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松本翔サポ・ひよりんはなぜ、"翔くん"に心を奪われ、全国各地へ足を運び続けるのか。

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多くのサッカー選手がクラブを移る冬。移籍に際し、温かく送り出すサポーターもいれば、選手に付いていくサポーターもいる。今回は後者、一つのクラブ以上に一人の選手に愛着を持つひよりんさんにお話を聞いた。応援しているのは、今シーズンよりMIOびわこ滋賀に所属する松本翔選手。横浜F・マリノス時代から10年弱に渡って追いかけ続ける理由、好きな選手とともにクラブを移籍していく魅力とは。

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【プロフィール】ひよりん。小学生の頃から横浜F・マリノスを応援。その過程で知った松本翔選手の虜になり、以降は松本翔選手が所属するクラブの試合に足を運び続けている。Twitterアカウントはこちら。

取材日:2021年2月1日


下田:先日、高知ユナイテッドSCのサポーターより「松本翔選手をずっと追いかけている方がいる」と、ひよりんさんを紹介していただき、この度取材を申し込みいたしました!

松本翔選手といえば、アスリートフードマイスターの資格を持ち、ツイッター上で『食』や『地域』などの発信を積極的にするなど、かねてからサッカー選手の枠を超えて活動している印象が非常に強いです。



ひよりん:よろしくお願いします!私は横浜F・マリノス時代に翔くん(松本翔選手)を知って、2015年に退団して以降も現地まで応援に行き続けています。翔くんに導かれて様々なクラブの試合を観戦していく中で、たくさんのサポーターとの出会いがあり、今はそこで知り合った4名の友人と一緒に応援をしています。


下田:『チーム松本翔』のことですね。


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ひよりん:はい!みんなとは2015年に山口で繋がりました。住んでいる場所はバラバラなのですが、翔くん好きとして意気投合して、試合を見に行くときはなるべく予定を合わせて集まるようにしています。翔くんのことも大好きですが、翔くんを通じて出会ったみんなのことも大好きです。


下田:今日は一人の選手を追いかけていく魅力、そしてサッカーのみならず精力的に活動している松本翔選手の価値を、サポーターの視点からお聞きできればと思っています!



プレーで注目し、人柄に惹かれる。


下田:ひよりんさんが松本翔選手を注目するにあたり、きっかけとなる出来事はありましたか?

ひよりん:もともと私は横浜F・マリノスのシーズンチケットホルダーで、ゴール裏から応援をしていました。翔くんのプレーを初めて見たのが、2012年のナビスコカップ(現在のルヴァンカップ)。その日は翔くんの誕生日だったので注目をしていたところ、いきなりゴールを決めて。それを見て「すごい!」って思ったのがきっかけです。


下田:初ゴールの瞬間に居合わせたんですね!翌年の2013年、松本翔選手は愛媛FCにレンタル移籍することになりましたが、当時からもう松本翔選手に一直線だったのでしょうか?

ひよりん:愛媛まで行きたい気持ちはあったのですが、当時の私は高校生だったこともあり親に止められてしまいまして(笑)。翔くんを応援しよう!って強く思うようになったのは、横浜F・マリノスに戻ってきた2014年からになります。


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下田:ゴールを見て注目するようになった中で、応援しよう!と思うようになるまでにはどのような過程があったのでしょうか?

ひよりん:すごいミーハーな感じなんですけど、翔くんは当時からSNSを活発に使っていて、私に限らずリプ(リプライ)を送ると返信がくるんですよ。サッカー選手がサポーターにリプを返すのって、当時はすごく新鮮で。「どんな選手なんだろう?もっと応援したいな」って思うようになりました。


下田:その影響もあって、2015年にはレノファ山口在籍だったにも関わらず、現地まで応援に行くようになったのですね。

ひよりん:はい。山口は、私にとって印象深い土地です。


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山口で出会った人たちが
"松本翔生活"を加速させた。


下田:2015年のレノファ山口時代が、ひよりんさんが松本翔選手を応援するためにスタジアムに行った最初のシーズンかと思います。具体的にはどのような印象が残っているのでしょうか?

