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レアンドロ・ダミアンに恋して1年。初めて分かった「個サポの楽しさ」。【川崎フロンターレ】

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熱狂的な川崎フロンターレサポーターが集まるGゾーンに、ひときわ目立つ幕がある。制作者であるKYOHEI・JUNPEI兄弟は、週に1回ペースで練習場に通う熱烈なレアンドロ・ダミアンファン。これまで「チーム」を愛していた彼らが、ダミアンの「個サポ」を兼ねて気づいた、新たなサッカーの楽しみ方とは。

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【プロフィール】KYOHEI(弟・写真左)。JUNPEI(兄・写真右)。小学生時代から試合に通いつめる川崎フロンターレサポーター。現在は『TAMAGAWABOYS』というグループの一員として応援を後押ししている。KYOHEIのTwitterアカウントはこちら。 JUNPEIのTwitterアカウントはこちら。


「選手のファン」ではなかった。


取材班:お二人はずーっと昔から川崎フロンターレを応援しているんですか?

KYOHEI:小学校1.2年生の頃に地元の少年団でチケットをもらって、みんなで見に行ったのがきっかけです。それからはスタジアムに通い続けて、小学校高学年になる頃にはもう、完全にフロンターレが生活の一部になっていました。

取材班:初めて見てから、もう一気に好きになっていったんですね。

JUNPEI:やっぱり当時はサッカー選手になりたかったので、憧れの選手たちを身近で見れたり感じられたりする環境に惹かれました。

KYOHEI:最初は、試合後の出待ちでサインをもらうのが楽しくて行ってました。選手に触れ合えるとか、サイン貰えるとか、選手とサポーターの距離が近くて、フロンターレっていいチームだなと思って。

取材班:それから年月が経ち、現在は中心部で応援しているんですね。

KYOHEI:はい。基本、応援の中心であるGゾーンにいます。『TAMAGAWABOYS』っていうグループを結成して、ブラジル国旗を配ったり、弾幕を作ったり、15人ほどで色々やってます。

取材班:現在お二人はレアンドロ・ダミアン選手を熱烈に応援することで有名かと思うのですが、昔から「1人の選手を熱烈に応援する」スタイルだったのでしょうか?

KYOHEI:僕が最初に惹かれたのは我那覇(和樹)でした。でも、選手一人をめっちゃ好きになった経験は我那覇だけで、2008年に退団して以降はフロンターレ全体を応援する方向にシフトしました。

特定の選手を好きになったのは、ダミアンが本当に久しぶりだったんです。

取材班:ダミアン選手がKYOHEIさんをそうさせた理由、すごく気になります。


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春の麻生G。初対面でひとめぼれ。


取材班:そもそもKYOHEIさんは、加入前からダミアン選手のことを知っていたんですが?

KYOHEI:いや、全く知らなかったです。加入のリリースを見て「すげえの来た」みたいなツイートをするレベルで(笑)。フロンターレに大型ストライカーが来ること自体嬉しかったので、チームとしての期待は高まってましたけど。

取材班:それまで全く知らなかったダミアン選手に、どうハマっていったんですか?

KYOHEI:毎シーズン、開幕戦の前に兄と麻生グラウンドに行くんですが、そこでダミアンを見て一目惚れしました。とにかく存在感すごくて、ホントに一目惚れみたいな感じなんです。スマホケースの裏にサインをしてもらったんですけど、対応もやさしくて一気に好きになりました。

JUNPEI:厳密にいうと、僕らはその前に新体制発表会に行っていました。ダミアンが桃の中から登場して盛り上がっていて、すでに大物感は出ていましたし、拍手の大きさもすごかったので、これはスーパースター来たなと思ってました。KYOHEIは麻生グラウンドに行く前から、ダミアンダミアン言ってましたし、惹かれるべくして惹かれた部分はあったと思います。

その日の僕らの心は完全にダミアンでした。推してる選手にやさしくされたら、そりゃあハマっちゃいますよ(笑)。

取材班:ファンサでの姿勢も好印象だったんですね。

KYOHEI:ブラジル人選手って全員すごく優しいんですけど、ダミアンも全員にすごく優しく対応してくれます。写真やサインはもちろんのこと、ゴールパフォーマンスをお願いしても一緒にやってくれます。サポーターが喜ぶことをしてくれる印象です。

取材班:初対面で一目惚れして、その愛が加速した瞬間はありましたか?

