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コルリ、SNS、カメラマン、横断幕、グッズ作り。五足のわらじで、選手とともに夢を追う。【岐阜県1部・FC大垣K'】

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ほとんどのクラブに応援団がついていない岐阜県社会人サッカーリーグ1部において、FC大垣K'は異色の存在だ。試合日には横断幕が掲げられ、サポーターがコールを切り、Webではグッズを買うことができる。そのすべてを1人で受け持っているあやかさんは何に魅せられ、これほどまでに精力的な活動を行っているのだろうか。

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【プロフィール】あやか。岐阜県社会人サッカーリーグ1部所属・FC大垣K'(愛称:コーガンズ)サポーター。一人での声出し応援や、グッズ作成など、クラブを盛り上げるべくさまざまな角度から精力的に活動している。Twitterアカウントはこちら。


FC大垣K'について。


取材班:まずはじめに、FC大垣K'とはどんなクラブなのか、簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか?

あやか:岐阜県社会人サッカーリーグ1部に所属しているクラブです。『水の都』と呼ばれる岐阜県大垣市を本拠地に活動し、今は東海社会人サッカーリーグへの昇格を目標に掲げています。

中心選手は元Jリーガーの片桐淳至選手。私たちは"ギリさん"と呼んでいるのですが、FC岐阜でも活躍した岐阜県出身の選手で、約5年前からFC大垣K'でプレーしています。コーガンズと言えば片桐、片桐と言えばコーガンズ。愛知くらいまではそれで通じますね(笑)。FC大垣K'の「K」は片桐の「K」って言われるくらいなので。

また、元日本代表の小島宏美選手も所属しています。元Jリーガーがいるって意味ではインパクトの大きいクラブかなと思います!



取材班:片桐選手、J2昇格当初のFC岐阜を支えたレジェンドですね!そんなFC大垣K'のサポーターとして、あやかさんはどういった活動をしているんですか?

あやか:主に太鼓を使いながらの声出し応援、試合や練習の写真撮影、非公式アカウントとしての情報発信、横断幕の作成・掲出、グッズ販売の5つになります。


取材班:幅広すぎますね…(驚)。ちなみに、FC大垣K'を応援しに来場する方は何人くらいいるんですか?

あやか:ご家族の方を入れると、把握できているのは20人くらいかなと思います。皆さんには手拍子などをお願いすることもありますが、声出しの応援は基本的に私一人でやっています。


取材班:お一人でやられているんですか!今日はそうした活動内容や原動力について聞かせてください!


SNSで見つけた、選手たちの想い。


取材班:まずは、FC大垣K'を知った経緯について教えてください!

あやか:私はもともとFC岐阜とFC岐阜セカンドを応援していて。2017年にFC岐阜セカンドのとある選手がFC大垣K'に移籍をした際、「また(試合の)写真撮りに来てね!」とお声がけいただいたのがきっかけで、2017年11月にFC大垣K'の試合に写真を撮りに行きました。

それで撮った写真をFC大垣K'の皆さんに贈ったところ、SNSに感謝の言葉を載せてくれたりして、ものすごく喜んでくれたんです。それまでのFC大垣K'にはカメラマンがおらず、選手の皆さんはプレー写真を貰うことが新鮮だったみたいで。私自身もそうした反応を貰えたことが嬉しくて、その後も試合を見に行って写真を撮るようになりました。


取材班:何気なく提供した写真に、ある意味予想外の反応が来たってことですね。それで継続して観戦するようになったと。

あやか:私は写真を撮るのが好きで、今は名古屋にある写真の専門学校に通っているのですが、あそこまで喜んでくれるとは思いませんでした。選手の皆さんに対する感謝の気持ちが、このクラブを好きになった第一歩目でした。


取材班:そこからどういった流れで、声を出して応援するようになったんですか?

