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#ディレクター談義 を振り返り、Webディレクターのキャリアパスとスキルセットを考える

3/23(月)の夜、サービシンクの名村さんと #ディレクター談義 なるものを行いました。経緯はさておき、ポッドキャストでも配信したのでぜひお聞きください。

お話した時の内容として、いくつかポイントとなりそうな所をまとめてみます。(今回めっちゃ長いです)

現実的に「業界歴3年未満でWebディレクターは大変」の理由

ちゃんれみさん@LIGの殿堂記事「Webディレクターとは? LIGのWebディレクターのお仕事についてお話しします」の中でも「LIGのディレクターの業務範囲」として書かれていますが、「デザイナーやエンジニアが行う制作業務以外のだいたい全部」というのは名村さんとのお話でも、現職ディレクターでも、Webのお仕事をされる人は概ねアグリーかと思う。

事実、ディレクターの成果物は、デザイン、コーディング、プログラムデータといった納品物よりもプロジェクトでの円滑なコミュニケーションや意思疎通を図るための無形物や中間成果物という、極論すれば「なくて済むに越したことはない」物が多い。

制作サイドの実装知識はもちろん、クライアントのビジネスへの理解も必要。そしてディレクターは両者の認識を相違無くつなぎ合わせてプロジェクトを前に進ませる役割があり、そのため多くのビジネススキルが必要となる。
雑然とした情報を構造化する力。
ヒアリングやディスカッションを通じて潜在的な課題を引き出す力。
ビジネスフレームワークや図解を駆使し「なるほど」に腹落ちさせるプレゼンテーション力。
常に正解は無く「こうすれば良い(はず!)」の仮説を立て行動し、微調整し最適解を探る。もうほんと地味MAX泥臭い!!

そう考えると、完全に自分の経験則からで書いてますが、新卒半年〜1年ちょっとで「ディレクターになります!」というのは、正直おすすめできない。

だってさ、コミュニケーション対象は現場N年のデザイナーやエンジニア、そして業界歴N年のクライアント担当者といったビジネス猛獣サーカスなので、そんな現場を立ち回れるのは天才か奇跡かマンガの世界だけの話で、少なくとも3年以上かかるのは厳しいけれど現実ではないだろうか。

習得の話で言われる「1,000時間の法則」「10,000時間の法則」を現実にするとこんな感じ。普通にやっても3年はかかるんやって。

「すぐに使える単体スキル」ではなく、本質的なスキルセットとしてBTCモデルで考える

では、「いきなりディレクターは無理」として、地に足ついたディレクターになるための「3年」をどう生きるか。
そこで、 #ディレクター談義 でも取り上げた「BTCモデル」が明快で使いやすいと思っている。

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参考:第四次産業革命とデザインの役割@産業競争力とデザインを考える研究会 2017.10.12【PDF】

図が示すものは、ビジネス(B)、テクノロジー(T)、クリエイティビティ(C)各領域の能力を備え、バランスを取りながら具体的な施策へ結びつけることができる人材がこれからのビジネスに求められるよねー、というもの。

Cを軸に例えると、単体では表層的なデザインとして「クラシカルデザイン」と呼び、B領域と結びつけることで「デザインシンキング」といったサービスデザインやUXデザインといった戦略的なデザイン領域となる。
また、CとTを結びつけると「デザインエンジニア」といった方向となり、デザインからプログラムまで行うマルチプライヤーといった具合。

2017年にTakramの田川さんが提唱した(違ってたらすみません)このモデルは、デザイン経営宣言での人材モデルの土台にもなり、後に出版された書籍にも記されているのでぜひ読んでみてほしい。めっちゃ面白いから。

なぜBTCモデルを取り上げたのか、というと「WebディレクターはBTCの全領域をバランス良く持つ必要がある」に他ならない。
Bはそのままクライアントやビジネス・マーケティングの知識、TはWebやWebサービスや実装といった技術知識、Cは設計・デザインの知識。だいたい無いと困るものばっかり。

これらを踏まえ、仮に現場デザイナーからディレクターへのキャリアパスを考えるのであれば、まず主戦場であるC領域からはじまり、実装する上で欠かせないT領域へ知識と経験を広げていく。
そして並行して少しずつクライアントとのコミュニケーション量を増やし、B領域を強化し、徐々に全領域をカバーしていく。というキャリアパス。

