pixivあるある

あのう、ここにあった絵って、消えちゃったんですか?

ああ、事情はわからないが、そのようだ。

そっか、好きだったからまた観たくってここにきたんだけどな。

愛されていても気づけないことはよくあるもんだな。

あーあ、残念だな。もう一回、みれたらな。

そうかい。本当に好きならなぜ、詳細に覚えていないのか?

え?どういうこと?

好きだと思ったんだろう?それならなぜ記憶していないんだ?

人間は忘れるからだよ。全てを覚えていられないんだ。

じゃあなんで、自分の名前や住んでいる場所は忘れないんだ?

とても大事なことだからだよ。おじさん、名前なんて言うの?

じゃあ人間に大事だと思われないものは記憶から消えていくのか。

そうともいえるね。

私を知っているか?

知らない。初めて会ったからね。

そうか。君は私を覚えていてくれるか。

うん、まあ。たった今、会ったばっかりだもん。

それともこのもう見ることのない作品のように忘れてしまうのかい?

ねえ。人間は部分的に記憶することがあるんだよ。

じゃあなんだっていうんだ。

おじさん。全部を知らなくても、人はおじさんのこと、知ったふりしててくれると思うよ。

覚えて…いてくれるのか。

もちろん。こんなグレーの立方体に囲まれてちゃあ、気が滅入るでしょ。また来るよ。絵の1つでも持ってさ。

…ここは元々、四方を色彩豊かな絵が囲んでいた。

うん。

作品を愛する気持ち、創作の産みの苦しみ、嬉しさ、美しさ。気持ちで溢れていたんだ。

そうだね。

それでも人間はすぐに心変わりをするもんで、ある日突然その愛を跡形もなく消していくんだ。一つ一つ。

うん。

それで残るのが、このグレーの壁さ。

うん。

愛に囲まれたくて、ここに来た。世界中で、こんなに愛が濃く煮詰まった場所はどこを探してもないからね。

おじさん、寂しい?

ああ、寂しいさ。新しい作品がたまに上の方に出てくるんだが、それを見る度に、それらが忘れ去られていくことを考えてしまうんだ。

おじさん、一緒に旅に行かない?

なぜ?ここを離れても、世界の愛に触れられるのか?

もちろん。ただ、見つけられないなら、何もないかもね。


臨むところだ。

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