JUNPEI:ゼロックスの浦和戦です。前半からプレスもがんばってて、ヘディングでゴールネットも揺らしていて(結果はノーゴール)、「やっぱダミアンすげえわ。ブラジル代表のダミアンがあれだけ戦ってくれるんだ」っていう期待をもってハーフタイムを迎えて。

で後半、自分たちの目の前ですごいシュートを決めたんですよ。僕らは基本、点が入っても「よしっ」って感じで爆発的に喜ぶことはないんですけど、その日は恥ずかしいくらいはしゃぎました(笑)。めちゃくちゃ楽しかった記憶がありますね。

KYOHEI:「ゼロックスはダミアンのゴールで勝ちたい」とずっと言ってて。期待通りの活躍でした。とにかく全力さを前面に押し出すプレーをしてくれて、なおかつ「ダミアンのゴールで勝ちたい」っていう僕の願いまで叶えてくれて。初対面からゼロックスまでの流れで、完全に好きになっちゃいましたね。


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ゲーフラを作った。トモダチになった。


取材班:ある意味、ダミアン選手の個サポとしても迎えたシーズンだったかと思いますが、それに伴って行動に変化はありましたか?

KYOHEI:まず、これまで年に1回しか行かなかった練習場に、週1で通うようになりました。それから、ゼロックスからリーグ開幕までは1週間しかなかったのですが、その間にダミアンのゲーフラも作っちゃいました。


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取材班:ダミアン効果、恐るべしですね…。

KYOHEI:僕もまさかこんな風になるとは思ってなかったですよ(笑)。

もちろんチームあっての選手ですが、フロンターレの勝利と同じくらい、ダミアンの活躍を願うようになりました。フロンターレのサッカーは馴染むのに時間がかかると言われてて、実際ダミアンもベンチに座ることが多かったのですが、僕としては「とにかくダミアン出せよ」みたいな(笑)。そんな感情すら芽生えるようになりました。

取材班:ゲーフラを作ってリーグ開幕を迎えたわけですが、ダミアン選手から認知されたのはいつ頃でしたか?

KYOHEI:アウェイ清水戦(5/12・第11節)の2日後でした。その試合でダミアンがすごいゴールを決めたので、「ナイスゴール」って伝えようと思って、大雨の中ゲーフラをもって麻生グラウンドに行きました。

KYOHEI:そしたらダミアンが「トモダチ!」って声かけてくれたんです。その日は1人で行ったので、家に帰って兄に「今日トモダチって言われた!」「んなわけねえだろ!」なんてやりとりをして、後日2人で確かめに行きました。それからというもの、「ダミアン!」って手振ると「お~トモダチ~」って毎回言ってくれます。

取材班:そんな短期間で認定されるなんてすごい…。ブラジル人のダミアン選手とは、どのようにコミュニケーションをとっているのですか?

JUNPEI:「がんばってください」「いつも応援してます」って感じで、現場ではかんたんな日本語です。でも、本当に伝えたいことはSNSを通じて伝えてます。練習場で撮った写真に、ポルトガル語に翻訳した言葉を貼って、Instagramのストーリーズにタグ付けして投稿すると、ダミアンが見てくれたり反応してくれるので。

「ありがとう」って返ってくるときもあるので、自分たちの想いは伝わってるんだなぁって感じがします。


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取材班:選手・ファン間のコミュニケーションが一方通行じゃないと。

KYOHEI:「トモダチ」って言ってくれたり、SNSにいいねしてくれたり、繋がりを実感できるのがダミアンのいいところかなって。応援が届いてるって実感を持てる対応をしてくれるところに、人柄が出てるなって思います。

取材班:ダミアン選手にとっては、決して満足のいくシーズンではなかったように見えましたが、その中でファンへの対応に変化はありましたか?