ただ、これは現実的に考えて半年や1年でどうこうできる話ではなく、諦めず地道にこつこつ積み上げてようやく結果が出る(かもね)な話で、「いますぐできる!」「明日から使える!」なTipsの話ではない。
名村さんとの話の中にも出たが、割とこれが厳しい現実を物語っていると思う。

ディレクターに求められるスキルは幅広い。
特に新卒で社会に出ていきなり「ビジネスの話を理解しろ!」というのはかなり難しい。言い方が悪いが3年は使い物にならない事が多く、それでも幅広く少しずつ修練を積み重ね、求められるスキルが全体的に「60点」を超えたあたりから急に「デキる人」になる。

書籍にも書かれていたWebディレクターに求められるスキルセット

2020年3月17日発刊の書籍「Webディレクションの新・標準ルール 改訂第2版」に、Webディレクターに求めらるスキルセットが記されていた。タイムリー過ぎる。
書籍も非常に本質的な内容が書かれているのでおすすめ。

あまり多く書くと書籍ネタバレになってしまうのと、正直なところ項目を見て「なるほど」と理解できる人はすでに実践者だと思うので書いちゃって良いでしょう。

事業会社のディレクターに求められる「望ましいスキル」
・企画力
・統計解析スキル
・広報についての知識
・法務の知識
・経営についての知識
・広告についての知識
・ライティングスキル
・予算管理の知識
・MAツールの知識
・その業種についての知識

制作会社のディレクターに求められる「望ましいスキル」
・スケジュール管理能力
・リサーチ能力
・プログラミングスキル
・デザインスキル
・音声/動画編集スキル
・マークアップスキル
・SaaSの知識

両者で「必須のスキル」
・アクセス解析スキル
・課題抽出力
・企画力
・プレゼン能力
・ドキュメント作成スキル
・チームビルディング能力
・リーダーシップ
・チームマネジメント能力
・SEOの知識

もちろん、ここに書かれていないが必要なスキルは他にもある(見積力とか)。また、よく言われる「コミュニケーション力」が無いのは、おそらく抽象度が高すぎて身についたかどうかが図りにくいからだと思う。
この内容は現場や案件の種類によって変化するだろうが、概ね書かれている通りかと思うので「何を学べば良いかわからない…。」という人は参考にすると良いかと。
※ただ、書かれている一つ一つが「スキルセット」みたいなものなので、具体的にしていくと結構大変な事に気づく。

必須とされる中で個人的に最重要だと思ったのは「ドキュメント作成スキル」

上記「必須のスキル」の中からBTCを総合的に求められるWebディレクターにとって、個人的に優先度高めにすると良さそうだと思ったのは「ドキュメント作成スキル」
クライアントと現場を結びつける事や、場合によってクライアント自身のお困り事を解決する事もできるので、しっかりできるとあらゆる場面で重宝されます。仕事増えますが。
ただ、先述のとおり「ドキュメント作成スキル」も単独的なスキルではなくスキルセットと言え、個人的にはこんな内容で構成されると考えています。

・適切に情報を伝える語彙力
・メールや報告書の可読性を上げる構成力
・専門用語を適切に伝える翻訳力
・表や色や線を工夫し時系列を加え伝える図解力
・ビジネスやマーケティングで用いられるフレームワークの理解
・議事録や報告書といった一般的なビジネス書式の理解
他者と自己の理解が一致する事はほぼ無いという冷めた大前提

書いてみたものの、まぁまぁこれも抽象的ですみません。

Webディレクターを目指す方、現職で奮闘する親愛なるみなさまへ

やることは文字通り山のようにあります。さらに普通の山と違うのは、登ってる最中に大きくなっていくということ。わんこそばか。
ですが、それはどの山を選ぼうが同じ事でもあります。
そして山である以上、絶対的なのは「どの道を通っても登っていけば必ず頂上に近づく」こと。ただし本当の頂上は無いと思って諦めましょう。

私自身まだまだ中腹であるものの、それでも13年上ってきた甲斐もあり、素晴らしいチームメンバーやクライアントと毎日楽しくお仕事させていただいています。そりゃ大変な事も多々ありますが、悲観するような場面はありません。

見たことのない景色はあちこちに存在します。道のりは長いです。焦らず気長に地道に諦めずに登り続けましょう。

長文失礼いたしました!
現場からは以上です。

最近はTwitter中心に動いています。主にWeb制作や日々触れる情報などから気付きをつぶやいているので、ご興味ありましたらぜひフォローください。