ひよりん:大学生になり、親からも「勝手に行ってくれば」と言われるようになったので(笑)、夜行バスに14時間ほど乗って開幕戦に行きました。記憶が正しければ、翔くんはベンチに入っていたものの出番はなかったと思います。

レノファサポーターの第一印象は、とにかく温かいこと。ゴール裏の人はみんな顔見知りで、知らない顔があったら「あの子は遠くから来たんじゃない?」って感じで話しかけてくれるんです。私は翔くんの漢字入りユニフォームを着ていて目立っていたのかもしれませんが、バス待ちでも「ここで待ってたら出てくるよ!」「翔くん見に来てくれたんでしょ!こっちきな!」って教えてくださる方が何人もいて、その温かさは今でも忘れられないですね。


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ひよりん:あとは『チーム松本翔』のみんなとの出会いも山口でした。もともとTwitterでは繋がっていて、そのうち1人の子が開幕戦に広島から来ると聞き、現地で「はじめまして」をして。夏にもう一度行った際には、山口在住の3人から「一緒に見ませんか?」とお誘いを受けていたので計5人で観戦して、そこで仲良くなりました。

その日も翔くんは出場しなかったのですが、みんなで盛り上がって、出待ちして、SNSに写真を載せたところ、レノファサポーターの方に「チーム松本翔だね」と名前をつけていただきました。物珍しさからか、そのツイートが拡散された事もあり、以降はレノファの試合に行くとサポーターの皆さんから声をかけていただくようになりました。


下田:松本翔選手の愛に加えて、"山口に行くと会える人たち"への愛が芽生えるようになったんですね。

ひよりん:1人で見るのと、5人で見るのでは楽しさが全然違います。しかも同世代なので、まぁワイワイやってるんですけど、みんなと一緒に翔くんを見に行くのはすっごい楽しいです。同じ選手を応援していると視点も似ているので、「いまの見た見た?」って共感し合える部分も多く、同じ選手を応援しているからこそ余計仲良くなれました。


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下田:だからこそ、レノファ山口へは1年間のレンタル移籍だったことが惜しかったのではないでしょうか?

ひよりん:翌年は横浜F・マリノスに戻るのか、レノファ山口と契約をするのか分からなかった中で、行く予定だったファン感謝祭の前日に契約満了のリリースが出たんです。私にとっては夏ぶりの山口で、正直行くことに戸惑いがあったのですが、現地につくとサポーターのみなさんから「おかえり」と言っていただけたことがすごく嬉しかったです。


下田:お別れをするのではなく、まるで山口が故郷であるかのように受け入れてくれたと。

ひよりん:私にとっての山口は、第二の故郷です。翔くんがそのあとにガイナーレ鳥取に移籍して、レノファと練習試合をすることがあったのですが、約3年ぶりにお会いしたにも関わらず、「おかえり」と言葉をかけてくださいました。どのクラブのサポーターも温かかったですが、レノファを通じて出会った方々との繋がりはすごく大きなもので、それが夜行バスを使ってまで現地に行く原動力になっていたと思います。


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サポーターを大事にする選手だから、
迷うことなく応援したくなる。


下田:横浜F・マリノス時代からのサポーターが山口まで応援に来ることは、松本翔選手からしても嬉しかったのではないかと思います。山口で顔を合わせたときの反応はいかがでしたか?

ひよりん:翔くんの人柄が表れた対応でした。出番がなかった選手と試合後に会うことには迷いもあったのですが、どんなときでも「ありがとうございます!」と丁寧に対応してくれました。だから余計に頑張って欲しいと思うようになって、たとえ試合に出ていなくても、行くたびに翔くんへの愛は増していきました。


下田:その頃にはもう、松本翔選手はひよりんさんのことを認識していたようでしたか?

ひよりん:レノファに行く1年前には認識されていたかなと思います。Twitterでリプを送ったり、友人が私へのサプライズとして名前入りのサインをもらってきたりする中で覚えていただけたようで。ある日、サインの横に私の名前を漢字で書いてほしいとお願いしようとしたところ、何も聞かずに「日和」と書いてくれた時はびっくりしました。


下田:名前を覚えてもらえるって、サポーターからすればものすごく嬉しいですよね。プレーでサポーターを増やすサッカー選手もたくさんいますが、とはいえサッカー選手も一人の人間ですし、個人的にはそのような人間性に魅了されて好きになった話をよく聞きます。

ひよりん:私が仲良くしている人だと、そういうケースは結構多いです。最初はプレーで注目して、ファンサ(ファンサービス)によってさらに好きになるのは"あるある"だと思います。


下田:それ以外にも、松本翔選手をもっと応援しよう!と思うに至った出来事はありましたか?