KYOHEI:どんな時も変わらなかったですね。ダミアンがちょっと不満そうに途中交代した次の日に声掛けても、前日からは完全に切り替わってましたし。ファンサでの対応に影響することは一回もなかったです。


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取材班:試合中はやっぱり、ダミアン選手を追いかけてしまうもんですか?

KYOHEI:ダミアンが点を決めたらすぐゲーフラ出したいので、すぐに反応できるよう常に準備してます。「来そう!」ってなったら準備に入って。ゴール決めたらすぐ掲げます。

アウェイのガンバ戦、一時逆転となるゴールをダミアンが決めたときに、僕のゲーフラを指さしてくれた気がして。真偽は分からないんですけど、目線的には確実にこっちで、あれは本当に嬉しかったです。


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サッカーの新たな楽しみ方を知った。


取材班:ダミアン選手を1年間追いかけた昨シーズン、サポーターとしての心境に何か変化はありましたか?

KYOHEI:サポーター生活が純粋に楽しくなりました。サッカー選手っていう憧れの人たちに認知してもらえるのは嬉しかったですし、今までは選手と繋がれてるって感情を持ったことがなかったので、ダミアンを応援し続けるからこそ感じる楽しさがありました。

取材班:チームにとっては決して良い結果とはなりませんでしたが、それでも楽しかったと。

KYOHEI:今までは、チームの成績が良くないと「今年は残念だったねー」って感情が大きかったのですが、今年はサポーター生活の中で一番楽しかったです。よりフロンターレが生活に入ってきました。シーズン中はダミアンのことをずっと考えていたので(笑)。

取材班:これまでは感じたことがなかった楽しさに出会えたんですね。

KYOHEI:正直これまで、一人の選手を推している人たちの気持ちを全く理解できてなかったんです。もちろん否定していたわけではなく、個サポの楽しさが単純に分からなくて。それを全部、ダミアンから教わりました。むしろ「個サポの楽しさが分からないなんてもったいない!」と思うまでになりました。

JUNPEI:ガチャガチャとかもね(笑)。

KYOHEI:ダミアンのガチャガチャはめちゃくちゃ集めました(笑)。これまではTwitterとかで「ガチャガチャ譲ります」ってやり取りを見ても「この人たちはすごいな」ってどこか他人事だったんですけど、それをまさか自分がやるようになるとは(笑)。もう試合行くたびに回してましたね。


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取材班:KYOHEIさんの変わりようは、お兄さんから見ててどうでしたか?

JUNPEI:なんか毎試合、ダミアンに対する意気込みを試合前にツイートするんですよ。ダミアンがスタメンであろうがベンチであろうが、試合前に「今日はダミアンがやってくれるぜ!」みたいなのをツイートするようになってて。そんな姿は見たことなかったですね。

取材班:「ダミアンが好き!」っていうお二人の想いは、少なからず川崎サポーターの中でも認知されていると思いますが、何か周りに影響を与えられたなって感じることはありましたか?

JUNPEI:自分たちの発信に対して「ダミアンへのメッセージ、胸が熱くなります」などの反応をもらう機会が、徐々に増えてきました。ダミアンの活躍を願ってくれるサポーターもいますし、自分たちの行動が多少なり周りにも伝わり、それが応援という形で本人にも伝わる可能性があると思えば、発信する意味があるなって感じます。

取材班:ダミアン選手にとっても、お二人のような行動がプレーへの原動力に繋がると思います。

KYOHEI:遠く離れたブラジルから日本にやってきて、多少なりとも心細さはあると思うんですが、うまくいかないときでもメッセージを送ったりすることで、応援してくれてる人がいるって思ってくれたらいいなって。「少しでも支えになってるといいな」って思いで応援してます。


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取材班:選手への想いがチームを超越してしまうことはないですか?

