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打ち筋で選択の分かれる手牌

 第19回女流モンド杯予選第7戦で打ち筋によって選択の分かれる興味深い手牌がありました。

 東1局で東家・清水香織プロ、南家・和久津晶プロ、西家・池沢麻奈美プロ、北家・茅森早香プロの並び順。持ち点はいずれも25000点です。

 池沢プロの6巡目の手牌です。開局早々、絶好の手が入りました。過去2戦続けてノー和了だったこともあり、どうしてもあがりたいところです。

池沢手牌

 池沢プロは8萬切りを選択しました。次のように「567」の三色を固定した形に構え、あがりを目指した一打です。

池沢手牌2

 次巡に池沢プロは8索をツモり、4索を切って聴牌。狙いの三色は崩れましたが1筒・4筒待ちでリーチしました。

池沢プロ3

 4筒であがればリーチ・タンヤオ・ピンフ・ドラ1の満貫ですが、1筒では裏ドラが乗らないと、リーチ・ピンフ・ドラ1の3900点止まりの手です。

 解説の望月雅継プロはこの安目の1筒あがりが嫌だとして、6巡目の池沢プロの手牌ならば2筒切りを選択すると述べていました。ドラの5萬がもう1枚入ったときにも対応できるよう萬子の連続形には手をかけず、8萬は切らないそうです。その場合、この手牌になります。

望月手牌1

 ゲスト解説の黒沢咲プロもタンヤオを確定させたいとして、2筒切りを支持していました。望月プロ、黒沢プロの選択した通りに進めると、7巡目に8索をツモって3筒を切り、次の手牌となります。

望月手牌2

 池沢プロの選択ではここで聴牌していますが、こちらはイーシャンテンです。ただ、少なくとも満貫を見込める破壊力のある形です。そして次巡にドラの5萬ツモり、次のように聴牌となります。5索を切って3索・6索・9索の3面待ちリーチをすれば、リーチ・ピンフ・ドラ2の満貫確定手で、タンヤオのつく3索・6索をツモれば、リーチ・タンヤオ・ピンフ・ツモ・ドラ2の跳満になります。

望月手牌3

 この異なる選択は打ち筋の違いだと思います。望月プロは三色が得意で高い手をしっかりと仕上げるのが特徴です。黒沢プロも門前を貫き、大物手をあがる「セレブ打法」で知られています。いずれも高打点を売りにしているので6巡目の手牌では2筒を選ぶのだと思います。

 一方、池沢プロは手数が多く、確実にあがりをものにして点数を積み重ねるのが巧みな打ち手です。三色の形を一端決められることや聴牌速度、端牌で比較的あがりやすい1筒待ちも残すことを考えた上での8萬切りだったと推察します。

 池沢プロは14巡目に高めの4筒をツモり、裏ドラが6索で1枚乗り、リーチ・タンヤオ・ピンフ・ツモ・ドラ1・裏ドラ1の3000、6000の跳満をあがりました。8萬切りの選択が最高の結果となりました。このリードを生かし、この試合をトップで終了しました。

池沢手牌4

  もし、6巡目に2筒を切っていたらこの時点では聴牌のままでした。ただ、その後にあがっていたかもしれません。この一局を見ていて、あらためて対局者の打ち筋によって打牌の選択が分かれるところに麻雀の魅力があると感じました。

 余談ですが、この試合の望月プロと黒沢プロのやり取りはとても面白くて良かったです。

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