あやか:写真を提供したことで選手たちのアカウントを知り、フォローしていきました。そんなある日、FC大垣K'の選手がJリーグを見に行った際の投稿に「俺たちも応援されながら試合をやってみたい」って言葉があるのを偶然見つけたんです。その想いを知ったら、「じゃあ、私がやるしかなくない?」って思って。ちょっとクサいですけど「私が選手たちの夢を叶えよう」って気持ちが芽生えてきて、(写真を喜んでくれた)恩返しのつもりで応援を始めることを決めました。


取材班:なるほど!選手たちの夢を自分だったら叶えられるかもしれないと考えたわけですね。声出し応援をはじめたのはいつ頃ですか?

あやか:初めて写真撮影に行ったのが2017年の11月、声出し応援を始めたのは2018年の秋頃です。そこから今日まで全ての公式戦に行っているので、かれこれ2年くらいは声出しで応援をしてきました!


取材班:ある日突然声出し応援が始まるなんて、選手の皆さんも驚かれたのでは?

あやか:「ついにアイツ来たな」って感じで、ベンチの選手がすごくびっくりしていました(笑)。馬鹿にされたり否定されるかと思ったんですけど、試合後に集合写真を撮ってもらったときに「サポーター一号や」「ありがとう」って迎え入れてもらえたのは嬉しかったですね。SNSの投稿にも「#サポーター一号」とか、当時は女子高生だったので「#JKサポ」っていうハッシュタグまで付けてもらいました。


取材班:カメラマンや応援団がいることを当たり前だと思わず、あやかさんに最大限の感謝を示せるFC大垣K'の選手たちは素晴らしいですね!


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応援初年度でぶつかった壁。


取材班:一人応援ってかなり勇気のある行動だと思うのですが、孤独感などは感じませんでしたか?

あやか:周囲の目はだいぶ気にしましたね。もともと私は、常に周りを気にしてビクビクしているタイプなんですけど、「私がここで頑張ってチームを勝たせられるなら何でもよくない?」って言い聞かせて応援しています。相手チームの選手の彼女さんとかに見られても別にいいやって(笑)。


取材班:本格的に応援をはじめて1シーズン目、チームの成績はどうだったんですか?

あやか:去年、チームとして初めての東海リーグだったのですが、いきなり強めの大学にボコボコにされて、秋くらいまで一回も勝てなかったんです。私が応援しているから勝てないんじゃないかと思って落ち込むこともありました。選手からも謝られることが多くて、その表情を見ているのがつらくて、座って見るのに戻ろうかなと思ったり。全体的にしんどいシーズンでした。

だからこそ、初めて勝利した時に泣き崩れちゃって。それを見ていた選手の親御さんが笑いながら泣いてくださって、みんなで肩組んでまた泣いて(笑)、あの勝利があって一気に持ち直しました。


取材班:苦しい状況でも応援し続けられたのは、あやかさんの応援が選手たちの力になっていると確信できていたからですか?

あやか:FC大垣K'がゴール決めると、選手がこっちを見て「あやかもっと声出せ!」「いけるいける!」って逆に励まされたりとか、選手に煽られながら盛り上げていくことが多々ありました。ピッチの目の前にあるネット越しで応援できる会場が多いので、こっちを見て煽る声もしっかり届きますし(笑)。

応援してたら選手たちに倍で応援されて、それを私が倍で返す。苦しいシーズンだったので、大喜びできるゴールは少なかったですが、それでもこっち見てガッツポーズしてくれて嬉しかったですし、目の前まで来てくれることも何回かありましたね。


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取材班:まさに一緒に戦っている感覚を味わいながら応援していたんですね。

あやか:去年の秋ごろ、ユニフォームをプレゼントしていただいたのが一番印象的です。「誕生日プレゼントはリーグ初勝利でお願いします」と言っていたのですが、実際の初勝利は誕生日から数か月後で。でも知らない所で12番のユニフォームを作ってくれていて、誕生日の3か月半後にプレゼントしていただきました。