KYOHEI:僕はさすがにないですね…。本当に昔から応援してるチームなので、もし仮にダミアンが移籍したとしても、ダミアンのことは応援するけど、移籍先のチームの応援席に入るのは厳しいなと。

だから国内移籍だけは絶対にやめてほしい。他のチームで活躍しているダミアンを穏やかに見れる気がしないというか。絶対嫉妬しちゃうので、うん、国内移籍は本当にしんどいですね(笑)。

取材班:いわゆる「個サポ」と「チームサポ」は別の軸で語られることが多いですが、十分に併存するってことですよね。

KYOHEI:「好きな選手だけが活躍すればいい」って思いになったことは一度もないです。まずはチームの勝利が大事です。


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ダミアンを追いかけ、練習場で見た光景。


取材班:一人の選手を濃く追いかけたことで、サッカー選手に対する見方に変化はありましたか?

KYOHEI:選手の気持ちを考えるようになりました。練習場にめちゃくちゃ通っていたので、他の選手の努力とか、上手くなっていく過程を見て、それが報われてほしいなって思うようになって。選手の気持ちに少し寄り沿えるようになったかなと思います。

取材班:ピッチに立つまでの過程を見ることで、試合に対してもより感情移入できるようになりそうですね。

KYOHEI:ダミアンを推すことで、他の選手の話もするようになりました。家族内でも「今日は誰々が練習がんばってた」とか「いつも居残って練習してたから結果出してよかった」とか。チームスポーツなので、全選手がいい想いをするのは難しいと思うんですけど、みんなに活躍してほしいって思うようになりました。

取材班:KYOHEIさんの話を聞いていると、「選手に触れ合えるのが楽しい」というサッカーに対する小学生時代の感覚が、呼び起こされたのかなと感じます。

KYOHEI:たしかに「好きな選手に会いに行く」という、フロンターレを好きになったキッカケの「少年心」が再燃した感覚はあります。昔もらっていたサインカードへの興味もなくなってたんですけど、ダミアンのは欲しいって思うようになりました。

取材班:そういった楽しさって、どうして消えてしまうんでしょうね。

KYOHEI:う~ん。いつの間にか落ち着いちゃってて。

JUNPEI:「ガチサポになった」とか言ってたよね。

KYOHEI:そうそう。サインじゃなくて試合をメインに行くようになって、「サポーターになったね」みたいな話はしてました。

JUNPEI:やっぱり年齢的なものなんですかね。フロンターレの価値がサインやファンサービスから、チームの勝ち試合を見たいって変わっていったので。そういう意味では去年は新鮮、懐かしいと言えば懐かしかったです。


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待望のシーズン。ついに本領発揮か。


取材班:最後に、今後への期待をお聞きしたいと思います。今シーズン、ダミアン選手の活躍はこれまで以上に見れそうですか?

KYOHEI:フォーメーションを変えたこともあり、キャンプでのダミアンのゴール数がずば抜けてて。例年通り麻生グラウンドに行ったら、スタメン組のセンターフォワードで出ていたんです。

ふたを開ければ、サイドを活かして中のダミアンに合わせる場面は増えていて、それが顕著に出たのがルヴァンカップの清水エスパルス戦だったと思います。

取材班:ダミアン選手が活かせそうなフロンターレ、KYOHEIさんにとっては念願だったのでは?

KYOHEI:めちゃめちゃ嬉しかったです(笑)。今までで一番楽しいシーズンオフでした。新しいフロンターレのサッカーを見れて、しかもダミアンが活躍するんだっていうワクワク感がすごかったです。

取材班:ダミアンとフロンターレの成績が比例すれば、KYOHEIさんにとってより最高のシーズンになりそうですね。

KYOHEI:去年、ダミアンが決勝ゴールを決めた試合はほとんどなかったんです。1点返すゴールだったり、同点ゴールだったり、チームの勝利が伴ってなかったので、今シーズンはダミアンのゴールでチームが勝つ試合を期待してます。

取材班:この先もずっと、ダミアン選手がフロンターレに居続けたらいいですね。

KYOHEI:ダミアンがいなくなるなんて考えられないな…。ダミアン以外の誰かをめちゃくちゃ好きになる自分があまり想像できないんです。僕にとってはそのくらい特別な選手なので、フロンターレで引退してくれたら嬉しいなって思っています。

これからもできるだけ長く、ダミアンと一緒に戦いたいです。


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【了】

写真提供:KYOHEIさん、JUNPEIさん、川崎フロンターレより

----------nest編集部より----------

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