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【ドリームコミッション】額装を頼むとこのような感じで進むというレポートその2

さて、続きです。

 「華やかな感じ」という事で飾り入の棹を選択し視覚的にも華やかさを感じられるようにしました。仕上げは色というよりは優しい金を目指します。

オレンジは金色の黄色の要素を補完して発色を良くしてくれるけれども重くならないという判断ですね。

一般的な金のフレームの下色は赤〜茶が多いですが、この作品に対しては少し重さを感じてしまうのでオレンジに。鮮やかではなく落ち着いたオレンジにする事で過度に華やかにならないようにします

金のペイントをしました。ベタッと塗らずに金箔が擦れたような印象にし、少しばかりの高級感を出します。作品に描かれた女性からは「品」を感じられるので釣り合いがとれるような仕上がりを。金だけだと若干物足りないので、真ん中の平らな部分に薄く銀を足し古びを入れ、作品に寄り添いつつも額縁としての落ち着き与えます。

フレームの仕上げは一旦終了で、次は余白となるマットを作成していきます。

実はこの作品に以前貼ってあったであろうテープの粘着のようなものがついています。さてこれをどうするか。

仮に一般的なマットのような直線で粘着跡を隠そうとするとこういう見え方になり、

多少粘着跡が見えても少し上にずらすと女性の肘が見えてきます。

「肘の有無」で見え方が変わります。

前者だとどこまでも腕が伸びている人間らしからぬ違和感を覚えてしまいますが、後者であれば作品に不自然さを感じません。

作品に何らかのダメージがあった場合、そこを隠すか見せるかその都度条件が変わるので唯一の正解というものはありませんが、構図が変わって作品の良さも変わってしまう場合はよくよく検討しないといけません。

作家さんが後々額装する可能性意識して作品制作をされていない場合もあります。購入された方の作品管理に対する認識が不十分な時もあります。

その作品が出来上がる背景にも様々ありますのであくまでも願望としてのお話ですが、スムーズに額装出来ると嬉しい。

で、今回はどうするか。

肘が見えると自然さが出ますね

天地だけウネウネマットにしてみました。ギリギリ肘を出しつつ粘着跡を隠す。たまたまうまくいきましたが、これはかなり難しいパターンだったと思います。

ウネウネ部分はフリーハンドでくり抜いたので多少アラがあります。 なのでペーパーがけして形を整えました。 で、ペーパーをかけたままだと今度は「製作中」な印象が拭えないので色を塗って仕上げでいきます。 ちなみに色を塗る理由はもう一点あります。

こだわり加工

実は紙に拘ったというこの作品(紙の種類が記入されています)、ツルっとした紙のマットに入れてしまうと紙と紙で違いがよく分からなくなってしまうし、布のマットにすると見た目が重くなり過ぎてしまいます。 マットに色をつけた理由は、作品との質感に変化を与えながら少し高級感や落ち着きを出したかったからなのです。

窓から覗いてしまったような雰囲気が・・・

白ではなくベージュのようなグレーのような、青が綺麗に見えてくる色に。 外側が少し高くなっているのは折角塗ったマットがアクリルに押し付けられないようにする為と、ほんの少しでも奥行きを出す事で作品から感じる「届きそうで届かない距離の女性」を演出する為です。

アクリル無しの状態ですが、合わせるとこんな具合です。フレーム等に手直しがあればこの段階で手を入れます。今回は少し古びが強かったので調整をしてあとはアクリルをセットして終了です。

一目惚れの一枚

問題作品と言って良いのか、この女性の佇まい・状況・セリフどれを取っても力があります。マットは一枚ではなく二段にして見た目の強さでバランスをとろうと思います。

一段目と二段目のマットの厚みを変えて「一筋縄ではいかない感じ」を演出します。フレームは丸みもありつつ幅を感じるこの棹に下地を厚めにまわしてより柔らかく、色気も出せるようにしていきます。

こういった全部白の組み合わせも中々好きですが、マットは白系、フレームは黒で制作しようと思います。

マットは塗りを繰り返しマチエールをつけ、先端にほんの僅かな金を指しチラリズムのようなセクシーさも出します。左が今回のマットで右は既製の紙マット。手塗りでも紙のように出来るもんですね。

マットに色を塗った理由は二枚重ねのマットの継ぎ目を分からなくしたかったからと、僅かにグリーンがかった色にしたかったから。女性の髪の毛のグリーンが浮きすぎないように周りにもグリーンを感じさせます。ただし、露骨なグリーンではいけません。

フレームには瑪瑙の石で磨くとツヤが出る特殊な塗料を何度も重ね、実際に磨きも入れていきます。ラッカー塗料のようなツヤ感ではありますが、幾らか艶めかしさを感じるツヤ加減です。

磨き終えたらこちらも先端に金を。黒だけだと面白さがなくなってしまうのと絵画の額装としてバランスがとれるような形にしたいという事が理由でしょうか。金も塗り加減を調整しビカビカになりすぎないようにします。

フレームに古びも足してマットに合わせた所。 フレームの何とも言えない丸みと歪みが色気を感じさせます。

セリフ強すぎます。ですよね。

こちらのマットにも奥行きが出るような細工(アクリルと作品までの距離を離す)をしました。マット同様の塗りをしてあります。

セリフ強すぎます。

中村先生の魅力である湿気を感じさせる額が作品の妖美さを引き立てます。

作品、マット、フレームを合わせてみて調整が必要な所を探します。狙い通り進んだお陰でほぼ調整なしです。あとはアクリルをセットして完成です。

と、素晴らしい知識と理解と経験で額装していただいたのでした。
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