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北島三郎の息子 その1


2人目が産まれて間もない頃、子連れで電車に乗った。右手には2歳の長女、抱っこひもの中には0歳の次女。目的地まで1時間はかかる。私は緊張していた。

30分位経つと、長女が飽きてきた。そのタイミングで次女も目を覚ましてしまった。そこへ、通路を挟んだ隣の席に1人のおじさんが座った。
パンチパーマに派手なスーツ、金のネックレスにセカンドバッグ。なんて分かりやすい制服。一気に緊張が高まる。ここで愚図って因縁を付けられたら子どもの命が危ない。いったん降りるか。

ドキドキしていると、おじさんがこちらに話しかけてきた。
「ようお母さん、2人も連れて大変だね。お嬢ちゃん、みかん食べるか?」
と、ポケットからみかんを取り出して長女にくれた。
「電車はのどが渇くからさ、食べな」
感動し、お礼を言いつつも、私はまだ少し警戒していた。

その2に続きます。


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