世界に一着しかない背番号12。「私の?いいの?」って困惑するくらいビックリしました。選手登録をする時も「12番はちゃんと空けてあるで。あやちゃんの番号やよ」って言っていただけて、改めてこのクラブを応援し続けてきて良かったなと思いました。


取材班:写真撮影をはじめてから3年間、ここまでサポートに全力を注げる原動力はどこにあるんでしょう。

あやか:愛ですね、チーム愛。行動の原点は恩返しだったんですけど、チームの戦いを近くで見ているうちに愛が芽生えてきて、今は愛だけで動いています。これっていうターニングポイントはないんですよね…。気づいたらFC大垣K'が大好きになっていました。


少しでも興味を持ってもらうために。


取材班:冒頭でおっしゃっていたように、あやかさんは応援以外にも様々な取り組みをされています。まず、非公式アカウントでの情報発信についてお聞きしたいです!


FC大垣非公式アカウント


あやか:このアカウントを立ち上げたのは2019年の5月です。東海リーグの情報更新が遅かったり間違ったりしていたので、興味を持っている人のために作ったのが経緯になります。主に得点者などの試合結果や新加入選手の情報を載せています。FC大垣K'の皆さんも仕事が忙しくて、ホームページの更新が大変そうなので、学生の私がTwitterでやればいいのでは?と思ってスタートしました。



取材班:それからオリジナルグッズの販売もされていますが、非公式アカウントも含めて、周囲からの反応はいかがですか?



あやか:ありがたいことに多くの反応をもらっています。「これ着てFC大垣K’を応援するね」「試合情報ありがとうね」「Tシャツが家に届いたよ!」って言葉をいただくと、やって良かったなと思います。

あとは意外にも、私の知らないところでオリジナルグッズを着用していただいているみたいで。以前いわきFCの試合会場に、コーガンズのサコッシュを下げて歩いている人がいたと聞いたときはビックリしました。選手からも「あのTシャツ、英語バージョン作ってくれへん?」って連絡がきたこともありましたし、グッズ販売や情報発信アカウントを機に興味を持ってくださった方は全国にいるみたいなので、少なからずやる意味はあるのかなと思っています。


取材班:こうした活動に共感して、一人でも多くのサポーターが生まれていけばいいですね!

あやか:声出し応援は私一人のまま2年近く経っているので、やっぱり興味を持ってくださる方は増やしたいですし、あわよくば私と一緒に太鼓を叩いてほしいです。今、FC大垣K’には同い年の選手が3人所属しているのですが、彼らは学生や仕事と両立しながら休み返上でサッカーをしていて、その頑張りを見てほしいっていう気持ちが原動力になっている部分も大きいです。


取材班:試合日に限らず、日々FC大垣K’に関わる何かに取り組まれていると思うのですが、1日の中でどのくらいチームのことを考えているんですか?

あやか:普段は朝7時に家を出るんですが、学校までの1時間で「今週末の試合、横断幕は持っていこうか」「応援歌はどうしようか」「グッズ何作ろうか」って考えていて、授業の空き時間でも応援に使いやすそうな曲をメモしたり、パソコンを触っている時にそれっぽいロゴ作ってみたり、家帰るまでのバスでも何かしら考えていることが多いです。


取材班:一日中ずーっと考えているんですね(笑)。

あやか:気づいたら公式のInstagramを開いていますね(笑)。ストーリーズが更新されているのを見て、「今日練習してるんだな」とか、保護者目線で「筋肉ついてきたな」とか思ったり(笑)。基本的には、FC大垣K'をメインに自分の生活は回っています。


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地元のため、を応援したい。


取材班:以前のツイートで「ローカルフットボールは正義」と拝見したのですが、あやかさんは「ローカルフットボール」にどんな魅力を感じているんですか?