ひよりん:今もスタジアムに掲出している横断幕のことですかね。


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実はこれ、翔くんがレノファを退団する時に、サポーターの皆さんが寄せ書きをして最終日にお渡ししたものなんです。私たち『チーム松本翔』のメンバーも寄せ書きをして、そのまま受け取ってもらうつもりだったのですが、メンバーの一人のもとに翔くんからのメッセージ付きで返ってきまして。

内容は「次のチームに行った時に、この弾幕を出してほしいから持っていてほしい」とのことでした。

それ以降『チーム松本翔』で試合を見に行くときは、現地のサポーターに許可を取った上で貼り出すようにしています。私たちが作ったものではないにも関わらず、レノファサポーターの方には快く譲っていただきました。


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下田:そこまでされたら、張りきって応援行きますよね…。選手がサポーターに対して見せるスタンスの重要性を感じます。

ひよりん:「これは毎試合出すしかないでしょ!」って思いました。ただこの弾幕、松本翔の名前の左上に「TEAM」と書いてあり、『チーム松本翔』の弾幕みたいになっているのが少し恥ずかしいです。まさか掲出されるとは思っていなかったので…。


下田:どうしてもSNSでの発信力がフォーカスされることの多い松本翔選手ですが、その根底には一人ひとりのサポーターを大切にする想いがあるのですね。

ひよりん:「応援してます!」だけのリプに対しても、一人ひとりに違うコメントをしていたりするので、ちょっとしたやり取りをすごく大切にしているんだなと感じます。

私、自分の誕生日に「お誕生日だから一言ください!」ってリプを勝手に送っていて、それに対しても毎回内容を変えてくれるんですよ。一度、花言葉まで調べた返信がきたときは、本当に丁寧な方なんだなぁと好感しかなかったです。


下田:松本翔選手がなぜ『チーム松本翔』をはじめとするサポーターの方々に愛されているのか、よく分かりました。

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松本翔という人間を、
サッカーの入口に。


下田:松本翔選手といえば、#松本食堂 のハッシュタグをつけて『食』に関する発信をされていますが、そのようなサッカー選手以外の一面に共感を抱くことも多いですか?

ひよりん:アスリートフードマイスターって、選手の奥さんとかが取る資格じゃないですか。自分ですべて管理しているストイックさは、私が翔くんを好きでいる理由の一つですし、SNSを見ていると毎回お腹が空きます(笑)。



あとはサッカー以外に、プロフェッショナルな分野を持って発信しているのは、まさに翔くんの価値だと思います。アスリート以外にも身体に気を遣いたい人はたくさんいると思うので、翔くんの発信がそのような人に役立つことはもちろん、「あ、この人サッカー選手なんだ、今度観に行ってみようかな」ってなるかもしれませんし!


下田:最近はサッカー選手がサッカー以外について学び、発信し、選手としての価値を向上させていく姿を見るようになりましたが、松本翔選手はその先駆者の一人だと思います。

ひよりん:実際、高知ユナイテッドSCに所属していた時は、翔くんとの出会いをきっかけとして、サッカーに興味を持った方がいたようです。私もツイートで見かけただけなのですが、翔くんがよく行っているカフェやご飯屋さんの人が、「翔くんが出ているなら見に行くよー」ってお店を閉めたあとに試合に行ったりしていたそうです。


下田:退団が決まった後も、お店を借りて、サポーターに対してご飯を振る舞っていましたね。


松本選手は常連客として訪れていた「藁屋」の店頭で、得意料理の牛すじ煮込みを約40人分作り、振る舞った。ランチで訪れた高知市の小田みちこさん(56)はSNSの料理の投稿で松本選手を知ったという。「松本選手のおかげで初めてサッカーを観戦し、すごく楽しかった」


ひよりん:翔くんのおかげで、高知ユナイテッドSCについて知った方も多くいると思います。ここまでやるサッカー選手、どこを探してもいないですよね。繰り返しになりますが、そういったストイックさや人間性はサポーターとして尊敬する部分です。私もサポーターとして影響を受け、「翔くんみたいにストイックになりたいな」と思いますが、あそこまですごい人にはなれないのでただただ尊敬しています。



下田:松本翔選手が発信している『食』に対して、ひよりんさんが影響を受けて実践することはありますか?

ひよりん:実は実家に住んでいるので、作ってみたいとは思うもののあまり実践できておらず…でも周りの方は結構自分で作ってるみたいです!特に人気なのが鶏ハム。TwitterやInstagramを見ていると、レシピ通りに作って載せている方はたくさんいましたね。



私はどちらかというと、翔くん行きつけのお店に行きます。現地では、その地域の観光名所にいくこともありますが、翔くんが紹介していたお店を観光がてら回ったりします!今までの自分だったら行かないような場所でも、翔くんにオススメされると行ってみたい気持ちが芽生えてくるので、新しい発見に繋がることも多いです。


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下田:好きな選手がSNSを積極的に活用しているのは、サポーターにとって大事なことですか?

