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梅雨前の水

梅雨の近づきを知らせる雨がひとしきり降り、止んだ。

後は梅雨までお預けだ!と言わんばかりに、止んだ。

雨の後のなんとも言えぬ静けさに耳を傾ける僕。

蒸し暑さが我慢できず、半袖の袖を肩上まで捲り上げなんとか暮らす夜。

汗として流れ出た水分を補給するために水を飲む。

ゴウゴウと慌ただしく音を立てている冷蔵庫の中から、
大きめのペットボトルに入った水を取り出す。

その水をコップに注ぐ。

コップに収まった水と、少しこぼれた水。

飲んでもらえる瞬間を今か今かと楽しそうな表情で待っている水。

何もできないと悲しげな表情をこちらに向ける水。

仲間と共に騒がしく盛り上がっている水。

集団から除外され焦りと寂しさの混じった表情をこちらに向ける水。

僕は一粒の水を見つめた。

まるで僕のようだった。

いつまでも蒸発せずにそこにいて欲しいと思った。

蒸し暑さをまた嫌った。

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