あやか:私はホームタウンを盛り上げようと頑張っている選手たちに感化されて、その姿を応援したいと思ってきました。私自身、大垣市に縁も所縁もなく他の市町村に住んでいますが、大垣市にあるクラブを応援していて、同じ境遇の選手も結構います。そうした人々が「大垣市のために」の想いの下で一つになり、地元に根付こうと頑張っていることを沢山の人に知ってほしいと思っています。



取材班:FC大垣K'が地元のために戦っていると感じるのは、例えばどんな時ですか?

あやか:大垣市でのホームゲームでは、地元の高校のサッカー部がボールボーイやスタッフで入ることが多くあります。そうすると、その高校生の家族や友達が試合にのぞきに来てくれるのですが、FC大垣K'の選手たちが「また来いよ~」って迎え入れる姿勢で接しているのがすごくいいと感じます。ホームページにも「地元大垣市の子供達の憧れになるよう」と書いてありますし、選手やスタッフの行動からそうした想いは伝わってきますね。


取材班:あやかさんは大垣市在住ではないとのことですが、FC大垣K'をサポートすることで大垣市に対する愛着は沸きましたか?

あやか:正直、住んでいるところよりも好きです(笑)。大垣市には『水まんじゅう』っていう名物の和菓子がありまして、県外から来てくれる方には「大垣駅で水まんじゅう食べて帰りましょうよ」ってお声がけすることもあります。せっかくこんないいホームタウンがあるのに、利用しないのはもったいないじゃないですか? 他にも青春18きっぷの降車駅になっていたり、『大垣ダッシュ』なんて言葉があったり、全国的な知名度は決して低くない分、地域と一体化して広めやすい土壌があるのかなと思っています。


取材班:サッカー好きを会場に呼ぶ場合、Jリーグとの日程被りがネックかと思います。岐阜県リーグにあって、Jリーグにないものってありますか?

あやか:距離の近さですかね。Jの選手は練習場じゃないと会話できなかったりしますが、岐阜県リーグであれば試合前後に選手の方から声をかけてくださることもありますし、隣の隣に選手の家族やお知り合いが座っていることも日常茶飯事で。いい意味でも悪い意味でも距離が近く、コミュニケーションがとりやすいのは一番の魅力です!


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取材班:今後についてお聞きします。FC大垣K’はどういった未来を描いているのでしょうか?

あやか:現状、Jリーグって言葉は出していなくて、まずは大垣市を盛り上げること。その手段の一つとしてサッカーなのかなって考えてます。一番近い目標は東海リーグに戻ることです!

あとは天皇杯の岐阜県代表も、全然狙える位置にいます。今年は新型コロナウイルスの関係で予選すら出させてもらえなかったのですが、来年以降は出てほしいなと思っています。天皇杯に出たら、色々と大きく変わるんじゃないかと思うので。


取材班:あやかさんとして、今後のクラブに望むことは?

あやか:選手たちが笑顔でいてくれるのが一番です。去年は悔しい表情や涙しか見なかったので…。その上で、東海リーグですごい強いチームだって知られるくらいのポジションに行けたら嬉しいです。私個人としては、今と変わらない五足のわらじスタイルでいきたいなと(笑)。


取材班:今日お話を聞いていて、あやかさんはいちサポーターでありながら「私がチームを強くする!」レベルの気概があるんじゃないかって感じました。

あやか:数の暴力じゃないですけど、FC大垣K'の試合で30人くらい声を出していたら相手はビックリするでしょうから、少しでもこっちのペースに持ち込めたりするんじゃないかって思っています。できないことはないと思っています。


取材班:最後に、あやかさんにとってFC大垣K'はどんな存在ですか?

あやか:家族でもあって、大切な仲間でもあって、憧れるヒーローです。自分がどん底にいたとしても、チームがゴールを狙ったり、煽ってくれたり、「もっと頑張ろうね」って声かけてくれて、いつも勇気をもらってきました。

私にとって選手の皆さんは、一緒に高みを目指す仲間であり、そこまで連れて行ってくれるヒーローです。


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【了】

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