野々村真くんの生き様に思いを馳せる 〜奇跡の真(まこと)〜

野々村真くんのことをたまに考えてしまう。

先日職場で若い人に聞いたら「世界!ふしぎ発見」自体を知らなかった。当然、野々村真くんのことも、知らなかった。

ブラウン管のテレビを見て育った昭和生まれの自分にとって、「世界!ふしぎ発見」は、わくわくしながら土曜日を待ち焦がれるほどの偉大な番組だった。海外に憧れを持つもインターネットもなく、旅番組も今ほどはなかったので、「世界!ふしぎ発見」の存在感はかなりのものだった。家族で見ても気まずくならず、教育にも良さそうだと両親も思っていたような気配がただよっていたし、子供心に番組自体が面白かった。真剣にクイズを当てたかったし、誰がパーフェクトになるのかハラハラしながら見ていた。似顔絵にしづらそうな草野仁氏の顔を模した、赤いスーパーひとしくんが落ちていく様子に思わず歯ぎしりをし、取り戻そうとする中尾ミエの様子は、今も鮮烈な記憶として残っている。


なかなか簡単に行ける場所ではなかった海外の映像を見られる機会は非常に限られていたのである。

松竹芸能所属であったにもかかわらずM-1チャンピオンという偉大な経歴をもとに活躍する、ますだおかだの岡田さんの堂々たるスベリ芸と、お腹から声を出してゲストに突っ込む姿が見られるようになったこと、3択の問題が含まれるようになったこと以外は、今も、自分が小学生だった頃とほとんど変わらないフォーマットで放送されている「世界!ふしぎ発見」だが、数年前、野々村真くんがほとんど画面上にうつらない時期があった。少し尖ったお笑い芸人がゲストの時に、あからさまに野々村真くんの発言をつまらないと思い、真っ向から小馬鹿にしているような雰囲気がただよっていて、見ていて痛々しい時期もあった。野々村くんが尖った若手にみくびられる姿が、自分の残念な職場での経験を思い起こさせ、見ているのが辛いとまで感じたほどだった。

しかしそのときの尖った芸人は、とんと見なくなったが、野々村真くんは、今も毎週、出演している。少し困った顔をして。彼はきっと大金持ちなのだ(よく知らんけど)。少し困った顔をして。黒柳徹子さんよりもおバカで、でも黒柳さんが永遠のライバルだという役回りを受け入れて。

彼の目はやさしい。でも、目の奥は光る。あの番組において、代替不可能な、まことくん。

私はまだ人生で野々村真くんを「推し」だと言っている人に会ったことがない。

推されない。ひかれない。何も足さない。何も引かない。まことくんはずっとあのままだ。少し困った顔をして。眉が少し下がっている。

私は野々村真くんは、霊長類ならぬ、芸能界で最強だと思っている。彼があのポジションを築くことができたのは、天文学的な確率だと思う。一見そうは見えないが。

徹子さんの厳しい眼差しにも半笑いで立ち向かう、まことくん。いつまでたっても「くん」づけだ。きっと十分、中年だ。

彼が他の芸能人と比べて優れているところはどこなんだろう。

優れているから凄いのか。

面白いから凄いのか。

野々村真くんの価値を思う。まことくんが大金持ちであることを思う。それはスペック至上主義に毒された2022年の日本、そして世界に対する挑戦だ。そんなに凄くはなくても「居場所」を作ったものが勝っていた、牧歌的な、終身雇用が当たり前のものだった、同じ番組を家族全員が見ていた、海外旅行が夢だった、JTBが輝いていた、日立製作所がゆるぎない存在だった、そんな過ぎ去りし時代が、あの番組の中ではまだ存在している。

凄くなくてもいい、面白くなくてもいい、君はそのままでいいと、まことくんが教えてくれているのかもしれない。





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ねすぎ
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