【2024年1月最新】日系企業のためのインドネシアビジネスガイド:マネジメント層の採用と効率化の秘訣
インドネシアに進出する日系企業は2000近くあるとされており、8割近くが製造業とされています。また、進出してから10年以上経過している企業の割合も多く、組織化やマネジメントの強化ができず、ビジネス拡大が止まってしまう日系企業も少なくありません。
そこで今回は、「インドネシアにおける日系企業のマネジメント層採用の難しさと、その解決策に焦点を当てました。主に、マネジメント人材の不足、人件費の高騰、そしてこれらの課題に対処するための業務効率化とシステム導入の重要性について解説」についてご紹介いたします。
はじめに
インドネシアのビジネス環境
2023年11月のJETRO調査によると、インドネシアに進出する日系企業が感じる「進出メリット」は、以下の5つの項目が挙げられます(複数回答)。
1位:市場規模と成長性:57.4%の日系企業が、市場規模と成長性をメリットとして挙げています。人口の多さと経済成長が、ビジネス拡大の大きな機会をもたらしていると感じています。
2位:人件費の安さ:20.3%の日系企業が、人件費の安さをメリットとしています。
3位:ワーカー等の雇用の容易さ:12.0%の日系企業が、ワーカーや従業員の雇用の容易さをメリットとしています。
4位:取引先(納入先)企業の集積:18.6%の日系企業が、取引先や納入先の企業の集積をメリットとして挙げています。
5位:安定した政治・社会情勢:9.3%の日系企業が、安定した政治・社会情勢をメリットとしています。
今後も市場拡大の可能性を感じて展開する日系企業は増えるでしょう。一方、リスク(複数回答)として感じられる点も多くあります。
1位;人件費の高騰:70.4%の日系企業が人件費の高騰をリスクとして挙げており、コスト増加の可能性が高まっています。
2位:現地政府の不透明な政策運営:66.4%の日系企業が政策運営の不透明さをリスクとしています。
3位:税制・税務手続きの複雑さ:66.2%の日系企業が税制や税務手続きの複雑さを問題視しています。
4位:法制度の未整備・不透明な運用:61.2%の日系企業が法制度の未整備や不透明な運用をリスクとしています。
5位:行政手続きの複雑さ:50.9%の日系企業が行政手続きの複雑さをリスクとしています。
人件費の安さは進出メリットとして感じられているものの、毎年の人件費の上昇は長期的に対策が必要となります。また、税務・法務に関しては変動が激しく、予防税務だけでなく紛争税務を専門とするコンサルティング会社の活用もあり、決算前後は日本よりも忙しくなることが多いです。
マネジメント層採用の難しさの概要
インドネシアにおけるマネージャークラスの一般管理職の不足が深刻で、約8割の企業がこの問題を感じています。また、インドネシアでは、特にマネージャー層の不足感が目立ち、ASEAN平均と比べても約10ポイント高い深刻さを示しています。
採用の障壁とその原因
転職市場では、「人材紹介」や「求人媒体」を利用することが一般的ですが、日本とは異なり、LinkedInの利用も広がっています。マネージャー層の採用では、「ハイクラス特化の人材紹介」や「LinkedIn」、「リファラル」が主要な手段となっていますが、これらの採用チャネルはメンバークラスとは異なります。日系企業の多くが、マネージャー層の採用に必要なリソースの投資を行えていない現状があります。また、適切なマネージャーとマッチするまでのリードタイムの長さも課題です。
人件費の高騰とその影響
人件費の現状と予測
インドネシアでは人件費が年間5%〜10%の割合で上昇しており、国の経済成長に伴い、今後もこの傾向は続くと予測されます。
日系企業への影響
人件費の高騰は、「利益率の低下」、「賃金と生産性のバランス問題」、「外部アウトソーシングへの依存増加」など、日系企業に様々な課題をもたらします。また、BPO市場の成長と共に、内製業務と外注業務の区分けが進むと考えられます。
マネジメント業務の簡略化とシステム化
マネジメント業務の課題
多くの企業がマネジメント業務を細部まで言語化・分解していないことが一般的です。営業業務は比較的明確ですが、バックオフィス業務は多岐に渡り、日本人マネージャーでも全てを把握しきれないことがあります。そのため、業務全体を理解し、細かいタスクに分解することで、マネジャーに依頼すべき業務を明確にし、採用要件を具体化することが重要です。ただし、業務を細かく分解すると工数や費用が膨大になるため、効率的な解決策として既製品のシステム導入が有効です。システム導入は、業務フローを可視化し、効率化を図ることができます。特に、インドネシアの特有事情を考慮したシステムを選ぶことで、ローカルスタッフの利用しやすさも向上します。
実際の事例:勤怠管理システム導入により解決した例
従業員数50名の日系企業では、Excelを使用した勤怠管理がデータの正確性や効率性に欠ける問題がありました。特に、インドネシア特有の年金や社会保険の計算に時間がかかり、属人的な要素が強かったのです。
この課題を解決するために、「Mekari Talenta」という勤怠管理・給与支払いシステムを導入しました。これにより、従来の属人的な作業をシステム化し、業務の可視化と効率化を実現しました。また、給与支払い業務の負担軽減により、月末の業務がスムーズになりました。
結論:マネジメント層採用の要件整理とシステム化
マネージャーへの業務依頼には、タスクの分解と可視化が必要ですが、全ての業務を詳細に整理すると工数と費用が発生します。そのため、システム導入が効果的な解決策となります。さらに、システム導入時にはインドネシアの特有事情を考慮したシステムを導入することでより実用的なシステム運用が可能です。
本記事では、「日系企業のためのインドネシアビジネスガイド:マネジメント層の採用と効率化の秘訣」について記載しました。組織が成長するにつれて生じるこれらの課題に対して、早期に適切な対策を講じることが重要です。今後も引き続き、「インドネシアのビジネスに関する情報」を提供していきます。
問い合わせ先
shohei.arai@cquick.info (荒井)
https://twitter.com/cquick_arai
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