【ネット歯科大】歯の生え変わりが可能になれば
ヒトの歯は、乳歯から永久歯に、一度だけ生え変わります。だいたい小学校1年生くらいに下の前歯の乳歯が抜け、そのあとからいわゆる大人の歯、永久歯が生えてきます。
ちなみに、サメの歯は何度も生え変わることが知られています。ヒトとは違いますね。
さて、ヒトの永久歯はそれ以上生え変わることはないので、大事にしないといけません。
もし永久歯が抜けた後にさらに歯が生えるとしたら、どうなるでしょうか。
まず、一生自分の歯でかむことができるようになります。
現在では入れ歯やインプラントなどで歯の欠損を補っていますが、それが必要なくなります。
入れ歯と自分の歯との違いが大きいことは明らかですが、インプラントも歯とは異なります。
インプラントと歯との大きな違いとして、歯根膜(しこんまく)という部分の有無が挙げられます。
歯根膜とは、歯を支える骨と歯との間にある、薄い層状のやわらかい組織です。歯根膜には歯の硬組織成分を添加する細胞や骨をつくる細胞、さらには血管や神経などが張り巡らされています。
歯根膜があることによって、歯でものをかむときに「かんでいる」という感覚が得られます。食感、かみごたえがいいと感じられるのも、歯根膜のおかげです。
また、たとえば非常に硬いものをかんでしまった場合、口が開くように反射が起こります。これも歯根膜に神経のネットワークがあるおかげです。これにより、あまりに硬いものを強くかまないよう、防御機構が備わっています。
インプラントには歯根膜がないので、そのような感覚や防御のための反応は得られないことになります。
永久歯の次の歯が生えてくる場合の利点として、重度のむし歯や歯周病のためになんとか残しているような歯をきちんと抜歯して、次の歯が生えてくるのを待つことができます。
現在、永久歯の次の歯を生やすための研究が進められています。
歯とは不思議なもので、ちょうどいい位置に、ちょうどいい向きで、ちょうどいい高さまで生えたら止まります。そしてかみ合わせの歯と接触することで、うまく機能しています。
このように適切な状態となるようコントロールしながら新しい歯を生やす技術というのはたいへん難しいものです。
新技術に期待しつつ、現状としては永久歯を長持ちさせられるようにケアすることが大切だといえます。
神奈川歯科大学 青山典生
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