチャンの4萬待ちで聴牌します。渋川プロは黙聴に構えました。

渋6

  すると仲林プロが6巡目に4萬を放銃。当面のライバルを振り切る三色・ドラ1の5200点の直撃は大きく、渋川プロが雀王をぐっと手繰り寄せたあがりとなりました。

 渋川プロは最終の20回戦も安定した闘牌で逃げ切りました。Мリーグの解説ではとても人気を集めていますが、いつか打ち手としてぜひ、その晴れの舞台に立ってほしいです。

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