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ゆーみんの踏み込みは正しかったのか

 「ゆーみん」の愛称で親しまれているセガサミーフェニックスの魚谷侑未プロ。王位や日本オープン、モンド王座、女流桜花などさまざまなタイトルを獲得し、Мリーグ2019MVPにも輝いた麻雀界のトッププロです。勝負どころでの鋭く踏み込んだ攻めの打ち筋で多くの勝利をものにしてきました。

 Мリーグ2021でセガサミーフェニックスは下位に低迷しています。魚谷プロは2021年11月11日(木)の第2試合で巻き返しを目指して戦いましたが、踏み込んだ攻めはことごとく裏目になり、ラスで対局を終えました。チームのポイントを増やそうという強い思いのためか、やや気負いすぎとみられる場面もありました。その試合を振り返ります。

 セガサミーフェニックスの魚谷侑未プロ、TEAM雷電の本田朋広プロ、EX風林火山の二階堂亜樹プロ、KADOKAWAサクラナイツの沢崎誠プロの並び順。

 東1局で魚谷プロはタンヤオ・ピンプ・高め三色・赤ドラの絶好手を聴牌しましたが、本田プロのリーチに一発で振り込み、8000点を放銃しました。

 最悪のスタートでしたが続く東2局で北家の魚谷プロにまずまずの配牌が入ります。ドラは北です。

魚谷プロ手牌

 4索ツモ・中切り、1萬ツモ切り、2萬ツモ・8筒切り、4索ツモ・1筒切り、7萬ツモ・2萬切り、2萬ツモ切りと進み、3萬をツモり、西を切って、次の手牌のように目いっぱいに構えます。

魚谷プロ手牌2

  満貫を放銃した直後で点数を取り返したいところです。しかし、手牌がブクブク過ぎて安全牌を持たないのは危険なようにも思えました。南家の亜樹プロが白を鳴いており、あがりが早そうな状況です。

 ここから魚谷プロは9筒をツモり、亜樹プロの安全牌8萬を切って一端受けに回ります。それでもツモが伸び、タンヤオ・チートイツやタンヤオ・三暗刻の狙えるイーシャンテンとなりました。

魚谷プロ手牌3

 この直後に亜樹プロが安全牌の發を手出しで切ります。聴牌気配が濃厚です。捨て牌には筒子が1枚もなく、筒子の一色手にも見えます。魚谷プロは初牌の東をツモります。ここで「店じまい」するものとみていましたが東を勝負してツモ切りました。思い切った踏み込みです。

 東を切られた後、亜樹プロからさらに6筒の手出しがありました。両面待ちへの手変わりの可能性があり、5筒や8筒はかなりの危険牌です。実際、亜樹プロは6筒とドラの北のシャンポン待ちから7筒をツモり、5筒・8筒待ちに変えていました。 

魚替

 亜樹プロが待ちを変えた後、魚谷プロは8筒をツモ切りし、白・ドラ2の3900点を放銃しました。亜樹プロの手が安いと読んで、危険牌を勝負し続けたように思います。けれども、この振り込みは防げることができたので、避けてほしかったです。連続放銃で次局以降、厳しい手作りを強いられることになりました。

 これまで魚谷プロが勝負手でのやむを得ない放銃後、懸命な手作りで逆転し、トップを飾る対局を何度も見てきました。そういうとき、魚谷プロは序盤では辛抱して我慢を重ね、無理な打牌はしません。不要な失点をできる限り避け、中盤以降にチャンスが来たら思い切って攻めに踏み込んでいます。この一局では、いつもの魚谷プロとは違ったあがりへのあせりのようなものを感じました。

 東4局で魚谷プロは沢崎プロの変則2索・3索待ちのリーチ・白の手に一発で2索を切り、9600点を放銃しました。6巡目の早いリーチで沢崎プロの捨て牌は1打目から9索、9萬、西、發、8筒、9筒。魚谷プロは次の手牌でした。

魚谷プロ手牌4

 全く安全牌はなく、振り込みを避けられるかはまさに指運です。この日の魚谷プロはツキに見放されていたと思います。

 それでもここから頑張るのが魚谷プロの真骨頂です。南2局でペンチャンの3索待ちを一発でツモり、2000・4000の満貫をあがり、逆襲の狼煙をあげました。

 続く南3局。持ち点は南家の沢崎プロ42600、北家の本田プロ26200、東家の亜樹プロ20400、西家の魚谷プロ10800です。魚谷プロにはなかなかの配牌が入りました。ドラは4萬です。

魚谷プロ手牌5

  魚谷プロは親の亜樹プロが第1打で切った北をポンし、1索を切って萬子の一色手を軸にしました。「あれ」という感じを受けました。

 「最速マーメイド」という名で麻雀プロとして人気の出始めたころの魚谷プロはこのような早い仕掛けが目立ちました。しかし、タイトルを獲得するようになってからは鳴き仕掛けはあるものの、じっくりとした重厚な手作りで高い手をあがり、勝利を飾ることが増えています。

 だからこそ自風の西とドラ、赤ドラをそれぞれ1枚抱えているので、自風ではない北を1枚目から仕掛けるとは思いも寄りませんでした。「チームのため早く満貫をあがりたい」という切実な声が聞こえてくるようでした。

 この一局では、亜樹プロから早い段階で6索、9索待ちのリーチが入ります。魚谷プロが北を槓して、ドラの4萬が槓ドラにもなったのでリーチ・ピンフ・ドラ2の12000点の手です。

亜樹プロ手牌2

  一方、魚谷プロは萬子一色の満貫手のイーシャンテン。 

魚替2

 魚谷プロは6索ツモり、長考します。亜樹プロへの安全牌はなく、6索をそのままツモ切り、親満を放銃しました。この日の魚谷プロはつくづくツイてなかったです。ただ、「たられば」になりますが、もし北を1鳴きしていなかったらどういう展開になっていたのか興味深いところです。

 セガーサミーフェニックスには、魚谷プロをはじめ、近藤誠一プロ、茅森早香プロ、東城りおプロの実力者がそろっています。Мリーグでの巻き返しを期待しています。

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