ひよりん:私は年に数回しか試合に行けないので、選手の日常をSNSで発信してくれると、物理的な距離を感じないというか、繋がっている感覚をすごく受けます。嬉しい時も、悔しい時も、サッカーに対する気持ちもしっかりと発信してくれるので、どんな気持ちでプレーしているのか知れるのもサポーターとしては嬉しいです。

また、「◯◯選手とご飯に行きました!」っていう一見なんともない投稿でも、私からすれば新しい選手の顔と名前を覚えるきっかけになりますし、それでフォローをして親近感を抱くこともあるので、翔くんの発信のおかげでクラブや他の選手に関心を持てるようになりました。


下田:私が松本翔選手をすごいと思う点は2つあります。1つは「応援してくれる一人ひとりを大切にしていること」、もう1つは「主体的に動き、サッカー選手の枠を越えたところに高い付加価値を生み出し、それを自分のクラブやサッカー自体に還元していること」です。こういった選手が一人いるだけで、影響を受けるチームメイトもたくさんいるのではないでしょうか。

ひよりん:所属しているクラブの公式宛に、「◯時にツイートしたほうがサポーターの方はスマホを見ていると思います」ってリプを送っているのを見たことがあるので、発信のノウハウについても参考になることが多いと思います。

あとは、その土地の野菜や名物を使ってご飯を作っているので、地元の方々からも親近感を持って受け入れられているように見えます。翔くん自身がその土地を好きになって、良いところをアピールしているのは、クラブのサポーターからしてもものすごく嬉しいことだと思います。


個サポの楽しさは、
その土地を深く知れること。


下田:現在のひよりんさんは、特定のクラブを追いかけるのではなく、松本翔選手を追いかけているわけですが、一人の選手を追いかけるからこそ得られる楽しさは何かありますか?

ひよりん:翔くんを追いかけて得られた楽しさは、いろいろな地域に行けて、いろいろな出会いがあって、一つの地域をより深く知れたことかなと思います。もちろん、特定のクラブを応援していてもアウェイ遠征で日本各地に足を運ぶ機会はあると思うのですが、一人の選手を応援していると、行く先々のことをより深く知ることができます。


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下田:ひよりんさんで言えば、山口、福井、鳥取、高知、そして今シーズンは滋賀について、アウェイ遠征で行くよりも深く知れると。

ひよりん:アウェイ遠征との最大の違いは、1年に何回も行けることだと思っています。これまでF・マリノスサポーターとしてアウェイに行くときは、スタグルを食べて、プラスアルファでその土地の有名所に一つ行けるかどうか。でも選手を追いかけていれば、年に何回も同じ場所に行けるので「次はあそこに行ってみよう!」ができるんです。


下田:松本翔選手が移籍をすれば新しい土地を知れる一方で、一つのクラブに留まればその土地をより深く知れる。サポーターとしては難しい部分ですね。

ひよりん:ここ数年は移籍することが多いですが、『チーム松本翔』のみんなとは「次は◯◯に行けるね!」とポジティブに捉えていて。どこも旅行先として真っ先に挙がってくる県ではないので、翔くんが移籍しなければ訪れることはなかったって考えると、貴重な体験をさせてもらっているなと感じます。

私としては、一つのチームに長く在籍しなくても、翔くんに合うチーム・必要とされているチームで活躍する姿を見たいと思っています。

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下田:ひよりんさんにとって松本翔選手は、どれほど大きな存在なのでしょうか?

ひよりん:いなくてはならない存在です。私にとってサッカー観戦は趣味というよりは、ほとんど日常に入り込んでいて、そのために働きますし休みを取ります。「翔くんを見に行くため、みんなと会うためにに頑張ろう!」と日々思っているので、生きる原動力と言っても過言ではないです。


下田:今後、松本翔選手のどのような姿を見ていきたいですか?

ひよりん:一番は試合に出て活躍してくれるところを見たいです。あとはもう一度、Jリーグで見たい気持ちはありますね。Jの舞台に戻ってきてくれたら最高ですけど、まずは今いるチームで活躍して試合にいっぱい出てくれたら嬉しいです。


下田:最後に、この場を借りて松本翔選手に伝えたいことはありますか?

ひよりん:もしこの記事を読まれていたら恥ずかしいですが…。

翔くんが引退するまで私はずっと応援しているので、これからも頑張って欲しいと伝えたいです。


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【了】


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